寄稿

業務会費8億円の怪

公認会計士 松山 治幸

 日本公認会計士協会に支払うべき業務会費が過去4年間未払いのままでその累計8億円に上ることが発覚した。
 平成23年度決算時に概ねその概要が判明したため急遽決算に未収業務会費として計上されたものである。その状況は下表のとおりである。

 会員は、会則により一定の基準で業務会費を支払いすべき義務を負っている。しかし4年間に亘って未払いのまま推移し、日本公認会計士協会もその事実を見逃してきた。協会も協会なら不払いの監査法人(公認会計士)も全く杜撰な姿をさらけ出した。年間2億円(8億円/4年間)とすれば、業務会費の率は1%程度であることから監査報酬総額は年間200億円に上る。一社当たりの監査報酬額を3000万円とすれば、会社数は660社に上る(事実は500社程度の模様)。
 これだけの巨額かつ多数の業務会費の計上漏れは、4年余前のみすず監査法人(旧中央監査法人)の廃業に伴い、クライアントが他の監査法人に異動したことが基本にある。みすず監査法人から新たに受け入れした監査法人が協会に新規クライアントとして報告しなかったことが事の始まりである。法定
監査関係書類等提出規則により、会員は新規契約があれば協会に報告することとされている。
 協会は、報告がなければその事実を協会はわからないこととなり、毎年の業務会費の請求書に計上されないこととなる。協会では、業務会費の網羅性については以前から指摘されてきた問題である。一部の公認会計士らが新規契約を行なっても、協会に新規契約の届出を怠った場合には、協会で掌握できず請求漏れが発生する懸念である。そのようなリスクを認識しておきながらも改善されないまま、今般の巨額、多数の未収が長期に亘って発生したものである。
 本件は第一次的には、不払い監査法人等に責任があるように見える。当時、多くのクライアントの異動があったとしても、決して複雑でもなければ煩雑な事務でもない。新規クライアントの状況を協会に報告するに過ぎない。ましてや、その事実を4年間も実施しなかったことは故意にさえ感じられる。少なくとも重過失である。上場会社等の財務監査を行う監査法人のお膝下で、こんな管理さえできていないことに驚かされる。もちろん、協会の会費管理体制も全く機能していなかったことも明らかになった。
 本件が発覚した経緯は、上記のとおりかねてからの業務会費の網羅性について検証する必要があると指摘されていた中、平成23年度にチェックした結果、予想をこえる巨額の未収が平成24年3月に発見されたもので、この決算に慌ただしく計上されたものである。未払いの監査法人からの報告があったわけではない。
 以上のような事実を受けて協会は以下の措置が必要である。これが会員に対する責任である。
(1) 業務会費が過去4年間に亘って累計ほぼ8億円の計上漏れが発覚した。その内容及びなぜ発生したのか、どのような経緯で発覚したのか。その相手先、金額の公表に加えて再発防止策について詳しく調査検討される必要がある。
(2) 業務会費計上漏れに関して、協会内部の関係者の処分を検討する必要がある。処分対象予定者…
@会長(山崎彰三現会長と増田宏一前会長)、
A副会長(池上玄ほか未払発生期間就任者)、
B木下俊男専務理事、C財務担当常務理事(亀岡保夫、蔵口康裕)、D協会経理グループ部門の職員、E本部監事(森川潤一、尾内正道、中務裕之、岸田雅雄、那須和良、酒井繁、大松健)
(3) 業務会費計上漏れに関して、協会外部の関係者の処分の必要性がある。処分対象予定者…
@業務会費の支払いを怠った監査法人等、A協会の外部監査人(優成監査法人)
(4) 上記業務会費計上漏れの事実関係等の調査のための独立した第三者委員会の設置が必要と考える。
 平成24年7月4日に開催された協会の定時総会で本件について説明されたもののその内容は説明責任を軽視したものであり、会員に対して謝罪の言葉もなかった(当日出席した三馬忠夫公認会計士)。協会の閉鎖性、密室性を排除し、透明性確保が何よりも信頼回復の道である。