報告

日本公認会計士協会定期総会レポート

本部理事 田 篤

 
はじめに
 平成24年7月4日(水)曇り空の蒸し暑い最中、例年と同様、帝国ホテル(東京都千代田区内幸町)本館3階の富士の間にて日本公認会計士協会の第46回定期総会が開催されました。その内容をレポートしたいと思います。なお、文中意見に関する記載は私見であり、また私の聞き漏れ、聞き違い等により正確性に欠ける記述があるかもしれませんが、素人記者ということでご容赦ください。なお、公式の総会報告については後日JICPAニュースレターにより行われますので、そちらをご参照下さいますようお願い致します。
 総会の式次第は次の通りです。
 上林三子雄常務理事、鈴木昌治常務理事の2名の司会で第46回定期総会が、午後1時より開催されました。冒頭、本定期総会が全国23会場に中継されている旨、司会者から報告されました。
開会の辞、会長挨拶
 ご来賓の入場後、小見山満副会長の「開会の辞」に引き続き、山崎彰三会長のご挨拶がありました。

来賓挨拶
 続いて、ご来賓のご挨拶を頂戴しました。
 まず、松下忠洋金融担当大臣にご挨拶を頂き、続いて、斉藤惇株式会社東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長からもご挨拶を頂きました。
黙祷、議長・副議長の任命
  小西彦衛副会長により物故会員・準会員118名への黙祷が出席者全員によって奉げられました。その後、山崎会長から会則第76条第1項により議長・副議長を任命したい旨の提案があり、議長、副議長3名が任命され議事が開始されました。
報告事項
 木下俊男専務理事より、会則75条第2項に従い報告事項として「A第46事業年度事業及び会務報告の件」の報告が定期総会議案書に従って報告がなされました。
・一部上場企業による不祥事への対応
・税理士法改正を巡る動きへの対応(報告者)会 長 小川 泰彦
(重点施策)

1.東日本大震災の被災者支援及び被災地の復旧・復興に向けての活動

(1) 義援金の募金活動及び見舞金の贈呈等
(2) 被災地支援に向けた対応

2.制度的枠組みや基準の整備等についての提言と必要な施策の実行

(1) 公認会計士制度改革を視野に入れた「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿」の提言及び周知並びに提言のための広範で横断的な調査研究の実施
(2) 会社法改正に向けた対応
(3) 公的部門の会計基準と新たな監査制度設定に関する積極的取組み
(4) 監査業務等の社会的ニーズを踏まえた業務範囲の拡大に関する継続的な検討

3.国際財務報告基準(IFRS)導入への実務対応を含む、会計・監査分野の
  変革への対応

(1) IFRS導入に係る対応及び支援の充実
(2) 環太平洋経済連携協定(TPP)への対応

4.困難な経済情勢の中での社会的使命を実行するための、自主規制機能の
  一層の強化と着実な実施

(1) 上場会社監査事務所登録制度
(2) 監査業務審査・綱紀事案処理体制の整備
(3) 会長通牒の発出

5.多様・多才な会計プロフェッションの育成及びそのための基盤整備

(1) 未就職者支援に向けて
(2) 国際会計人養成基金及び海外会計・監査調査研究基金の運営

6.社会的ニーズや業務の多様化に適切に対応するための会員支援

(1) 組織内公認会計士への対応
(2) 税務業務部会の活動

7.協会組織・機構改革の着実な実施

 報告の後、まず、事前に提出された書面による質問、意見に対して木下専務理事より説明、回答が行われました。記載ぶりに齟齬があるかもしれませんので、以下では原則として、質問事項等の概要のみ示したいと思います。回答等についてはJICPAニュースレターをご参照下さい。

(事前書面質問等)
Q1. 大王製紙の訂正報告書の提出事案について綱紀審査会での審査状況はどのような状況か?
Q2. 日本振興銀行の監査は十分なものであったと認識しているのか?
Q3. 東京電力について重大な未確定事項があるにもかかわらず、監査人が適正意見を表明しているのは反社会的行為というべきものではないか?
Q4. オリンパス事件、大王製紙事件に関する協会の処分が遅いのではないか?
Q5. 協会は不祥事に対して厳正に対処し、社会に説明をすべきである。
 以上のような事前質問があったが、個者、個別の事案に係る状況については非公開とする旨の回答があった。
 提出された書面による質問・意見及びそれらに対する回答・説明の後、これらと関連する質問やこれら以外の質問・意見陳述が会場にて行われました。
(会場での質問等)
 ○ 大王製紙の訂正報告書の提出は、「企業」のみの問題なのか?「監査人」側にも問題があるのではないか?過去、監査人が認めた種々の事項を監査人の指導により訂正している。
 ○ 未就職者について、本当に協会は真摯に考えて行動しているのか?
 ○ 会長選出方法の見直しは、結局、何も変更しないままに終わった。協会本部だけでなく我々会員にも多大な時間を浪費させた。会長のリーダーシップがなさすぎではないか?
 ○ 会長、専務理事は多額の報酬を得ている。木下専務は協会会務への専任義務があると思うが、某社の特別顧問に就任していた。理事会で承認されたと聞いているが承認プロセスがおかしいのではないか?((回答)⇒報酬委員会を開催し、木下専務から始末書を徴求・保存している。)
 ○ 会社法監査を忌避している会社数約500社を協会として把握していないのか? 
 以上のように、主に会計不祥事に関して多くの質問がなされ、山崎会長等から回答、説明がありました。

審議事項
 第1号議案 第46事業年度収支計算書及び財務諸表承認の件
 亀岡保夫常務理事により第1号議案の説明があり、その後、尾内正道監事より会計監査人である優成監査法人から平成24年5月31日付けで無限定適正意見の表明があり、さらに監事意見として会務の執行は誠実に行われており、収支計算書等は適正に作成されている旨の監査報告がありました。
 続いて木下俊男専務理事より事前に提出された書面による質問、意見に対する回答、説明が行われました。ここでは原則として質問事項等のみ示しています。
(事前書面質問等)
Q1. 約800百万円に上る未収業務会費について、その内容(発生原因)、回収可能性について回答願いたい。
  ((回答)⇒みすず監査法人から、引き継がれたクライアントに係る監査業務に関する業務会費について、引き継いだ監査法人からの徴収漏れがあり、今般、過去4年間分を計上し、既に約80%を回収している。)
Q2. この未収会費問題に関する関係者の責任をどのように考えているのか?
  ((回答)⇒従来の状況、管理方法では発見が難しかった。未払いとなっていた会員側も迅速かつ誠実に対応して頂き、意図的なものとは考えていない。)
 書面による質問事項に対する回答が終了し、その後、これ以外の質問・意見陳述等が会場より行われました。以下、原則として、質問のみ記載しました。
(会場での質問等)
我々公認会計士の代表として、理事の皆さんは今回の収支計算書等の財務諸表を正しいものとして考えているのか?公認会計士協会がこのような決算を組んで、我々はクライアントにどのように正しく指導しろというのか?大阪弁護士会との共催(中堅弁護士会計士若手交流会)セミナーの開催について
今回の未収分は、経常収支ではなく経常外収支で はないのか?
この決算書の承認について、理事会ではどのよう な討議・承認プロセスを経たのか?
過去4年分であれば、過年度財務諸表を組み替え るべきではないのか?また、この未収会費は回収 すれば良いという問題ではない。
 木下専務理事より種々説明があり、その後採決に入りました。採決では、第1号議案について出席者の拍手により賛成の方の拍手がありましたが、会場からの要望もあり、反対者の拍手も求められました。その結果、会場の拍手については賛成、反対がほぼ同数と認められましたが、委任状の賛否数を加え原案通り可決されました。
 第2号議案の審議については、下記2議案を一括上程することが議長より提案され、拍手をもって了承されました。
 第2‐1号議案  上場会社監査事務所登録制度の改正のための会則の一部変更案承認の件
 第2‐2号議案  品質管理委員会規則、上場会社監査事務所登録規則及び品質管理審議会規則の一部変更案並びに上場会社監査事務所登録・措置不服審査会規則の制定案承認の件
 鈴木昌治常務理事より議案の説明がありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等が下記のとおりありました。
(会場での質問等)
「抹消」と「登録の取消」は、どのように区分けをしているのか?すべての事象を「抹消」と表現するのは厳しいのではないか?
 その後採決に入りました。その結果、第2‐1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました。
 第2‐2号議案についても出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました。
   
   第3号議案の審議については、下記2議案を一括上程することが議長より提案され、拍手をもって了承されました。
 第3‐1号議案  監査業務審査会及び規律調査会に係る会則の一部変更案承認の件
 第3‐2号議案  監査業務審査会規則、規律調査会規則に係る会則の一部変更案承認の件
 鈴木昌治常務理事より議案の説明がありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでしたので採決が行われました。その結果、第3−1号議案及び第3−2号議案について出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました
 第4号議案  上場会社監査事務所登録規則及び品質管理審議会規則の一部変更案承認の件
 鈴木昌治常務理事より説明がありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでした。採決に入り、第4号議案について出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました。
 第5号議案  登録審査等に関する会則の一部変更案承認の件
 鈴木昌治常務理事より説明がありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでした。採決に入り、第5号議案について出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました。
 第6号議案及び第7号議案の審議については、下記2議案を一括上程することが議長より提案され、拍手をもって了承されました。
 第6号議案  第47事業年度事業計画案承認の件
 第7号議案  第47事業年度収支予算書案承認の件
 第6号議案については、木下俊男専務理事より議案の内容が説明されました。
 まず基本方針及び下記6つの重点施策が説明されました。
1. 昨今の動向を踏まえた制度的枠組みや基準の整備等についての提言と必要な施策の実行
2. 国際財務報告基準導入への実務的対応を含む、会計・監査分野の変革への対応
3. 公認会計士としての社会的使命を実行するための、自主規制機能の一層の強化と着実な実施
4. 多様・多才な会計プロフェッションの育成及びそのための基盤整備
5. 社会的ニーズや業務の多様化に適切に対応するための会員支援
6. 東日本大震災の被災者支援及び被災地の復旧・復興に向けての活動
7. 協会組織・機構改革の着実な実施
 また、第7号議案については、亀岡保夫常務理事より内容が説明されました。
 書面による事前質問、意見はありませんでしたが、会場から下記の質問、意見があり、山崎会長等から回答が行われました。
(会場での質問等)
重点施策7項目について、会長自らの意気込みを述べてほしい。
福島の被災者等に協会として社会的貢献を考えるべきではないか?((回答)⇒既に、現地の会員 を中心に様々行っている。引き続き、支援したい。)
余裕資金の有効活用をもっと考えてほしい。
  ((回答)⇒財政構造の在り方を含め、今後検討したい。)
 その後採決に入り、第6号議案及び第7号議案について出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました。
 第8号議案  会計監査人選任の件
 議案について森川潤一監事より説明がありました。書面による事前質問、意見はありませんでしたが、会場から下記のような質問等がありました。
(会場での質問等)
変更の理由を教えてほしい。
 ((回答)⇒独立性 確保の観点から、3年に1度は変更する必要があると認めたものである。)
公認会計士の団体であるため、監事がしっかり監査すれば会計監査人は不要ではないか?
 ((回答)⇒ボランティアの監事に任せるのではなく、きちんと会計監査人をお願いする。)
 その後採決に入り、第8号議案について出席者の拍手により賛成多数と認められ、原案通り可決されました。
 議事がすべて終了し議長団が退席され、会場から大きな拍手が起こりました。

協会学術賞授与
 休憩後、学術賞審査委員会の國本 望委員長から、「学術賞」として栗濱竜一郎氏「社会的存在としての財務諸表監査」、西沢和彦氏「税と社会保障の抜本改革」、石川恵子氏「地方自治体の業績監査」が選出された旨報告され、当日出席された3氏に山崎会長から表彰状及び賞品が贈呈されました。
会員表彰
 続いて会員表彰が行われました。表彰細則第2条第1項第一号(100歳以上かつ公認会計士の登録期間30年以上の会員)に基づき秋田正夫氏(東海会)、井上重喜氏(東京会)が、また、表彰細則第2条第1項第二号から第五号に基づく会員表彰贈呈者298名が表彰されました。
閉会の辞
 小川泰彦副会長により閉会の辞があり、定期総会が終了しました。
最後に
 本年の定期総会も審議議案が第8号議案に加え、未収業務会費に対する質問をはじめ、多くの熱心な質問等があり、昨年同様予定時間を超過する長い総会となりました。山崎彰三会長をはじめ日本公認会計士協会の執行部は、会員からの意見に真摯に耳を傾け、環境変化が著しい公認会計士業界を強力にリードして頂くことを切に願いたいと思います。