オリンパス事件に想う |
公認会計士 松山 治幸 |
オリンパス事件は衝撃であった。平成9年の山一證券の簿外債務と経営破綻事件を彷彿させる強い衝撃を受けた。その後、数々の粉飾事件が発覚し、公認会計士の信頼性が著しく低下した。公認会計士協会は、これら粉飾事件の反省を受けて、監査制度改革に乗り出した。業務執行社員の就任期間制限、上場会社監査事務所制度、品質管理レビューなどの改革を行なった。しかし、粉飾事件はその後も発生していた。 そのような状況下、このオリンパス事件が発生した。国際的にも名の知れた優良企業と評価を受けていただけに、わが国だけでなく国際的にも波紋を広げている。この事件については連日、数々のマスコミ等の媒体を通じて情報が流されていることから、その概要は知れ渡っている。 この事件は、公認会計士監査にも暗い影を落としている。いまさらという思いがよぎったのは、1990年代のバブル崩壊の後始末を今日まで先送りし、その損失処理に追われていた経営陣に対して、その間の経営活動をどんな思いで行動していたかを考えれば滑稽にさえ見えてくる。 一方監査人は、2000年頃に行われたであろう飛ばしから10年近く評価損を抱えた有価証券の存在すら認識されていないオリンパスの決算書に、適正とするお墨付きを与えていた。よもや知った上での監査意見ではなかろうと思う一方、監査で発見できなかったことは、監査の存在意義に疑問符を投げ掛けるのは自然である。「節穴か」とまで非難されるような監査が、日本を代表する大監査法人の監査の水準がこの程度だったかと同じ業界に身を置く一人として情けなくなり、恥ずかしい。いま、監査人(あずさ監査法人、新日本監査法人)に責任があるかどうかは分からないが、粉飾決算を発見できていなかったことは事実である。 |
(提言) 監査人の責任問題は一旦置き、事実関係を徹底的に明らかにすること。「期待ギャップ」や「巧妙な操作では監査の限界」という逃げ口上の考えは一切捨てること。金融庁も調査するが、協会はこれ以上の調査を行い、その内容を全面公開すること。「会員を守る」という姿勢では、協会は全てを失うであろう。協会の調査は、従前の監査業務審査会が担当するのではなく、特別調査委員会を創設し中立的に調査する気概が必要。 近畿会もこの種の事件は「本部マター」として逃げず、明らかにされた資料を駆使しつつ、監査の何が問題かをこの事件から学び、会計監査の問題点を掘り下げることが必要。 今、公認会計士協会はこの事件を契機に監査問題の真髄に迫る調査をする機会であり、この機会を事勿れ主義に陥ったのでは、そんな協会はいらない。 私は、従来から粉飾事件の度に指摘してきた。「事実との対決なくして改革なし」の方針で協会は対処すべしということであるが、守秘義務、裁判に影響を与える、個人の人権擁護、事実の解明に限界がある、などと理屈を付けて、綱紀審査会の報告書すら公表していない協会は、アカウンタビリティーを標榜する資格はない。 以下に、この事件の監査に関係する資料を添付する。 |
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