特集
奮闘する“企業内会計士” 第6回

「同期生との繋がり」

大西 かほる

 近畿会就業多様化委員会の企業内会計士NW小委員会の委員長でいらっしゃる清水敬輔さんにご依頼をいただき、また、前回執筆された浅井俊博さんに背中を押されて、今回執筆をお受けすることになりました。私も浅井さんと同様2009年合格者で、企業内会計士ではありませんし、浅井さんのように経験も豊かではありません。ですから、今回の執筆には躊躇しましたが、少しでも経験不足を補う目的と、今私がお世話になっています会社に少しでも恩返しができるのではないかという思いもあり、バトンをとってみました。
 
会計士を目指したきっかけ
 数字には程遠い生活をしていた私が会計士の勉強を始めたのは2006年の春です。簿記を習って欲しいと小さな会社を経営している母からずっと言われ続け、簿記3級講座を受けてみたところ、「簿記って結構面白い」と思ったのです。その簿記講座を受けている最中に、予備校の公認会計士のパンフレットが目に入り、一度やってみようかな、と簿記3級のノリで始めてしまいました。今から思えば、最初からあれだけ勉強をしなければならないことを知らないからできたのだと思います。予備校の講師からもすぐにやめるだろうと思ったと後に聞きました。それが、ここまできたのだからもったいないと思い最後まで続けることにしたのです。
 
捨てる神あれば拾う神(紙?)あり
 私は2009年に合格しましたが、手放しで喜ぶことができませんでした。なぜなら、就職先がなかなか決まらなかったからです。日本公認会計士協会が提供してくれた無料職業紹介所の求人情報に載っている企業等に片っ端から履歴書を送ったり、いくつかの人材紹介会社にも登録したり、色々なイベントやセミナーに出席して手作りの名刺を配ったり、思いつく全てのことを実行しました。もうだめかなと思っているところに、私が現在勤務している野崎印刷紙業株式会社に拾っていただいたのです。まさしく、私にとっては神(紙)だったのです。
 さて、当社について少しご紹介させていただきます。社名からもご想像はつくと思いますが、当社は印刷業です。慶応4年に呉服値札の製造販売から現在の印刷業に発展しました。実は我が国値札業界の始祖なのです。その後、大正10年より更に雑貨値札、シーリングスタンプ等あらゆる値札類の製造を始め、日本全域のみならず海外にも販売網を広げていきました。ところが、第二次世界大戦で国内各店は戦火の洗礼を受け、更に、大戦終結によって海外支店の全てを失ってしまいました。戦後社会情勢が漸次自由経済体制に移り、百貨店その他一般会社の業況が活発になるに及び、大都市に営業所を再開設しました。同時に、従来の値札類、包装紙その他紙工品の製造販売に加え、デザインから写真撮影、写真製版、オフセット印刷と一貫作業で製品を提供できる美術印刷部門、各種プリンター・リーダー等先端技術を駆使した情報機器及びサプライ品部門を創設し、品質の良い総合印刷会社として広く各界にご好評を得ています。そして、昭和36年に大阪証券取引所の株式市場第2部及び京都証券取引所株式市場に上場、昭和50年には東京証券取引所第2部にも上場し、現在に至っています。
 入社するまでは知りませんでしたが、入社する前でも当社の製品にこんなにも沢山触れていたのだと気付きました。皆様も包装紙、紙袋、カレンダー、商品券、パンフレット、伝票類等、一度は当社の製品をご覧になられたことがあると思います。
発展途上
 入社後は管理部経理課に配属され、主に連結財務書類作成業務及び決算短信、有価証券報告書等の開示業務を担当しています。
 入ってまもなく本決算がきました。訳も分からず、ベテラン前任者のまねをしてあっという間に過ぎ去った一年でした。とりあえず、流れを掴み、ミスを減らそうと必死でした。二年目は、流れはだいたい分かってきたものの、前任者が退職した為あやふやな点もあり、やはり試行錯誤の状態でした。それでも、やはり一年の差は大きく、回数を重ねていくうちに少しは要領を得て、ミスも少しは減ったように思います。
 3月7日で丸2年が経ちました。これからは、今の業務を改善させ、更には会社全体を把握し、税務面やコスト管理面等において提案ができるぐらいの力を身に付けていきたいと思います。
 
同期生との繋がり
 2009年合格以降、監査法人への就職者が激減し、一般企業に就職する人が増えてきました。一般企業は、通常一人かもしくは二人くらいしか合格者を採用しません。私も例外ではなく合格者の同期生が社内にはいません。初めは、監査法人に就職した友人たちが集まって研修のことなど話している光景を見ると、うらやましく思ったものです。しかし、一般企業に就職した人が18時からの補習所に行くことが困難であるということから、その年から19時から始まるクラスを設けていただき、うらやましいどころか、今ではこのクラスに移ることが出来てよかったと思います。この19時クラスには、ユニークな人が多く、年齢も様々で人生経験豊かな人がたくさんいます。一般企業に勤めることで、同期生との繋がりは希薄になるだろうと思っていましたが、2009期生ブランド化を推し進めてくださる米山さん(4回目の執筆者)や色々な助言をくださる浅井さんをはじめ、皆様のおかげで同期生のみならず、いろいろな方とお知り合いになることもでき、繋がりは広がり、更に強化されています。
 合格後、自分は不運だと思っていましたが、今では多くの人に励まされ、やはり私は恵まれているとつくづく感じます。この場をお借りして皆様にお礼を申し上げたいと思います。そして、今後もよろしくお願いいたします。