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引当金に関して、日本の実務、論点整理、IFRSを踏まえた内容 |
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東海会 大角泰史 |
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![]() 2007年8月の「東京合意」の一環として、引当金に関する会計基準の見直しを検討する必要性から2009年9月「引当金に関する論点整理」がASBJより公表されている。 今後、引当金に関する会計基準等が取りまとめられることも想定されるが、IFRS導入に向け注目される引当金について、我が国における引当金の実務とIFRSにおける取り扱いの相違を中心に、今後の動向についても解説が行われた。 2. 我が国における引当金 日経225銘柄を対象に調査したところ、2009年6月末以降の有価証券報告書で125もの名称で引当金が計上されており、我が国では引当金の文化が根付いているといえる。 しかし、我が国においては、引当金の定義、範囲について基準として明確になっておらず、企業会計原則注解18において引当金の認識要件のみが記載されているにすぎない。 注解18の認識要件からは、我が国における引当金の考え方は収益費用アプローチであることがわかる。 3. IFRSにおける引当金 一方、IFRSにおいては、IAS第37号で、他の基準で規定されている以外の引当金について、定義、認識基準及び測定方法について規定されている。 引当金は、「時期又は金額が不確実な負債」と定義され、資産負債アプローチである点が我が国における引当金と異なっており、負債ではない貸倒引当金のような評価性引当金は、IAS第37号の適用対象とはならない。 引当金の認識については、@現在の債務、A蓋然性、B信頼性のある見積りという3つの要件があり、引当金の測定については、「最善の見積り」であることが要求されている。 4. 今後の動向 2005年6月にIASBからIAS第37号改訂の公開草案が公表され、2010年1月には測定部分に関する追加ガイダンスが公表されている。 また、IASBからは基準化に向けた作業計画が公表されているところであるが、2010年11月には緊急性が要求される重要なMoUプロジェクトを優先させるため、IAS第37号のプロジェクトについては審議延期という計画修正が発表されている。 5. おわりに 企業においては、IFRSにおける引当金は負債であると定義されることから、契約書等を見直して引当金の要件に該当する負債がないかどうかを確かめることが重要であり、監査人としては、企業の計算した期待値に対する判断が求められる点に留意する必要がある。 |
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(報告:北垣栄一) |