報告

国際会計士への道
〜米国公認会計士とのダブルライセンスの活用方法を考える〜

日本公認会計士協会準会員会近畿分会 幹事
同 国際委員会 委員 藤田 咲

 
はじめに
 準会員会近畿分会では、平成24年2月26日に、『国際会計士への道〜米国公認会計士とのダブルライセンスの活用方法を考える〜』と題して、準会員会国際委員会との共催の下で勉強会を開催致しました。今日の企業の国際化に伴い、会計監査の現場でも国際財務報告基準(IFRS)・米国会計基準(US GAAP)等の海外の会計基準や海外の経理資料等に触れる機会が多くなってきたと思われます。そのため、今後英語のスキルや海外の会計実務に関するスキルの必要性がますます高くなってくるのではないか―そういった問題意識から当勉強会を企画致しました。
 当勉強会は、米国公認会計士資格を取得された三輪豊明氏、岡田博憲氏をお招きし、米国公認会計士資格の試験制度および日本公認会計士資格と米国公認会計士資格のダブルライセンスの活用方法についてお話しいただくことにより、今後の正会員・準会員の皆様のキャリアアップのきっかけを作ることを目的として開催致しました。当日は勉強会および懇親会を行い、38名の会員・準会員の方にご参加いただきました。
 
講演内容
1.米国公認会計士資格の試験制度、資格の相互承認について
 まず、株式会社アビタス代表取締役であり、米国公認会計士資格保持者である三輪氏より、米国公認会計士資格の試験制度の概要および米国公認会計士資格の相互承認の動きについてお話しいただきました。
 具体的には、AICPA(米国公認会計士協会)会員の職業内訳、合格率、試験科目、出題形式、受験要件等について、実際の試験問題等の資料を参照しながら解説していただきました。米国公認会計士試験の出題内容は日本の公認会計士試験と重なる部分がかなりあるため、日本の公認会計士にとっては会計英語の勉強としての側面が非常に強い、というお話が特に印象的でした。また、科目別合格率が50%弱と高いことにも驚きました。米国公認会計士試験に対する「新しいことを勉強しなければならない」「難しい」といったイメージを、少しやわらげることができたのではないかと思います。
 また、近年、米国公認会計士資格をグローバル・スタンダードにしようとする動き、オーストラリア、香港等いくつかの国と相互承認協定を締結する動きがあるというお話もありました。このことにより、日本の公認会計士が、米国公認会計士に加えて他国の公認会計士資格をも取得することができるため、キャリア形成上大きな強みになる可能性があるとのことでした。
2.日本公認会計士資格と米国公認会計士資格のダブルライセンスの活用方法
 次に、日本公認会計士資格と米国公認会計士資格の両方を取得されている岡田氏より、米国公認会計士資格取得のきっかけ、およびダブルライセンスの活用方法についてお話いただきました。
 岡田氏は学生時代に交換留学のご経験があり、海外での仕事を視野に入れながらキャリアを進めてこられました。現職の監査法人に転職された際、とあるクライアントがグローバル展開を始めている最中だったこと、クライアントのひとつであった外資系企業には、何人もの米国公認会計士資格保持者が企業内に多数在籍しており、それが当たり前のような雰囲気だったことが、米国公認会計士資格取得への転機になったそうです。クライアントはグローバル市場において英語によるビジネス情報を発信しているため、日本の会計士である自分自身もグローバル化しなければならないという危機感が、岡田氏を突き動かしたとのことです。
 また、ダブルライセンスを活かす場としては、外資系企業の経理部門のほかに、タイやカンボジア等の東南アジアや中国に展開する日系企業では、英語による財務諸表を作成するだけでなく、現地従業員を管理する経理、財務系の人材が不足しているため、企業側により多くのニーズがあるが、当該企業で資格を活かす為には、英語の運用能力を高め、アウトプットの訓練を重ねることによりコミュニケーション能力を向上させることが大切であるとお話いただきました。
 
最後に
 三輪氏と岡田氏のご講演は、米国公認会計士資格を取得することで仕事のフィールドが広がっていくという実感がもてる内容でした。特に、「英語の勉強として取り組む」という視点はこれまで考えたこともなかった視点であり、資格を持っていることがすべてではなく、実際に運用していく努力が必要であることに気づかされました。
 また、今回のご講演内容を、もっと多くの方に聞いて欲しいと強く思いました。私自身、“英語”や“海外”というだけで敷居が高いように感じてしまっていましたが、お二方のお話を聞き、会計士業界のグローバル化を自分自身の問題と捉えて興味をもってみることが大切だと痛感しました。今後も準会員会近畿分会および国際委員会では、国際会計や資格のダブルライセンス、外国語でのプレゼンの仕方等、日本の公認会計士の国際化に貢献できるようなテーマの勉強会を積極的に開催してまいりたいと考えておりますので、一人でも多くの皆様のご参加をお待ちしております。最後になりましたが、今回ご講演いただいた三輪氏、岡田氏をはじめ、勉強会開催にあたってご協力頂いた皆様に、準会員会幹事一同厚く御礼申し上げます。