|
|
自由論題(D)発表者及び統一論題パネリストとして一言 |
|
勝手に『日独交流150周年に向けて』 |
|
東良徳一 |
|
![]() さて,研究発表の詳しい内容につきましては,研究大会の記録として発行される「Independence」をお読みいただくことにして,ここでは,今回の研究発表に至った経緯をお伝えいたします。 今回の研究大会で発表させていただくのを決めたのは,2010年の大阪での中日本五会研究大会のときでした。閉会にあたっての北陸会会長ご挨拶で「次回の中日本五会研究大会は2011年1月に金沢で開催します」とのお話があり,そのとき『来年は金沢に行くぞ!!』と決めたのです。と言いますのも,1984年(昭和59年)にドイツに赴任する前は,ほぼ毎年金沢や金沢近郊への出張があり,ドイツ赴任後もドイツで日本料理店を買収した金沢の料亭のドイツでの経理や事務代行をさせていただいていたことから金沢の本店には数回おじゃましたのですが,全て雪のない季節で,雪の兼六園を訪れる機会(『口実』とも言います)があれば,是非とも行ってみたかったのです。 今回の研究大会では自由論題の部での発表に加えて統一論題の部でパネラーに加えていただいており,前日にそのリハーサルをやったのですが,リハーサルに間に合うように午前中に家を出て,金沢駅前のホテルに荷物を置き,直ちに兼六園に向かいました。大阪から金沢への車中,敦賀あたりは思っていたよりも雪が深かったのですが,金沢に近づくとどんどん雪が消え,「これでは『雪の兼六園』が見られないかもしれない」と思っていましたが,兼六園には雪が残っていて,なんとか『雪の兼六園』を見ることができ,大いに満足した次第です。 ところで,『雪の兼六園』を見るだけなら,なにも研究大会で発表させていただくことはなかったのですが,たまたま2011年が「日独交流150周年」の年にあたり,ドイツと日本の各地でさまざまな催し物が開催されることになっており,そのような年に「個人的にでも日独関係に関して何らかの足跡を残しておこう」と考えたのです。先ほども言いましたように,1984年に日本の会計事務所から系列のドイツの会計事務所に赴任し,その後『ベルリンの壁の崩壊→ドイツの再統合』『EUの市場統合』『ユーロ導入』『日独社会保障協定の締結(日本が他国と締結した初めての社会保障協定)』『EUによるIFRSs導入』という大きな変革が立て続けに起こったことから,「この面白い変革を現地でナマで見ておきたい」ということで,結局23年もの間ドイツの会計事務所に勤務させていただき2008年2月に日本に帰国しました。 で,「日独交流150周年」と言いますが,何から数えて150年かと言いますと,1861年に日本とプロイセンとの間に締結された「修好通商航海条約」を起点としています。在独中に日独租税条約改訂のロビー活動をやっていたのですが,日独租税条約に関する交換公文(ドイツ側書簡)の中に「ドイツが日本以外のOECD加盟国との条約で日独租税条約に規定する配当金に対する源泉税率よりも低い税率を定めたときは,日独間でこの源泉税率につき再検討を行う」と言う文章があり,これとの関係で「日・プロイセン修好通商航海条約」の最恵国待遇規定を調べたことがあり,この条約には個人的にも愛着を感じていたのです。 そもそも日本は,商法も税法も元々はドイツから学んだ点が多いにもかかわらず,近年は米国の影響を強く受け,一般的に日本人は日独の過去および現在の関係に気がつかないようになっているのではないでしょうか。例えば,「確定決算主義」と言われているものは,元々はドイツの「基準性の原則と逆基準性」を日本に取り込んだものと言われています。近年の日本での「連結重視による個別決算の位置付け」「会社法決算と税務との乖離」「日本で導入された連結納税制度と確定決算主義との間の質的な違い」「IFRSs導入議論における個別決算書の位置付け」などを考えるにあたって,「ムカシ日本がお手本としたドイツは今どのようにしているのだろうか?」と考える人がいなくなっているように見えるのです。このようなときに,たまたま「日独交流150周年」というものをきっかけにこれらのポイントを見直してみたところ,ドイツは既に一つの解決方法に向かって走り出したと言えるものを見つけたのです。それが今回の研究発表の主題となった「ドイツにおける会計基準の国際化の流れ」であり,「基準性の原則と逆基準性の動き」であり,特に2009年の「会計基準近代化法」だったのです。 今回の私の研究発表では,ドイツは「会計基準近代化法」により商法決算に基づく個別決算書をIFRSsに近接させることにより情報提供機能を高める方向に進んでいることを知っていただき,他方,情報提供機能重視により低下する分配利益算定機能(債権者保護目的)および課税所得計算機能,さらには中小企業の決算コストの負担軽減をどのようにして担保していくかについての方向性も示した点を知っていただくことを目指しました。 今回の自由論題の部での研究発表と統一論題の部でのパネルディスカッションにおける私のコメントがこれからの日本の会計・税務を考える方々に何らかのヒントを与え,さらには日独関係を学び直していただくきっかけになれば幸いです。 |