報告

会社法改正試案についてのセミナー開催のご報告

法務会計委員会副委員長 新里 達治

 
 3月5日(月)15時から17時まで近畿会研修室において、大阪弁護士会の原吉弘先生を講師としてお招きし、会社法改正試案についてのセミナーが行われました。出席者は、113名でございました。
 
同研修会開催に至った経緯
 以前より、法務会計委員会では、委員の勉強会で、昨今の企業不祥事から、政府が会社法改正を予定しており、法務省から会社法改正試案が提出されたこともあり、原先生を勉強会にお招きして、お話しを御伺いする機会を持っていました。
 改正試案の内容は非常に多岐にわたっており、また、当然ながら我々公認会計士にとっても業務に密接に関係する分野が多く、広く会員の方々へも原先生のお話を聞くことのできる機会を設けることが有意義であろうとの考えから、今回のセミナー開催となりました。
セミナーの構成の概略は次のようなものでありました。
1.会社法見直しの背景
2.特に重要な論点
3.その他の論点
4.今後の見通し
5.質疑応答
個々の内容については次のようなものでありました。
1.会社法見直しの背景
  ポイントとして以下の3点を冒頭でご説明いただきました。
資本市場の活性化や競争力強化の必要性 
コーポレートガバナンスの世界標準との格差 
コーポレートガバナンスの目的のパラダイム転換(不祥事防止から事業の繁栄へ)
 改正の背景としては、必ずしも不祥事防止目的のみではなく、金融庁、経産省、法務省、経済界等がそれぞれの立場から必要性が認識されているとのことです。
 金融庁は投資家の立場、経産省は経済界の代弁ではなく、コーポレートガバナンスの見直しは必要とのスタンス、経済界からは、理念先行で立法事実が明示されておらず、規制強化は企業経営効率化にマイナスではないかとの意見があるとのことでした。また、従来は、会社法制も日欧米で論じられることが多い状況でしたが、現在では、特にコーポレートガバナンスについては、新興国が米国型を採用していることが多いことから、日本の異質性が目立つ状況になっているとのことでした。
2.特に重要な論点(下記は紙幅の関係から抜粋であることご了承下さい)
@ 社外取締役の選任の義務付け
   今回の改正試案はいくつかの案が併記される形となっているのが特徴的であり、A案は公開・大会社のみ、B案は有価証券報告書提出会社のみ、C案は義務付け否定で、東証や会計士協会、監査役協会、日弁連はB案指示で、経済界はC案指示とのことでした。
A 社外取締役、社外監査役に関する規律の見直し
   A案は親会社の取締役・使用人でないこと、会社の取締役・使用人の配偶者又は二親等内の親族でないこと(兄弟会社の関係者の取扱と重要な取引先要件については、なお検討を要する)、B案は現行法維持であり、各界の支持は前記の社外取締役と同様とのことでした。
B 委員会設置会社をめぐる問題
   会社法導入の際の目玉の一つでしたが、実際採用している上場会社は1.6%に止まっており、社外取締役に人事・報酬の決定権を委ねることへの不信感や横並び意識、導入のメリットが乏しいことが理由のようです。
 今回の改正試案では監査・監督委員会設置会社が検討されており、これは監査委員会を取締役会(過半が社外取締役)に委ねる形であるが、実際に利用されるかはかなり疑問かも知れないとの解説がありました。また、既存の委員会設置会社がこの形態へ移行する可能性もあるとのご指摘でした。
C 監査役の監査機能をめぐる問題(会計監査人の選任解任と報酬について)
   会計監査人の選任解任と報酬について、A案は両方とも決定権、B案は選任解任は決定権、報酬は同意権、C案は両方とも同意権(現行法)との案が示されており、上記までと同様に経済界はC案支持となっているようです。
3.その他の論点(下記は紙幅の関係から抜粋であることご了承下さい)
  会社法改正後、実際に発生した問題事例に対応するための改正が盛り込まれています。
@  第三者割当と株式併合を利用して、株式の大幅な希釈化を図る事例が相次いだため、上場規則で現在は規制されており、それを会社法に取り込もうとする動きとのことでした。
A 多重代表訴訟の創設の背景としては、金融持ち株会社の場合、傘下の事業会社が実権を持っているのが実態であり、上場しているホールディングカンパニーは実体がないため、創設が検討されているとのことでした。
B 詐害的会社分割については、実際に悪質な事例があり、残存債権者を保護するための、改正が検討されているとのことでした。
4.今後の見通し
 平成25年1月からの通常国会に法案提出が予定されていますが、現状経済界の反対が大きく、また、論点が非常に多岐に渡っているので、山あり谷ありで紆余曲折が想定されるとのことでした。
5.質疑応答
 参加者の方から質問があり、原先生より、丁寧な回答をいただきました。