寄稿

Just Keep Swimming!泳ぎましょう!

第44回リレー随筆
公原 博之

 
 水泳こそ、わが人生!というくらい、私の水泳との関わりはとても深く長いものです。その経験をすこし紹介して、水泳の魅力と楽しみ方を伝える一助になれば幸いと思います。

 まずは、きっかけから。小学生のころは、近所のプールで遊んでいただけでした。中学校の水泳部で水泳をはじめました。当時は家にエアコンもなく、夏涼しいのが楽しみだったことと、とにかく全員部活動に参加しなければならなかったので、夏以外はのんびりできるだろうと甘い考えがよぎって、入部を決めました。夏にプールに入っていると、日光が水面に反射して、プールがキラキラ輝く瞬間がたまらなくきれいでした。ただ、私の通っていた中学は、先生が怖かった。1コースに力が同じくらいの2人を泳がせてそれぞれに「前に追いつくまで泳げ!追いつかれたら…(いえません)。」そりゃもう、必死で泳ぎました。苦しかった。でも体力はつきました。先生にはやさしい一面もあって、大会後にジュースをご馳走してくれました(先生の名誉のため)。

 そんなこんなで泳いでいるうち、どんどん速くなるし、距離が泳げるようになりました。背泳ぎやバタフライなども泳げるようになりました。この時期は努力即実現で、どんどん泳ぎたい気持ちがつよくなりました。水泳の魅力に取り付かれたのです。

 水泳は、人生に似ていて、苦しいし、疲れるし、しんどい。泳いでいるときは一人で常に自分との戦いです。自分の体を痛めつけると体から「もうやめて!」という信号が次々と発生してきます。足がけいれんしたり、腕も乳酸がたまって力が入らなくなったり、息が苦しくてたまらなくなったり。これらと戦いながら自己の限界にチャレンジしていくなんともストイックな世界です。こんなにがんばっている自分ってカッコイイ!と思えないといけません。要するにMなんですね。

 また、成績はレースを通じてのタイムという単純な指標のみで、記録はとても公平でだれにでもわかりやすいです。記録には性別、年齢、身長、体重など一切関係なし。過去の記録とも簡単に比較できます。自分の記録が伸びていくということは過去の自分が後ろにいる。そう考えただけでワクワクしませんか?

 レースの話を少し。レースはとても緊張します。スタートはうまくいくだろうか、ゴーグルはずれないだろうか、浮き上がりはうまくいくか、ターンは、タッチはなどいろいろ考えます。笛がなってスタート台に上ると水面がきれいで自分のコースがとても長く見えます。スタートの号砲がなると考えていたことが真っ白になり、とにかくがむしゃらに泳ぎます。最後は、腕と足の両方にはほとんど力が入らなくなってゴールタッチ。すぐに電光掲示板の記録を見て、我に返ります。ベストが出たときは、自然と体が軽くなってとてもうれしい気持ちになります。水泳をやっているものだけがわかる恍惚感です。

 さて、ここからが本題です。ジュニア時代はひたすら速くなることだけを追及してきましたが、大人になってからはそれ以外の楽しみ方を3つ発見しました。まずはマスターズ水泳、次にオーシャンスイム、最後に国際交流です。

 マスターズ水泳は、18歳以上の大人の水泳大会で、日本マスターズ水泳協会に登録すればだれでも出場できます。競技は25mからあるので気軽に参加できます。マスターズ大会に行くと、人生の先輩方(高齢の方はなんと90歳以上)が、泳がれています。その泳がれる姿をみて、自分ももっとがんばらないとという気持ちになります。レースは5歳刻みの区分に分けられていますので、その中での自分の力がわかります。また、大人になっても水泳をしている人は、ほとんどが実直でまじめな人なので、人付き合いはとても楽しいです。

 オーシャンスイムというのは、まさしく海で泳ぐこと。オープンウォーターともいって、海で長い距離を泳いで競います。なんと10kmを泳ぐ大会もあるほどです。短いものでは、400mからあるので、こちらも比較的気軽に参加できます。海の大会では突然、クラゲに刺されることも…。一度だけ、クラゲが顔に絡まったことがありましたが、レースになりませんでした。また、サイパンでのオーシャンスイムでは、アメリカ軍の戦車が沈んでいる横を泳ぎましたが、そこは熱帯魚の魚礁になっていてとてもきれいでした。

 最後は国際交流です。私が通っていたスイミングクラブでは、アメリカのロサンゼルス郊外のスイミングクラブと交流していました。そこでは、子ども達はもちろん、大人も熱心に水泳に取り組んでいました。そこのクラブで、私も大人と一緒に泳がせてもらう機会がありました。ロスでは、冬でも外で泳ぎます。(もちろん温水です)あたりが真っ暗な朝5時から、雨がふろうが寒かろうが関係なし。でも、水の中は水中のライトに照らされてすごくきれいです。プールも深いので、幻想的な空間を遊泳飛行しているような気分になります。その経験がきっかけで、ハワイに行ったとき、現地のチームの練習に参加させてもらいました。ハワイのプールでは、朝日が山に照り、山が真っ赤になるところを背泳ぎしながら見えたとき、なんともいえない感動を味わいました。ほんとうにすばらしい体験ができました。

 皆さんも水泳を通して人生を豊かにしませんか?今からでも遅くありませんし、体力もついてきますよ!海やプールでお会いできたら、ぜひ声をかけてくださいね。