報告

第241回企業財務研究会報告
セグメント情報 事例分析

監査会計委員会委員長 廣田壽俊

 
【日 時】 平成23年1月18日 午前10時〜12時
【会 場】 近畿財務局8階大会議室
【出席者】 近畿財務局:原田耕治理財部次長他9名n
  近 畿 会:小川泰彦会長他7名
  京 滋 会:高橋一浩会長他6名
  兵 庫 会:仲尾彰記会長  谷 保廣副会長 
【発表者】 廣田壽俊(監査会計委員長)、洪 誠悟(監査会計副委員長)、
柴原啓司(監査会計副委員長)
  安井康二(監査会計副委員長)、山添清昭(監査会計副委員長)、
和田林一毅(監査会計副委員長)
 
 当会からの報告終了後、近畿財務局から「監査人の異動(退任)に係る臨時報告書について」及び「平成22年3月期有価証券報告書の審査結果について」の報告があった。
 
T. 緒言(抄)
 事業の種類別セグメントのより明瞭な開示を求めるルールの整備を図る上でポイントとなったのが、経営上の意思決定を行い業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎とする「マネジメント・アプローチ」の導入であった。
 企業会計基準委員会は、セグメント情報の開示に関する実態調査と財務諸表利用者、財務諸表作成者等の市場関係者へのヒアリングの結果も踏まえ、セグメント情報開示に関するルールを改正し、平成22年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度からマネジメント・アプローチによるセグメント情報開示の導入を適用することとして現在を迎えた。
 利益管理の状況やその部門利益の実績を開示することにも繋がる「マネジメント・アプローチ」に関しては、財務諸表作成会社の開示内容にどのような変化があったか、日本公認会計士協会近畿会 監査会計委員会の各メンバーの中で関心が高かったため、その事例分析調査を行ったものである。
 なお、対象とした会社と書類は、3月決算の東証一部の電気機器、サービス業、化学、建設、情報・通信業、機械、卸売業及び小売業に属する会社でSEC基準、IFRS基準によりセグメント情報を開示している会社を除く693社の第一四半期報告書である。
 
U. 開示事例分析のまとめ
1.まとめ
 新ルールの適用により、セグメント情報を開示する会社は増えた。特に前期に開示していなかった会社が当期になって開示したケースについては、明確にテーマ協議会の指摘事項は改善されていると考える。マネジメント・アプローチは内部の利益管理をベースにしたセグメント情報の開示を求めているが、既にセグメント情報を開示している会社に対し、その適用状況を分析しようとした場合に、前年と全く同じセグメント区分による開示結果である場合やセグメント情報を開示している数が増減したケースでは、判別するになかなか難しいケースがある。例えば、セグメントの名称が変わっている場合でもその内容が変わっているかは、微妙なケースが多く見受けられた。
 全体の結論としては、新ルールをもってしても、開示に至らなかった会社が多い業種もあることでもあり、今後のルール運用状況を注視する必要があると思われる。
 
2.業種別比較
(1)開示セグメントの状況(数)

 
 単体決算も対象にしてマネジメント・アプローチが導入されたことにより、8業種を対象にしたこの分析では、245社が報告セグメント数を増やした。つまり、マネジメント・アプローチを適用して報告セグメントを見直して開示してきたと結論付けることができる。

 さらに、そのうち約半数に相当する104(=41+
45+18)の会社は前年の第一四半期で開示していなかったが、テーマ協議会の「大企業の2割近くが事業の種類別セグメントを開示していない」との指摘を受けてそれを改善するように報告セグメントを開示してきている。
 
(2)開示セグメントの状況(%)

 

 

 (1)の表に表されている会社数を業種別に分析対象会社数を100として、各々の%を計算すると上記の表のようになる。
 標準的な開示と比較すると、化学、機械、卸売業はセグメント情報を開示している会社のウエイトが高く積極的な開示をしていることがわかる。一方、サービス業、情報・通信業、小売業は単一セグメントであったり、一つのセグメントが90%超であることにより、結果としてセグメント情報を開示していない会社のウエイトが高い。
 
(3)報告セグメント数
 業種、売上高、総資産にそれほどの相関関係はなく、報告セグメント数は2〜4が多い。多くても7セグメントに収束される。
 セグメント情報等の開示に関する会計基準75項によれば、セグメントの数が10を超える場合には、企業は、当該セグメント情報の区分方法が財務諸表利用者に適切な情報を提供するものであるかについて、慎重に判断することが必要になるものの、報告セグメントの数が10を超えることは否定されないため、一定の限度を定めていない。なお、ほとんどの会社が集約表記はしていない。
 
(4)単体決算でセグメント情報を開示している会社

 
V. 開示事例分析(抄)
 頁数制限もあるので、8業種個々の事例分析のうち、その業種に特徴的な開示をピックアップする。個々の具体的な開示内容はEDINET等でご参照願いたい。
@電気機器

Aサービス業

B化学

C建設

D情報・通信業

E機械

F卸売業

G小売業