報告

関西地区三会共催
「IFRSセミナー(第3回)」の報告

山本 憲吾

 
 平成23年12月16日(金)、日本公認会計士協会近畿会の研修室において、近畿会国際委員会の企画による「IFRSセミナー(第3回)」が開催されました。
 当セミナーは、昨年度に実施したセミナーのアップデート版として、IFRSの最新動向をできるだけ織り込んだ内容となっており、ほぼ毎月のペースで全5回開催されます。
 
(最新の開催情報については、近畿会のウェブサイトにある研修会情報掲示板をご参照ください。)
 
 今回のセミナーは、あらた監査法人が担当しており、以下のテーマ及び講師で行われました。
 
 これらのテーマは、製造業を中心に多くの企業に共通するものであり、実務上の論点も多く3時間の研修としては非常に盛りだくさんの内容となりました。
 最初にIAS第16号「有形固定資産」に関する論点について解説しました。主な内容としては、当初認識と測定、事後の測定に関連するIAS16号の基準の解説で、最後に日本基準との差異についても確認しました。
 当初認識と測定に関しては、用語の定義を含む基本的な規定の説明のほか、資産除去費用や交換取引の論点についても解説いたしました。さらに関連する基準としてIAS23号「借入費用」についてもふれました。また、事後の測定に関しては、取得価額をベースとした減価償却を行う原価モデルや、IFRSに特有の論点である再評価モデルについても説明いたしました。
 最後に日本基準との主な差異について話をさせていただきましたが、ここでは、実務上の問題点となりがちな、減価償却方法や耐用年数の考え方の差異について解説しました。
 続いて、IAS第38号「無形資産」について解説しました。まず冒頭で一般的に想定される主要な会計基準の差異についての概説を行った後、大きく@無形資産の例示A定義B無形資産の認識要件及びその類型C認識後の測定・償却・減損D日本基準との比較、について説明しました。特に、日本基準との差異のうち自己創設無形資産に関するもので、具体的には開発費をどのように資産化するのか、という論点について詳細に解説し、研究開発の定義、認識要件の解説や、当該要件を判断するにあたっての留意点、開発費の集計範囲を中心に説明を加えました。その他にも有形固定資産と同様に再評価モデルが認められるという点や、償却年数が見積もれない場合には償却を行わず毎期減損テストを行わなければならない点についても解説しました。
 続いて、IAS第36号「資産の減損」について解説いたしました。主に資金生成単位などの重要な用語の定義の確認と、減損兆候判定、回収可能額の算定、減損の戻入に関して、日本基準と差異がある論点を中心に解説しました。特に回収可能額の算定において、売却費用控除後の公正価値あるいは使用価値の算定や資金生成単位の識別に関する留意点について重点的に説明しました。
 次に、リースですが、リース会計については、2010年8月に一旦公開草案が出されたものの、その後、IASBとFASBのプロジェクトによる再審議が続いている状況であることから、既存の会計基準よりも、新基準の検討状況のアップデートに焦点をあてて説明をしました。現在検討されている新しいリース会計基準は、現行のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を廃止し、オペレーティング・リースについてオンバランス処理を求めるなど、現行の会計処理を大きく変える可能性があります。今年前半に再公開草案が公表される見込みであり、今後の動向に留意が必要です。
 最後に、IAS 2号「棚卸資産」について解説しました。冒頭で一般的に想定される主要な会計基準の差異についての概説を行い、その後、@定義A棚卸資産の原価に含める範囲B原価算定方式C棚卸資産の評価方法D費用認識E日本基準との比較、について解説しました。特に、日本基準と差異がある点として、@定義については販売促進のための物品など製造に直接関連しないものは棚卸資産に含めてはならないこと、A原価範囲について固定製造間接費は「正常生産能力」に基づいて配賦しなければならないこと、B棚卸資産の評価において切放法は認められないこと等について解説しました。とりわけ、固定製造間接費の配賦については、生産設備の「正常生産能力」を定義することが必要であり、実務上の課題となると思われます。
 以上、国際委員会主催IFRSセミナー第3回についてご報告させていただきました。今回のテーマは、実際の会計基準の適用にあたって高度な判断が求められる論点が多く含まれており、何人かの参加者の方と意見交換をさせていただきましたが、実務対応が非常に難しいテーマであると思います。我々、公認会計士として適切に対応していくためには、(IFRS全体を通じた課題だと思いますが)基準の趣旨やその背景を十分に理解することが不可欠であると思います。