報告

学校法人研修会についての報告
−「(新)監査実施報告書」の解説と改正の背景−

学校法人小委員会 井家上 愼一

1.  学校法人監査連絡協議会(委員長 本田壽秀氏)との共催により、日本公認会計士協会本部(以下、協会)からこの「(新)監査実施報告書」の作成に直接携わった専門委員長の日吉雄太氏をお招きして2011年1月17日、近畿会研修室において約3時間の研修を行いました。なお、参加人員は、近畿会127名、兵庫会18名、京滋会9名の合計154名でした。
 私学振興助成法監査である学校法人監査の「監査実施報告書」は、監査終了後、7月末までに協会に提出することが義務付けられています。
したがって、「(新)監査実施報告書」は平成22年度(平成23年3月期)からの適用ですので、平成23年7月末までに提出する必要があります。
2.  大きく変わったのは、以下の点で、文部科学大臣所轄法人の監査においては、協会の自主規制強化となる内容となっています
@ 改正前は、文部科学大臣所轄法人(以下、大学法人)、都道県知事所轄法人(以下、高校以下の法人)の区別なく同一の「監査実施報告書」を作成していましたが、平成22年度からは大学法人と高校以下の法人との共通事項と大学法人のみの記載事項とになります。
A 大学法人のみの記載事項はリスクアプローチ監査の実施状況のチェックリストが主な内容となります。
 リスクアプロ―チは監査基準で要請されている監査手法で、企業監査では定着していますが、学校監査においてもその適用が不可欠となってきています。
B 大学法人の添付書類として計算書類、監査報告書の写しの提出が強制されていることが上げられます。
1.  大学法人監査の指導強化を巡る背景としては、以下のものが考えられます。
@ 東北の私立大学の粉飾による補助金詐取事件における公認会計士に対する信頼性の回復を意図していること。
A 企業監査に比較し、出遅れ感のある学校監査へのリスクアプローチ監査の普及を意図していること。
B 協会本部監査業務審査会による大学法人監査の審査(レビュー)にこの(新)実施報告書を使用することを予定していること。
 但し、この審査は上場会社の監査の協会レビューと異なり、「品質管理のシステムレビューすることよりも個別の監査業務の実施状況を制度的に審査し、必要に応じて適切な指導を行うこと」となった。
 これは、「関与監査事務所は個人事務所の比率が大きく、かつ、それぞれ実施している学校法人監査業務数も1学校法人のみといった個人事務所が多い。」(文部科学大臣所轄学校法人監査の実施状況に関する審査の制度的実施の要綱)という事情からの対応ということになっています。
 また、事務所内での審査が不可能な場合が多いことから、他の個人の公認会計士に審査を委託する「委託審査制度」の活用も意図されています。
 監査対象大学法人612法人のうち監査法人が関与していない法人は216法人にのぼっています。(同上)
 なお、高校以下の法人については共通事項の記載のみで、従来と余り変わりませんが、協会本部としては、将来的には、各地域会で設置している「学校法人監査連絡協議会」を通じて同様な監査の品質管理を目指していると考えられます。