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各士業女性合同研修会 報告 |
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西 宏章 |
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![]() 第T部は、阪大のサンデル教授こと大阪大学大学院法学研究科教授・弁護士の山下眞弘先生の基調講演でした。 構成は@何が問題となっているかA会社分割と事業譲渡・合併との対比B会社分割での債権者保護の問題C会社分割をめぐる具体的問題点D解釈論の限界と立法的解釈についてというものでした。 まず、@では、民法の債務引受けと会社分割での債務の承継を対比されながら何が問題となっているかを、Aでは、会社分割がなぜ創設されたか、会社分割が組織法上の行為で包括承継とされていることの批判、事業譲渡の「事業」と会社分割の対象の「権利義務」は同じなのか違うのか等を説明されました。Bは残念ながら時間の関係でさーっと流されましたが、Cでは、詐害的会社分割の例として債権者異議手続きが不要となるケースを悪用したものと物的分割を利用し、分割により設立した会社の株式を低廉な価額で第三者に譲渡するケースを紹介され、さらに商法の「債務の履行の見込みあること」が会社法では「債務の履行の見込み」となったことで混乱を招いている面があるとの説明がありました。そして、「アウトな会社分割」すなわち詐害的・濫用的会社分割をめぐる利害対立に絡めて、債権者保護と企業再編目的の調和点をどこに求めるべきか、債権者間の利害対立、承継会社の保護の必要性の話がありました。Dでは、現行法制度による解決方法として、会社法22条1項の商号続用基準、法人格否認の法理そして会社分割無効の訴えによる方法を批判されたあと、詐害性基準の明確化が課題であるが判例は民法の詐 ![]() 第U部は、パネリストの発表とそのパネルディスカッションでした。パネリストは公認会計士の河野研先生(近畿会)、税理士の山下宜子先生、司法書士の福井朝子先生、弁護士の飯島奈絵先生、コメンテーターは山下眞弘先生でした。 |
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![]() 公認会計士の河野先生は、図表を使用して組織再編の類型を説明され、その後、利用例として、@グループ再編において純粋持株会社を設ける事例A事業承継対策として利用する事例B事業再生における事例を紹介されました。 次に、税理士の山下先生は、企業組織再編税制の概要として法人税の基本的な考え方、税制適格要件、青色欠損金の利用制限等を解説され、株式の評価方法と判決における採用事例を紹介されました。 |
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続いて、司法書士の福井先生は、会社分割におけるスケジュールと登記に必要となる書類について書式例に基づいて、説明されました。 最後に、弁護士の飯島先生は、設例をもとに法律上検討すべき事項、最近の会社分割の判例を類型化された上で判例のポイントを説明されました。倒産案件における会社分割の判例についても詳しく解説頂きました。途中、ついつい大阪弁を口にされる熱のこもったお話でした。 各士業の発表の後、税理士の山下先生の司会によるパネルディスカッションとなり、各パネリストの活発な議論と弁護士の山下先生の的確なコメントとで活況のうちにパネルディスカッションは終了しました。 持ち時間が少なくパネリストの先生方は欲求不満だったかもしれませんが、実務で留意すべき事項を幅広く採り上げて頂き、大変参考となりました。また、山下先生の基調講演と飯島先生の判例解説により研修に参加した会計士は、今、会社分割で何が法律上の問題点となっているかを把握できたのではないかと思います。 今回の講演会は大雨に見舞われたにもかかわらず「アウトな会社分割、セーフな会社分割」という興味深いテーマであったためか参加者は各士業合わせて100名以上と大盛況で、性別を問わず幅広い方々が参加され、特に会計士は53名(男性32名、女性21名)の参加でした。 研修会のあと、場所を近畿会近くの湖陽樹(担々麺が有名な中華料理店)に移して懇親会が行なわれました。懇親会は約40名が参加され、大いに盛り上がりました。懇親会は他の士業の方々と交流できる良い機会となりました。 私は、昨年まで本研修会は女性会員だけが参加できるものと思っていましたが、そう誤解されている方も多いのではないでしょうか?研修には男性会員も多く参加されていましたし、今回のパネリストは男性会員でした。各士業の第一線の方々の講演があり、おまけに懇親会まで設けて頂いております。来年以降も男女かかわらず多くの会員がご参加されればと思います。 最後になりましたが、会計士代表として発表された河野先生、今回の研修会の企画・運営にご尽力された女性会計士委員会の皆様に感謝したいと思います。 |
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