年頭所感

年頭所感 

日本公認会計士協会
会長
 山崎彰三

 平成23年の新春にあたり、近畿会の会員及び準会員の皆様に謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 昨年7月に会長職を引き継いでから早くも半年が経過しました。この間、公認会計士業務や協会会務について役員及び会員の皆様方と意見交換し議論する中で、就任時の所信表明での対応方針に加え、新たな課題ないしはチャレンジも見えてきました。今後、皆様方のご協力を仰ぎながらこれらの課題に取り組む所存でありますので、この機会を通じて重要と思われる課題について、私の考えを述べさせていただきます。

1.IFRS導入の対応
 IFRSの導入が現実のものとなってまいりましたが、IFRS導入の絡み、昨年中にいくつかの重要な確認または問題提起が行われました。まず一つ目は、中小企業へのIFRS適用問題です。中小企業はIFRSの強制適用の対象ではないこと、また中小企業のために簡易な会計ルールを持つことは各国で実例があります。二つ目は、単体財務諸表の取り扱いです。この問題は会社法上の開示や法人税計算とも関係してくるので、複雑な議論になっています。連結先行という考え方は2009年の企業会計審議会中間報告でも示されていますが、改めて検討するための会議体が財務会計基準機構に設けられました。三つ目は、非公開であるが監査対象である大会社はどうするかということです。
 このような状況の中で、将来のIFRS強制適用に備える協会の対応は進みつつあります。協会は、昨年、IFRS監査・会計特別委員会を設置しIFRS適用の知見を広めていく核をつくり着実に前進しております。

2.公認会計士制度改革と税理士法改正
 昨年まとめられた「公認会計士制度に関する懇談会中間報告」に関しては、次期通常国会での法律制定に向けて議論が進んでいます。懇談会で我々が最も主張した、公認会計士の社会における存在意義である監査を担う人材の確保・育成が大事という点は確認されていますが、試験の科目の中身や会計大学院との関係等詰めなければならないことは多くあります。公認会計士でない会計プロフェッショナルに関しても、どの程度の人がこれを最終ゴールとしてチャレンジしてくるかという想定もまだこれからです。
 税理士法改正問題に関しては、公認会計士は当然税理士業務ができるという基本認識および歴史的経緯に関して、各方面から理解が得られるよう積極的な対応を進めています。規制緩和に逆行する職域論争と無用な混乱を引き起こし、我が国経済の国際的競争力を阻害することがあってはならないと訴えています。

3.公会計設定プロセス
 従来から、協会は、国際公会計基準に準ずる統一的な公会計基準の必要性について主張してきたところではありますが、状況に進展が見られます。昨年、総務省の中に関連する懇談会が設けられ、協会からもメンバーが参加しました。引き続き、中央政府と地方自治体の双方の努力によって、中立で各省庁の利害から独立した公会計基準の設定主体が作られるべきであると主張してまいります。

4.資本市場の活性化のために
 ここ数年散見されました新規株式公開における不適格な企業の上場と、それに関与してしまう監査人の問題に対応するために、引受審査時の、特にアンダーライター(引受証券会社)・公認会計士・証券取引所の関係三者の役割の再確認を行う定期的会合を設けるべく議論が進んでいます。監査人は投資家を守るために存在するという基本的使命を忘れて新規公開に関与することは、厳に慎まなければなりません。同時に、引受証券会社が、本来のアンダーライティング機能を強化することを強く求めたいと思います。

5.綱紀事案処理問題
 複雑化する会計と監査につれて、困難な審査判断が求められる事例の増加と綱紀事案処理のプロセスの長期化は、協会にとって重要な問題となっています。綱紀の機能は協会の自主規制の核であり、公認会計士監査に対する社会的信頼のコアであります。
 この問題に対する改善方法の検討を始めました。

6.おわりに
 協会に対する社会からの期待は大きくなる一方です。会長として、協会に課せられる社会的責務と期待に応えられるように邁進する所存でありますので、会員および関係の皆様のご支援ご協力をお願いいたします。