『地方公会計・地方公監査改革の最前線』のパネルディスカッションを終えて

近畿会副会長 遠藤尚秀

 
発表の概要
 恒例の「日本公認会計士協会研究大会(第32回))が、今年度は日本史を代表する名将から崇拝された宮島・厳島神社や平和都市を象徴する原爆ドーム等を擁する広島の地(リーガロイヤル広島)で、平成23年9月16日(金)午後1時10分から開催されました。その中で、青山学院大学大学院教授鈴木豊先生を座長として、『地方公会計・地方公監査改革の最前線〜国民・納税者のために』というテーマについて、5名のパネラーの1人として日本公認会計士協会公会計担当常務理事の立場で参加しました。
 
当パネルディスカッションの主な論点と協会の主張
 当パネルディスカッションでは、主に下記の3つのテーマについて、会員の多くの皆様が理解しやすいようにできるだけわかりやすくご説明するように十分留意しました。
@ わが国の地方公会計・公監査制度における主な論点
A 総務省における地方公会計・公監査制度改革における主な動き
B Aの総務省の動きに対する日本公認会計士協会の対応
 @については、地方自治法改正に関連した下記のような盛りだくさんの中身について、1時間40分という限られた時間内に、各パネリストが、協会の視点、自治体現場の視点、理論的な視点、先進国の自治体事例の視点等から議論を展開しました。
 
 Aについては、地域主権を掲げる民主党政権下で、昨年度は主に『地方行財政検討会議』の第2分科会において、わが国の地方公会計・監査制度の課題が検討され基本的な考え方が示されました。その後、下記のとおり今年7月の片山前総務大臣の記者会見での発言を受け、地方自治法改正に向け、検討の舞台が「地方行財政検討会議」から「第30次地方制度調査会」に引き継がれたものの、今後、公会計・監査制度が具体的にどのように取り扱われるかについて、現状では明確にはなっておりません。

 
 Bについては、総務省が平成22年10月29日に意見募集を行ったことから、当協会から以下の点について地方公会計・公監査改革に関する協会のスタンスとコメントを提示しました。
(1)複式簿記・発生主義による財務報告制度導入の必要性
(2)内部統制整備を含む地方公会計および公監査の一体改革の必要性
(3)保証型監査や指摘型監査などの監査概念の整理の必要性
(4)監査の目的・範囲等の整理の必要性
(5)内部監査、外部監査の区分の必要性
(6)監査責任者と補助者各々の専門性・独立性の担保
(7)資格制度に関して(業務資格か能力試験か)
(8)一般に公正妥当と認められる監査基準の整備の必要性
(9)監査の品質管理制度構築の必要性
(10)保証型外部監査の導入(財務諸表監査の導入)の必要性
 
今後の協会の方向性
 Bについては、総務省が平成22年10月29日に意 当パネルディスカッションには、近畿会をはじめ多くの地域会会員のご参加を賜り、最後まで熱心にご聴講いただきました。ご参加頂きました会員の皆様には深く感謝申し上げます。
 地方自治法改正は、当初の予定より1年遅れで今後、協会本部として、『地方公会計・公監査制度改革』を公認会計士の重要な社会貢献と位置付け、最速で平成24年1月には地方公会計・公監査制度に関する地方自治法改正が国会で審議されることを視野に入れ、下記の地方自治法改正に対する戦略に係る4つの柱をたてて、優先順位をつけ具体的な施策を実施して参ります。
 
@ 財務会計制度・監査制度の充実・強化を図る地方自治法改正の実現に関する事項
A 地方自治体の首長・地方議員の理解を得る取組みの強化に関する事項
B 地方自治体に関して専門性を有する会員数を増加させる取組みの強化に関する事項
C 地方自治体に関与する会員のネットワーク化を図る取組みの強化に関する事項
 上記の柱の中で、特にAに関しては地域会の会務活動に大きく依拠します。ここ数カ月内に近畿会を含めた各地域会におきまして、地方議員等を対象に、公会計・公監査に関する研修が多数実施済みあるいは予定されており、大変感謝しております。今後は、さらに地方議員・首長を対象に、公会計・公監査に関する研修・レクチャーを強化していきたいと考えております。今後より具体的な方策を検討するため、各地域会における研修資料や議員等に対する研修のアンケート結果等の情報を協会本部が取りよせ分析し、今後、同様の地域会における研修会の開催に対して、統一的な研修が可能となるようにその内容を検討し、必要な場合は講師の推薦等で本部が各地域会への協力を行っていく所存です。
 引き続き、近畿会会員の皆様のご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。