寄稿

僕とギターと山崎まさよし

吉田壮志

 
 きっかけはラジオから流れてきた山崎まさよしの「One more time, One more chance」という曲に出会ったことでした。リスナーを楽曲の世界に引き込んでいくイントロのアルペジオ、山崎まさよしの特徴的な声、情景や心情が伝わってくる歌詞、ブルージーなメロディー。発表されてから10年以上経った今でも、ラジオでたびたび耳にする色褪せない名曲です。
 この曲に触発された僕は、クローゼットに父親のガットギターがあることを思い出し、それを引っ張り出して弾き方もよくわからないまま音を出して満足感に浸っていました。この時からこの先ずっと続く僕のギター人生が始まったのです。
 僕は初心者向けのギター教則本とギター弾き語り集を購入し、簡易フォームといって6本の弦のうち3本を使って1度、3度、5度の音を鳴らす簡単なコードの押さえ方の練習から始めました。目標は山崎まさよし。ゴールははるか彼方です。山崎まさよしはギターの名手で、言い換えれば初心者がコピーするにはハードルが非常に高いのです。アルベジオやカッティング、スライド奏法を駆使して奏でられる楽曲はギター好きの方にとっては一聴の価値有りだと思います。
 それからしばらく簡易フォームの練習を続けるうちに、ある日突然僕の演奏技術に変化が起きました。勉強やスポーツでも、これまで越えることが困難だった壁を簡単に越えていける瞬間があると思います。ギターを弾き始めてから3ヶ月くらいたった頃に、演奏技術の飛躍的な上達という形で僕にもそれが起こりました。6本の弦を全て使ってコードが弾けるようになり、アルペジオやカッティングも上手く弾くことが出来るようになりました。それからは夢中で山崎まさよし弾き語り集に載っている様々な楽曲のコピーに挑戦していました。
 練習の甲斐もあって多くの曲を弾けるようになってきた頃に、自分の奏でるギターの音に不満を感じるようになってきました。その原因はギターにありました。僕が当時弾いていたのはガットギターというナイロン製の弦が張ってあるギターです。山崎まさよしが使っているギターは、一般的にアコースティックギターと呼ばれているスティール製の弦が張ってあるギターなのです。その音質は全く異なります。個人的なイメージですがガットギターは丸く粘りのある音が、アコースティックギターは固く抜けるような音がするように思います。やっと憧れのイントロが弾けるようになったのに…。
 しばらく悶々と過ごしていたある日、思いがけず僕はアコースティックギターを手にする事になります。もうすぐ高校2年になる頃でした。どういう訳かこのタイミングで、父親が高校の入学祝いに何か買ってやると言い出したのです。僕は迷わずアコースティックギターが欲しいと伝え、心斎橋にある楽器店に行き、憧れのアコースティックギターを買ってもらいました。この時に買ってもらったギターが写真のギターです。もう10年以上の付き合いになります。このギターには色んな思い出があり、一生手放すことのできない宝物になっています。
 このギターを手にしたことで、一層ギターにはまっていくことになりました。出したかった音が出る。それからは勉強もそっちのけで、家に帰ればギターばかり弾いていました。おかげで勉強についてはかなり回り道をすることになってしまいました…。
 ギターを始めた当時の印象に残っている思い出としては、学園祭でクラスの出し物として作ったオリジナルの劇の劇中歌の作曲をしたことや、エレキギターを購入してバンドを組みバンドコンテストに出たことなどがあります。中でも高校の友人と組んだそのバンドは高校卒業後も活動を続け、曲を作ったり、ライブをしたりしていました。僕は数年前に脱退してしまいましたが、当時の仲間を中心にそのバンドは活動を続けています。たまにライブを見に行きますが、昔自分が演奏していた曲が流れるととても懐かしく思ってしまいます。
 今でもギターは続けていて、姉や友人の結婚式で弾き語りを披露したりしています。そんなに上手くないのですが意外に好評なようです。
 最近はもう一度バンドを組み、みんなで音を出したいなと思っています。色んなことが落ち着くまではおあずけですが…。
 最後に一生付き合っていける趣味を始めるきっかけを作ってくれた山崎まさよしと、デジカメを持っていない僕のために朝早くから写真を撮りに来てくれたあの人に、この場をお借りして感謝の気持ちを伝えたいと思います。
 ほんとうにありがとう!!