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学校・CSR委員会 CSRセミナー 実施報告 |
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学校・CSR委員会委員長 大谷智英 |
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はじめに | |
このたび東日本大震災により被災された多くの方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。一刻も早く平穏が回復するようお祈りしております。 平成23年3月14日(月)午後1時30分より2時間にわたって、CSR小委員長の梨岡英理子氏を講師にお迎えし、「2時間でわかるCSR〜素朴な疑問Q&A〜」と題してセミナーが行われました。11日の東日本大震災後という大変な時期での開催となりましたが、近畿会会員の他、兵庫会、京滋会会員も含め42名の会員の方にご参加いただきました。 今回のセミナーは、会員の基礎知識として役立てることを目的として開催が行われました。冒頭、梨岡氏よりテーマは2時間でわかるCSRですが、本来、2時間で説明できる内容ではないこと、CSRの定義についても画一したものがなく主な定義でしか紹介できないとのことでしたが、Q&A形式で容易に理解できるよう説明をいただくことができました。 |
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1.CSRとは | |
主な定義である経済産業省及び環境省の定義をもとに説明いただきました。続いてサステナビリティとは、Sustainabilityのカタカナ表記で持続可能性を意味する英語であり、CSRと同じではないが両者は切り離せない関係にあり、サステナビリティを念頭に企業活動を行うことで企業の社会的責任を果たすことになるため、結果、サステナビリティを向上させるという説明をいただきました。地球温暖化について地球温暖化対策基本法案の解説の他、二酸化炭素の削減は本当に必要かと言った素朴な疑問をもとに、EU等諸外国の諸事情など講師独自の見解を披露いただきました。 | |
2.CSR情報 | |
非財務情報との違い、IFRSとの関係、SRI、ISO 26000について説明いただきました。EUや米国では既に非財務情報の開示が義務付けられていること、現在のところIFRSとは特に関係のないこと、SRIとは社会的責任投資のことであり、近年SRIファンドの発言力が大きくなっているとの話でした。社会的責任に関する手引きを提供する国際規格ISO26000については東芝CSRレポートをもとに説明いただきました。また、誰もが聞いたことのある環境会計について、日本では一般的に環境省のガイドラインに基づく環境会計を意味するとのことでした。排出量取引については既に東京都で始まっているものの、世界では多くの国々で取引が活発に行われているとのことでした。 |
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3.CSR情報開示 | |
CSRレポートとは何か、作成義務、何が書いてあるのか等、武田薬品工業や東芝などのCSRレポートをもとに解説いただきました。CSRレポートは企業情報の提供ツールであるとともに、企業がステイクホルダーとのコミュニケーションを円滑にするためのツールでもあるため、何を重視するかなど企業のスタンスによって作成内容が異なり、日本では環境報告ガイドライン(環境省2007)をベースに作成している事例が多いこと、国際NGOのGRIが発行したGRIガイドラインをもとに作成する事例も増えていることなど説明いただきました。CSRレポートを作成するメリットは、説明責任を果たすためのものだけでなくコミュニケーションツールとして、更には差別化戦略に使う企業もあり企業価値を高める有効な手段になることがあげられます。 | |
4.CSRレポートの保証 | |
第三者保証は必要だが法的義務はないとのことでした。また、混同しやすい第三者保証と第三者意見の違いについて説明があり、特に第三者意見でいう意見は公認会計士監査の概念における意見とは異なり何らかのコメントを指しているということで、実務では、サステナビリティ情報保証審査協会(J-SUS)があり、サステナビリティ報告書等審査・登録制度を運営しているとのことです。 | |
5.会計士の役割 | |
日本公認会計士協会の活動状況について、基本方針、国際会議への参加状況、専門部会の設置状況について説明いただきました。公認会計士の活動分野について、CSR報告書保証業務が比較的会計監査業務と類似業務であり件数も多いそうです。大手監査法人では業務としての活動以外に一企業としての活動があり、環境・CSR活動への取組を行っている現状について事例をもとに解説いただきました。 | |
最後に | |
梨岡氏の丁寧な説明により、2時間でCSRが分かりましたとは言えないまでも、最低限持つべき基礎知識として得るものが多いセミナーとなりました。残念なことに、セミナー当日は、東日本大震災の被災状況が刻々と伝えられ、福島第一原発が危機的状況に至りつつある情報が伝えられる最中での開催となってしまいました。CSR、すなわち企業や監査法人、公認会計士の社会的責任について改めて考えるとともに、地球温暖化対策、安全なエネルギー対策について考えさせる意義深いセミナーとなりました。 |