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「電車男!?」 |
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第53回 リレー随筆 |
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岸田 忠郎 |
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私の最近1年の生活を振り返ると、ふっと「電車男」という言葉が浮かんできました。数年前に話題になった映画(インターネットの電子掲示板への書き込みを元にした恋愛話)の内容を知らなかったからということもありますが、現在、毎日約2時間弱かけて勤務先に通っている自分の姿から思い浮かんだのです。 | |
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私は昨年7月から勤務先の監査法人を一時離れ、一般事業会社に出向しています。京都の本社まで、堺の自宅から大阪市営地下鉄−JR−京都市営地下鉄を乗りついで通勤しています。当初、通勤は無理かなと思いましたが、出向先に同程度の時間をかけて通われている方が数名おられ、業務量との関係でもおそらく大丈夫だろうということになりました。たまに、体調がすぐれないときは、さすがに遠く感じますが、いつもはさほど苦になりません。私の怠惰な性分から、従前、この通勤時間の大半は、布団の中やTV等に消えていたことを思えば、読書等に自由に使える時間が得られたと(がんばって)思い込むことにしています。 | |
出向先では、理財グループに在籍し、担当は、主として連結決算・開示業務のサポート、プロジェクト案件/スポット案件への関与、決算業務効率化・早期化の支援、経理部員のスキルアップ等に関する支援等です。プロジェクトやスポット案件の検討では、会計・税務・法務・人事労務・内部統制・情報システム・IR・監査・その他に及ぼす影響を勘案して検討します。監査では、クライアント案について、球技でいうと審判の立場で、諸規則とチェックすることが主になる場合が多かったのですが、出向先では、プレーヤーの立場で、会計基準、税法及び会社法に照らしながら選択肢を検討し、会社にとって有利な方策を絞り込む場面があります。これまでの経験・知識等を用いることも多いのですが、視点が違うので新鮮に感じます。また、決算・開示業務で作成者側として助言・指導等をさせてもらう中、できるだけ会社の業務に入り込んでより的確な助言を行うことを心がけていますが、会社内の意思決定プロセスや部署間調整などを体験させていただくことで、私のほうでも、視野が広がり、刺激を受けたり、勉強させていただくことが多いです。 | |
一方、プライベートでは、我ながら、仕事のオンとオフのめりはりをつけるのが不得手であったと思うのですが、約2時間の通勤時間を挟むことで、仕事のオンとオフをはっきり分けることが無意識にできるようになったようです。それを、まず感じたのは、家内で、ゆったりとした気持ちで話をできるようになったと少し喜んでいました。それがきっかけかどうか定かではありませんが、約1年前、家内は慢性的な肩こりで、体調を崩し気味だったのですが、マッサージ・整体等は効果が持続しないので、一念発起して根治を目指して肩こり体操を始めました。今では、お陰様で肩こりもすっかり収まり、サッカーの長友選手らが取り組んでいる体幹トレーニングの初級もやるようになってすでに10ヶ月、毎日30分のトレーニングを継続していて、今ではかなり健康体になっています。 中学生の息子とは、クラブが忙しく一緒に出かけることもすっかり減っていたのですが、息子がお城好きということもあり、家族に京都の町を案内してみようかということで、5月連休の「虎の子」の休日に京都巡りに行きました。西陣会館、清明神社、二条城、錦市場などを巡りました。ときおり小雨の降る中でしたが、楽しく過ごしました。 |
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(二条城にて息子と) |
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また、6月に所用で篠山の実家に帰ることがありました。息子はクラブの試合と重なり家内と自宅に残ることに。。。一人は寂しいので、蛍が見れると娘を誘って帰りました。しかし、あいにくの雨で、蛍は飛んでおらず、家の横の小川の縁の草むらにチラチラ見える程度なので一旦あきらめて家に戻りました。ところが娘は休みの自主学習のネタにしようと思っていたようで残念がるので、私も蛍をネタに誘った手前、放っておけず、雨の中、暗闇で川にはまりそうになりながら、蛍を5,6匹捕まえることに成功。翌日娘の蛍の自主学習のノートを先生がみんなに紹介してくださったそうです。最近のささやかなうれしい出来事の一つです。 | |
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(雨の中、やっと捕まえたホタル。ほとんど手の写真) |
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この1年を振り返って、他愛もない事ばかりですが、私自身、物事を多面的に見れたり、従来、ぼやっとやり過ごしていたことに気付けるようになり、喜べるようになった気がしています。 思想家の内田樹氏が、『「キャリアのドアにドアノブはない」キャリアのドアは自分で開けるものではなく、向こうから開くのを待つもの。そして、ドアが開いたら、ためらわずそこに踏み込む。あなたが頼まれた仕事があなたを呼んでいる仕事なのだ』とブログにかかれてました。もし、ふいに開いたキャリアのドアがあったら、思い切って飛び込んでみるといいことがあるかも知れませんよ。 |