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社会・公会計委員会 研修会報告 |
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社会・公会計委員会副委員長 守谷義広 |
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1. 地方自治体監査研修について | |
現在、総務省では、地方自治法の抜本改正が検討されており、その項目の一つとして地方自治体監査制度の大幅な改正が予定されています。改正案によれば、現状は監査委員等の内部監査人が担っている多くの監査制度を、公認会計士等の外部監査人に委ねる検討がなされています。 このような状況を踏まえ、社会公会計委員会では、「シリーズ地方自治体監査研修〜来るべき地方自治体監査制度に向けて」と題して、地方自治体の監査及び会計制度について、連続シリーズで研修会を予定しています。 |
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2. 研修の概要 | |
平成23年3月22日、近畿会・京滋会・兵庫会三会共催にて、「地方自治体監査研修」の第1回目となる研修が開催されました。前半は、地方自治体の政策企画室職員の大川裕介先生及び公認会計士で地方自治体監事事務局任期付き職員の道幸尚志先生より、普段業務に携わる自治体内部者としての視点から、地方自治体の財務報告制度及び監査制度についての紹介及び問題点の指摘がなされました。また、後半は、公認会計士の小市裕之先生及び武田宗久先生より、地方自治体の監査業務を通して得られた豊富な経験に基づく実例を含んだお話を頂きました。 | |
3. 地方自治体の財務報告制度及び問題点 | |
大川先生からは、地方自治体の普通会計について、自治体財務報告制度が有する顕著な特徴である、出納整理期間、予算制度における款、項、目、節等の区分の説明及び決算統計の見方についての詳細な説明がなされました。また、現行制度の問題点として、基金からの借入金の利用による収支改善手納整理期間を利用した一般会計と特別会計間での資金移動等の事例の紹介がなされました。 基金は、自治体が将来の支出に備えて留保している資金ですが、一部の自治体は、この基金から一般会計に貸し付けを行い、その借り入れによる収入を歳入に計上して単年度の収支を均衡させることにより、財政悪化の状況を隠ぺいしてきました。 単式簿記・現金主義会計ではこのような不透明な操作が可能であり、是正が必要であるとの認識を示される一方で、全面的な複式簿記への移行は、予算制度や自治体の厳しい財政状況等からして当面は難しいと考えられることから、現行の財務報告制度下での改善手法も併せて述べられるなど、自治体内部の視点からの、大変参考となるご意見でありました。 |
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4. 地方自治体の監査制度の概要及び問題点 | |
道幸先生からは、現行の監査制度である、財務監査、行政監査、工事監査、決算審査、財政援助団体等の監査、例月出納検査及び包括外部監査等の制度について、その制度主旨や監査範囲等の解説がなされました。また、現制度の問題点や自治体監査制度の改正の方向性について、総務省の地方行財政検討会議で検討されている内容に基づく解説がなされ、外部専門家への監査業務の移管を中心に3通りの検討がなされている旨の説明がありました。 講義の最後には、公認会計士が自治体監査を担う上で、自治体事務事業内容への精通、法律知識の充実等、専門家として期待される知識とスキルの向上が必要不可欠である旨を力説されており、今後これらの業務に携わっていこうと考える会員の皆様は、改めて身の引き締まる思いであったと思います。 |
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5. 地方自治体の関連業務の経験に基づく示唆 | |
小市先生及び武田先生からは、過去の包括外部監査や自治体委員等の経験に基づく監査上の留意点についての解説がなされました。 まず、小市先生からは、地方自治体を取り巻く様々な利害関係者について、その特性や関係構築上の留意点等の説明があり、民間監査とは異なる自治体監査特有の困難性についての解説がなされました。実務対応面で、監査実施に係る作業よりも、結果の調整作業の締めるウェイトが3倍ほどになるといった解説は自治体監査特有の事象であり、大変興味深く拝聴致しました。 また、武田先生からは、包括外部監査や財政健全化法による個別外部監査等について、実際に業務に携わった経験から、対応面での困難性や問題点等の多くの示唆がなされました。自治体の組織構造的な側面や性質から、チーム構成や役割分担及び情報共有等、監査遂行上留意すべき点の指摘があり、どれも深い経験に基づく的を射たご発言で、非常に説得感がありました。また、監査委員との連携や、首長への報告に関する留意点等、実際に実務に携わる上での貴重な示唆がなされました。 |
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6. おわりに | |
東日本大震災の直後にも関わらず、今回の研修会には90名程の会員の皆様が出席され、これまで地方自治体の監査等に携わったことのない会員の皆様も熱心にメモを取られるなど、盛況に終えることができました。冒頭に記載のとおり、社会・公会計委員会では、地方自治体監査・会計制度についての理解を深めるべく研修会を続けて参りますので、今後とも宜しくお願い致します。 |