植田肇先生を偲んで

公認会計士 三馬忠夫

 
 故植田肇先生に、「公認会計士道」を学ばせてもらったように思っています。制度としての公認会計士監査が社会に広く認知されるには、その第一は、公認会計士の「独立性」であり、第二も「独立性」であることを教えて頂いてから、その真意を理解するのには結構長くかかりました。監査では「独立性」を持っていることの重要性を教えて頂きました。
 世間ではよく「医者に嫌われる医者」であってこそ本当の医者だと言われていますが、「公認会計士に嫌われる公認会計士」こそ真の公認会計士であるならば、「公認会計士に嫌われる公認会計士」こそ植田肇先生だったのではないでしょうか。
 真の公認会計士であるためにはシッカリとした『独立性』が求められるのですが、そのことの重要性を警鐘してこられた公認会計士のお一人が植田肇先生でした。
 近畿実務補習所において何度も講義を受けて先生が話される「独立性」が十分に理解できないままでした。住専問題で日本中が大変な時に、初めて公認会計士の監査の重要性を認識する過程で「独立性」が認識できたように思います。植田先生に教えを受けてから四半世紀が過ぎていたでしょうか。その頃、植田肇先生と熊野実夫先生が二人そろって傘寿の齢を迎えられましたので、公認会計士の有志でお祝の会を実行しました。時に平成14年4月20日、ウエスティンホテル会議室において、実務補習所では厳しかった両先生もその時にはとても愛らしく楽しいひと時を過ごすことが出来ました。その後、我々が企業財務情報研究会という月例の研修会を通じて、公認会計士監査問題に対する研修を進める中で、植田先生には、時々アドバイスを頂戴していました。平成17年1月号の近畿C.P.A.ニュースにおいて植田肇先生は、「CPEによって公認会計士を型にはめるな」と警告を発せられ、「監査の仕事が代書屋と同じになってはいけない」とも言われ、将来的には「監査人が認めているから、その財務諸表は信用できると世間が納得するようになるのはいつの日だろうか」と監査制度の将来における方向性をも示されていました。私達後輩は先生からの教えを受けたことは多いのですが、実践できていることは決して多くないことを肝に銘じて、今後の公認会計士の監査業務等に邁進することこそ植田肇先生の恩に報いる事ではないだろうかと思っています。
 植田肇先生のご冥福をお祈りすることと併せて、公認会計士の「独立性」の確保に向けた歩みを絶やさないように誓いたいと思います。
合掌