報告

CSRセミナー結果報告

学校・CSR委員会 委員長 大谷 智英

 
はじめに
 平成24年3月16日(金)13時30分より、近畿会研修室で「CPAのための環境・CSR 素朴な疑問Q&A」をテーマに、CSR小委員会委員長の梨岡英理子先生、同小委員会委員の濱田善彦先生を講師として3時間にわたりセミナーが開催されました。今回のテーマは、学校法人・CSR委員会の中のCSR小委員会の今年度の活動目標として掲げた「わかりやすいCSR」の研究、普及活動の一環として、委員会メンバーで作成した小冊子「CPAのための環境・CSR素朴な疑問Q&A」をテキストとして、作成の中心的役割を担っていただいた二人の解説により進めていただきました。一般の会計士には、馴染みの薄いテーマでしたが多数の会員に出席いただくことができました。講師二人による広範囲にわたる解説であったため全ての内容をご報告することはできませんが、私の興味を引いた内容を中心にセミナーの実施結果報告をさせていただきます。
 
CSRセミナーの内容
 セミナー前半、濱田先生から、はじめに「全般事項」としてCSRの意義、CSRと環境の課題、CSRと社会の課題、CSRと経済の課題について解説があり、続いて、「CSR情報について」として企業のCSR活動とCSR情報、環境情報(全般、温室効果ガス、環境会計)、社会性情報について解説いただきました。冒頭、日本には、近江商人の「三方よし」の経営理念が存在していたこと、環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性ワンガリ・マータイさんが感銘を受け、世界共通語として広めることを提唱した言葉に「もったいない=MOTTA
INAI」という日本語があり、このことからも我々日本人には、環境・CSRという課題に適しているのではないかという話は興味深いものでした。また、役所の担当課の名前の変遷を例にとり、公害問題から環境保全へと世の中の関心が変わりつつあるとの説明はなるほどと感じました。また、会計士の中でも、京都議定書や排出量取引制度について意外と知らない人が多いため、経営者ディスカッションやコミュニケーションの際の基本的情報(教養)として知っておいた方が良いのではないかとのことでした。CSR活動は、短期的利益には寄与しづらいとしても、長期的にはメリットがあることが理解できました。
 セミナー後半、梨岡先生からは、「CSR情報の開示」としてCSRレポートとは、CSRレポートの読み方/作られ方、作成の実態について、「CSRレポートの保証」として保証の必要性、意見と保証の違い、保証の実務について解説がありました。最後に環境・CSRに関するCPAの役割について説明いただきました。CSRレポートの記載内容の項目では、ハイライト部分にはその会社でしか使えない挨拶がよい記載であると言った意見や、任意作成のレポートであるため、枚数が多くても読み手の理解度合いは同じで、20、30ページ程度が読みやすく理解しやすいのではとの意見は先生自身の実務経験に裏付けされたものであり説得力のある意見に感じました。また、多くの会社が国際NGOのGRIから発行されたサステナビリティレポーティング・ガイドラインをもとにCSRレポートを作成していること、環境レポート大賞(環境省)や環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞(東洋経済新報社とグリーンレポーティングフォーラム共催)と言った形で優秀なレポートが公表されており、受賞報告書を分析すると将来の方向性を知ることができ、自社のレポート作成の際にも有用であるとの解説がありました。その他、有価証券報告書は法定開示書類のため記載できない内容もCSRレポートは任意の報告書であるため、そこに記載しきれない情報を分かりやすくフォローするという意味で、また、企業とステークホルダーとをつなぐツールとしてメリットは大きいとのことでした。CSRレポートの対象者は多数存在するが、まずは、従業員に読まれるものでなくてはならないのではないかと言った意見や、就職活動中の学生も読んでいると言った情報は興味深いものでした。
 
最後に
 紙面の関係上、内容の多くを省略しましたが、CPAのための環境・CSR素朴な疑問Q&A(2012年3月近畿会発行)の解説となっていますので、ぜひ、小冊子を入手いただければと思います。(近畿会会員は無料配布です。詳細は事務局にお問い合わせください。)
 梨岡先生は大学講師としての経験、濱田先生は環境省勤務の経験と、各人の経験をもとにした貴重な話を織り交ぜながら聞き手にわかりやすく解説いただきました。我々会計士にとって、資産除去債務に関する会計基準の適用や土壌汚染への対応による引当金、未払金の計上など環境問題は無縁ではなくなっています。クライアントとのコミュニケーションのために知っておくべき情報が多々ありました。今回のセミナーは、CSRを専門としない一般の会計士にとっても有意義なセミナーであったと思います。