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定期総会見聞録 |
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日本公認会計士協会第46回定期総会に出席して |
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公認会計士 三馬 忠夫 |
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私の総会への出席も今年で連続15回目になった。今回も総会後の感想としては、虚しさだけが残る読後感の悪い小説のような総会でしかなかった。それでも物言う会員に意味があると総会に出た。時間を使ってまでも。総会はある種、行事ではあるが、公認会計士協会に参加するわれわれにとっては、協会の業務活動を振り返る重要な機会であると思われるが、一般的には興味が少ないことはとても残念に思っているところである。そこで総会見聞録を書くことにした。 平成24年7月4日(水)に帝国ホテルで第46回定期総会が開催された。日本公認会計士協会の会員は23,119人(外国公認会計士と監査法人を除く)、準会員は8,817人の合計31,936人である。当日の出席者は本人1,153人、委任状提出者6,803人合計7,956人であったから約25%の出席率になる。本人出席に限って言えば約3.6%にしかならない。参加者には積極的な参加者として新旧役員がいるがおよそ200人程度にはなるだろう。非積極的な参加者として、聞くところによれば監査法人からの動員をかけられた会員もいる。近年、上場企業の株主総会では参加者の増加と総会での発言が多く出されている傾向がある。翻って見れば、我々の協会の年間の総括の機会であるべき総会への参加者がそれほど多くもなく、ましてや発言する者が限られていることは情けない限りである。 昨年の総会では、会長リコール署名運動の問題があって例年以上に総会での発言が行われた。今年の総会では、業務会費未収金問題が総会間近に明らかになったことから、それに関する問題で盛り上がると思っていたものの、協会役員の巧妙な進行テクニックに会員の不満がかき消された感じがした。 総会は会務全般に関する報告が行われた後で質問を受け付けた。初めに事前に送付された質問2件に対する回答が行なわれた。我々3名が提出していた事前質問5項目の中から3項目について回答があった。その質問内容は次の通りである。@オリンパス粉飾事件に関する協会の対応が極めて遅いことを取上げ、協会はどのような処理を進めているのかというもの。A重大な原発事故を発生させた東京電力に対して適正意見を付した監査報告書が提出されているが、あのような重大な未確定事項を認識しながら、適正意見は問題であり、協会全体の問題として検討すべきではないか。そして、B社会からの信頼性を確保する為、会員の監査業務における不祥事には断固たる態度を示し、社会に対して透明性が高い情報を発信すべきではないか。 これらに対して回答があったが、回答内容からは、我々が意図した積極的な社会への発信性が感じられなかった。 次に、私は議場において3点の質問を行った。未就職者問題に対して協会本部はもっと知恵を絞るべきだということ。次に、山崎会長及び木下専務理事は有給役職であるから、公僕として会務に専念して欲しいが、木下専務理事が他企業の顧問に就任していたことは問題であること。次に会長が始めた会長選挙の見直し作業を中断したことは、会長のリーダーシップ欠如で問題ではないか、という質問を行ったが、いずれも明確な回答が聞けなかった。 今回は例年のように企業不祥事と欠陥監査の問題、いわゆる綱紀事案に関する質問を行わなかった。 次に、審議事項である収支報告書と財務諸表承認の議案に進んだ。ここでは冒頭に未収会費8億円に関する説明が極めて簡単に行われた。いの一番に、この説明に対して比較的若手の会員(東京会)から力強い質問があった。この質問者が若い会員であったことに協会にもましな人間もいるものだと感心した。この会員曰く『会計士協会の決算書はいわば世間ではお手本になるべきものであらねばならないが、今回の決算報告書における未収会費の処理、表示などに関しては、まったくもって出鱈目という代物でしかない。正しい決算報告書に訂正すべきである。』という内容であった。それに対する協会の説明を簡略化して言えば、「過去4年間にわたる業務会費に関して未収があることが判明したから今期決算で未収入金として計上している。未納者からは納付を確認しているから問題が無い。」という極めて会計士業界の見識を疑われる見解が発せられたのである。それでは過去4年間の決算書は一体適正だったと言えるのだろうか?会費の未収が発生していることをこれまでの協会の内部統制で発見できなかったのはどうしてか?協会役員は、「計上しているし、回収も可能」だからそれでいいではないかと言っている。まさしく協会のガバナンスが機能していない状況にあるが、強硬な質問に対しても議事進行のテクニックでもって時間切れに追いやられてしまった。後の議案に関しては、議案修正の意見が行われたが、「規程上無理である」と却下され、専門家の監事がいるから必要でもないと思われる協会会計に関する会計監査人は、これまでの優成監査法人からアーク監査法人に変更する議案が提出され決議された。これは未収会費問題が発覚したから監査法人を変更したと受け取られても仕方がない。午後1時に始まった総会も午後3時の休憩をはさむと3?4割程度の会員は退席してしまっている。早引けもCPEには変更はない。ほぼ予定通り総会が終了した後、会員の声を聴く会が設けられ、例年この会の参加が少なく、多くの空席に向かって質問するだけ、質問や回答も会務に何ら反映されることが無いので、私は敢えてこの会には出席しなかった。 そこでは、いくつかの質疑が行われたようであるが、そんな声はアンケートでもとれば出来る事ではないかと思っている、一般会員からの意見をどのように会務に反映させるのかもっと役員は知恵を絞るべきだろう。 開かれた総会というよりも儀式化が強くなってる総会の危惧を覚えるのは参加者の偽らない気持ちではないだろうか。来年の総会への出席を悩んでいる。 |