特集

日本公認会計士協会定期総会レポート

田篤

【はじめに】
 平成22年7月7日(水)曇り空の蒸し暑い最中、昨年と同様、帝国ホテル(東京都千代田区内幸町)本館3階の富士の間にて日本公認会計士協会の第44回定期総会が開催されました。その内容をレポートしたいと思います。なお、文中意見に関する記載は私見であり、また私の聞き漏れ、聞き違い等により正確性に欠ける記述があるかもしれませんが、素人記者ということでご容赦ください。なお、公式の総会報告については後日JICPAニュースレターにより行われますので、そちらをご参照下さいますようお願い致します。
 総会の式次第は次の通りです。
 大村廣常務理事、勝野成紀常務理事、山田治彦常務理事の3名の司会で第44回定期総会が、午後1時より開催されました。冒頭、本定期総会が全国20ヶ所の研修会場に中継されている旨、司会者から報告されました。

【ご来賓入場】
 まず、ご来賓である三國谷勝範金融庁長官、内藤純一金融庁総務企画局長、岳野万里夫金融庁総務企画局審議官、土本一郎金融庁総務企画局開示業務参事官、斉藤惇株式会社東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長の入場がありました。
 
【開会の辞、会長挨拶】
 澤田眞史副会長の「開会の辞」に引き続き、午後1時7分頃から増田宏一会長の挨拶が始まりました。まず、来賓の方々のご臨席及び会員、準会員の出席への御礼に続いて、次のようなコメントがありました。
 平成19年7月に協会会務の舵取りを引き継ぎましてから、またたく間に3年が過ぎまして、この定期総会の終了をもって私たち執行部の任期が満了いたします。
 前執行部は、公認会計士の将来ビジョンを示しました。私は、会長立候補時の所信表明でこのビジョン実現のための協会の役割、ミッションは何か、何を成すべきかを考え、五つの柱を中心に任期中の会務を運営していくことを皆様にお伝えし実行してきました。
 本日は任期満了にあたり、その五つの柱とした推進施策の成果を総括させていただきたいと思います。
 まず、一つ目の施策は監査への信頼回復のため、自主規制の確立と着実な実行であり、その自主規制の着実な実行を社会に見えるかたちでアピールしていくことでありました。これに関しましては、平成11年に協会が自ら導入した品質管理レビュー制度の充実を図り、加えて公益性の高い上場会社の監査をご担当いただいている監査事務所には、品質管理の状況を公表するなどの一段と厳しい品質確保を求めることとして、平成19年4月からスタートさせた上場会社監査事務所登録制度を適切に運営してまいりました。
 また、継続的専門研修制度では、リフレッシュ研修など、会員の立場に立った研修の実施や履修単位の期間計算の弾力化など、その充実を図るとともに、履修義務を果たさない会員への措置など、制度運営の徹底を図ってまいりました。
 さらには、監査品質向上のための個別事案審査を通じた指導や懲戒処分の実効性を高めるための改革とその厳正な実施、結果の公表にも努めてまいりました。
 本日の定期総会に倫理規則変更案を上程させていただきましたが、職業倫理起案の整備、充実をはじめ、新たに導入された内部統制報告制度や四半期報告制度の円滑な実施に向けた高品質な実務支援の策定にも注力してきました。
 二つ目の施策は、制度的枠組みの見直しのための提言と監査環境の整備と改革に向けた活動の推進であります。
 一昨年後半、サブプライムローン問題に端を発した米国金融危機が顕在化し、信用不安の連鎖が実態経済に甚大かつ深刻な影響を及ぼし、経済の状況は混迷を極めました。
 そして、その混迷の原因を時価会計などの会計基準に求める声も聞かれるに至りました。もとより、会計基準は企業等の経済活動の実態を把握するためのものさしであり、投資家などに意思決定情報を提供するための財務諸表作成に関する基準であります。時価会計の凍結や適用緩和の議論が逆巻くなか、協会は会計職業専門家集団としての見解を積極的に社会に表明いたしました。
 資本取引のグローバル化を反映し、国際財務報告基準(IFRS)を基軸とした会計基準の国際的統一化の動きは加速化しております。
 昨年6月には、IFRSのわが国への導入に向けたロードマップが公表され、わが国の会計基準の大きな変革期が間近に迫ってまいりました。本年はIFRS元年とも言われ、もはやIFRSは国際問題ではありません。IFRSをわが国の会計基準として円滑に実務に定着させていかなければなりません。その大きな推進力としての期待がわれわれ公認会計士に向けられています。
 また、わが国企業のガバナンスの充実に向けても、国際的な視点からの会計監査人選任等の在り方や監査役等の機能強化について意見発信してまいりました。
 これは平成19年の「公認会計士法」改正時の付帯決議を実現するための活動であり、本般、法務省法制審議会会社法制部会で議論が開始されました。今後の動向を注視していきたいと思います。
 国内に目を向けますと、同じ平成19年6月に、地方公共団体の財政の健全化に関する法律が公布されました。いわゆる、地方公共団体の再建法制と言われるものであり、再建団体となるかどうかを判定する四つの資料を算出し、再建団体となった場合には、公認会計士による個別外部監査を導入するというものでありました。
 四つの指標の基礎は、当然に地方公共団体が作成する財務諸表であり、その作成の方式をめぐってはさまざまな議論がありました。
 これらを整理した財務諸表作成の環境づくりと支援体制整備に取り組み、さらには法会計基準の設定主体の在り方など、適切な制度運営に向けた提言を発してきました。
 公益法人制度改革では、国、地方自治体等から補助金、業務委託等を受け、また公益性の高い法人として税の優遇等を受ける公益社団法人や公益財団法人の大部分が外部監査の対象から外れるということに対し、公益法人のディスクロージャーの適正性確保という社会的要請に逆行するものであるとの強い反対意見を表明いたしました。
 三つ目の施策は、多才な人材の確保と育成であります。ご高承のとおり、平成15年の公認会計士法の改正による新たな公認会計士試験制度が平成18年からスタートしました。平成18年度以降の新規の受験者は、毎年1割程度の堅調な伸びを示してきました。しかし、その合格者は平成19年度で前年の倍近く、さらには平成20年度では3,000人の大台を超え、急激に増加いたしました。
 そもそも、平成15年の試験制度改革は受験者層の多様化と、その増加を図り、質を落とさずに監査会計の専門家のすそ野を拡大していくことを目指したものであり、当時掲げられた平成30年5万人体制を数値目標とするものではなかったはずであります。
 しかし、この4年間の実績を見ますと、必ずしも、その初期の目的どおりの運用がなされてきたとは言えず、むしろ数値目標に拘泥した制度運営がなされているかのようにも感じられました。
 合格者の急増は、それを受け入れ、育成していく実務経験の場である会員事務所の受け入れ許容水準と密接にかかわります。許容水準を超える合格者数が輩出された結果、業務補助や実務従事といった十分な実務経験を積む機会が得られず、試験に合格しても公認会計士になれないという事態に陥りました。
 昨年3月に試験制度の適切な運用を金融庁長官及び公認会計士監査審査会長あてに要望し、また金融担当大臣、副大臣にも、その旨の申し入れをおこないました。
 協会は、公認会計士試験合格者等の育成と活動領域の拡大に関し、金融庁、経済界代表等と議論し、試験合格者の受け入れにつき協会のみならず金融庁、公認会計士監査審査会、経済界、それぞれが取り組むべき課題とその解決に向けたアクションプランを策定して実行してきているところです。
 試験制度そのものについては、昨年暮れに公認会計士制度に関する懇談会が金融庁に設置され、制度見直しの議論が開始されました。懇談会の議論は公開されており、また役員会等を通じ、逐次、その経過を皆様にご報告させていただいておりますので本日のところは詳細を省かせていただきます。近く、その議論の取りまとめが公表されるものと存じます。
 今後は、これに基づいた具体的な制度設計作業に入ることが予想されております。公認会計士試験合格者は、いずれ協会の会員となり、公認会計士の生涯教育とも言える継続的専門研修を受講していくことになります。IFRSへの対応や地方公共団体の財務諸表作成は、その実務を担う企業や地方公共団体の経理担当者と共にその会計監査にあたるわれわれ公認会計士が実務に精通していなければなりません。そうした意味からも研修用教育体制の整備充実は重要な課題であります。
 協会は公認会計士のみならず、企業等の財務会計分野にかかわる人材を育成していくため体系的な会計教育を実現する機関の創設を提唱し、昨年7月には経済界、学会など、関係諸方面のご協力を得て、財団法人会計教育研修機構を設立できました。今後の充実した会計教育研修の提供や教材開発を引き続き強力に進めていく必要があります。
 また、川島正夫会員のご奉仕により開設した国際会計人養成基金などを活用して、海外で活躍できる公認会計士を育成していくことも喫緊の課題であります。
 四つ目の施策は、拡大する多様なニーズへの対応と会員支援であります。
 制度開設以来、60年をかけて実績を積み上げてきたわが国の公認会計士制度でありますが、外部でのさまざまな議論の場では、公認会計士、公認会計士監査制度に対する理解が必ずしも一様ではなく、落胆することもたびたびありました。
 しかし、一方で皆様の日ごろのご努力の賜として、公認会計士に対するさまざまなニーズが生まれ、活躍される分野が着実に拡大し多様化してきております。
 協会では、こうした皆様が必要とする資料や情報を適時、的確に提供できる支援体制の整備に努めてまいりました。
 本日の定期総会に上程させていただいております会則の一部変更案では、税務業務を中心に活躍される会員の方々の、組織としての税務業務部会の設置をご提案させていただいております。これもその具体化の一端であります。これに限らず企業内や公的機関で活躍される方々の組織化、ネットワーク化も今後進めていく必要があります。
 協会としては、今後も皆様の業務・業態に応じた支援体制の整備充実に努めてまいる所存ですが、一方で公認会計士の会員登録の事務所所在地や居住所の変更登録義務などを果たさず、所在がつかめない会員がいる。協会の会費を長期にわたって滞納している会員がいる。継続的専門研修の履修を申告せず、義務不履行となる会員がいるといった公認会計士、あるいは会員としての基本的な義務を履行しない会員の方々がいらっしゃいます。ほとんどの会員各位はこうした義務を怠らず履行され、自己研鑽に励まれております。
 しかし、一握りの基本的な義務を果たさない会員の存在が、公認会計士制度全体の問題として議論され、評価されることがございます。
 協会が、公認会計士の自主規制団体として機能し、また、それを構成する会員各位の業務・業態に応じた支援をおこなっていくためには、会員個々人の状況を把握しておくことが必要であります。協会ウェブサイトに、会員マイページを開設し、これを通じ会員登録情報の確認が容易におこなえる環境整備にも努めてきているところです。なお一層のご協力をお願いしたいと思います。
 さて、最後の五つ目の施策でございますが、それは協会そのものの改革、すなわち協会組織ガバナンスの継続的な改革であります。
 ここ数年来、協会は公認会計士の自主規制団体としての機動性と戦略性を持った事業遂行型組織への転換を目指し、本部役員機構、地域会との連携強化、財政構造の見直し強化など、自主規制機能発揮のための改革を逐次実行してまいりました。
 しかし、公認会計士に対する社会の期待の高まりや自主規制団体としての協会の社会的役割は増大してきております。会員数は増加し、その会員の業態は多様化してきております。こうしたことを総合的に捉え、自己改革をなお継続して強力に進めていく必要があると痛感している次第です。
 任期3年に取り組んできた施策を総括させていただきましたが、こうした会務遂行とともに、平成19年10月には皇太子殿下のご臨席を仰ぎ、第17回アジア太平洋会計士会議を大阪で成功裏に開催することができました。
 また、平成20年が公認会計士制度60周年の節目の年にあたることから、記念式典や60年史の発刊、また新たな会員章の製作などの記念事業を展開させていただきました。

日本公認会計士協会 増田宏一会長

 最後に、ご来賓各位、会員、準会員の皆様、本部
役員、委員会委員、地域会役員の皆様、事務局スタッフの皆様、協会の様々なご活動を支援いただいた関係諸機関の皆様、任期中の3年間にわたる惜しまぬご協力に深く感謝申し上げます。皆様の益々のご活躍とご健勝を祈念したいというお言葉で締め括られ、会場から大きな拍手が起こりました。
 
【来賓挨拶】
 続いて、午後1時20分頃から、ご来賓のご挨拶を頂戴しました。
 まず、三國谷勝範金融庁長官が登壇され、次のようなご挨拶を頂戴しました。
 本日は、自見庄三郎金融担当大臣が本総会に出席し、ご挨拶を申し上げるべきところでございますが、都合により出席できなくなりましたので、大臣に代わりまして私が代読させていただきたいと思います。
 「第44回定期総会の開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
 申し上げるまでもなく、経済の発展、情報通信手段の高度化等とともに、金融資本市場も発展高度化してまいりました。そのなかで、会計監査、企業統治などの果たす役割が一層大きくなってくるとともに、逆にまた経済金融資本市場の発展のためには、会計監査等の充実と適切な発展が欠くべからざるものともなってきております。
 わが国におきましては、このような背景のもと、この10年余にわたり、会計監査、開示、企業統治制度等の精力的な見直しがおこなわれるとともに、監査の水準につきましても、皆様方がその質の向上に努められてきているところであります。
 また、経済活動がグローバル化するなかで、国際的な対応の必要性も年々増してきております。わが国においては、関係者一丸となった努力により、2008年12月に同等性評価が達成されました。
 また、2010年3月期からは国際的に活動する上場会社の連結財務諸表に限定して、国際会計基準の任意適用も可能としたところであります。国際会計基準への対応につきましては、今後、さまざまな議論を積み重ねて、わが国の取引慣行、経済実態をも反映したものとなることが重要であり、貴協会の積極的な意見の発信を期待するところであります。
 また、財務諸表の信頼性の向上のためには、コーポレート・ガバナンスの強化も重要であります。本年、4月より開始されました法制審議会における会社法制の見直しの議論におきましても、貴協会と共にインセンティブのねじれの解消に向けた検討の促進などをお願いしているところであります。
 今後とも、上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて、真剣な取り組みが進められることを期待するものであります。
 さらに、公認会計士制度をめぐりましては、諸般の状況を踏まえ、昨年12月に公認会計士制度に関する懇談会を設置し、公認会計士試験資格制度などの在り方について、鋭意検討が進められているところであります。
 金融庁といたしましては、若者や社会人を含めた多様な人材が公認会計士試験にチャレンジし、監査や会計の専門家として、経済社会の幅広い分野で活躍できるような魅力的な制度づくりを目指しております。貴協会におかれましても、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 今後とも、貴協会とは積極的に意見交換をおこない、公認会計士制度をはじめ、開示制度や会計監査制度の充実、監査業界の発展のために努力してまいる所存であります。
 最後に、日本公認会計士協会、及び会員各位の今後ますますのご繁栄とご発展を祈念いたしまして挨拶とさせていただきます。
 平成22年7月7日  金融担当大臣  自見 庄三郎」
 以上でございます。

三國谷勝範金融庁長官

 続いて、午後1時25分頃から斉藤惇株式会社東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長から次のようなご挨拶を頂きました。
 会計や監査は、証券市場において上場会社の適正なディスクロージャーを担保し、市場の信頼性を確保して、投資者に有用・有益な投資情報を提供するための非常に重要なインフラでございます。
 海外の市場関係者とお話しますと、最近強く感じますことは、証券市場の国際化(Globalization)が本当に深く浸透してきているということでございます。そのなかでも特に、このアジア諸国を含めた各国が驚くべきスピードでさまざまな改革を進めているということでございます。そして、会計や監査の分野に関しましても国際化に向けたスピードが加速度的に速くなってきているように思われます。
 会計基準の国際化という面から申し上げますと、皆様がおっしゃっていますように、昨年6月、金融庁企業会計審議会から国際財務報告基準、いわゆるIFRSの適用に関する意見書が公表されて以降、わが国でも将来のIFRS適用に向け、公認会計士協会をはじめ会計基準設定主体、財務諸表の作成者など関係者全体で急速に多様が進んできていると感じております。
 この点、私ども東京証券取引所といたしましても、取引所規則や関連する実務が円滑なIFRSの導入を妨げることがないように先月末にIFRSの任意適用に伴い、当面発生することが予想される課題に対しまして規則、実務上の手当を実施したところでございます。
 ここで、IFRSの特徴としてよく言われる例として、従来のわが国の会計基準とは異なり、細かいルールを定めないプリンシプル・ベースの形態を取る会計基準であるということでございます。
 このため、従来にも増して財務諸表作成方法や利用方法についての知識、あるいはその考え方を財務諸表の作成者や利用者へ浸透させることが今後のIFRSの円滑な導入に向けて非常に重要になってくると考えております。
 この点は、わが国の関係者が一丸となって取り組んでいくことが必要でございまして、私どもも市場開設者といたしまして財務諸表の作成者・利用者への啓発を中心に積極的に取り組んでいく所存でございます。
 しかし、すでにIFRSを適用している諸外国におきましても、会計事務所がIFRSの内容に関する啓発という面において重要な役割を果たしていると伺っております。やはり、プロフェッショナルとしての公認会計士の方々が果たす役割は非常に大きいというふうに思います。上場会社をはじめ関係者の期待は大きいと思いますのでどうかよろしくお願い申し上げます。
 また、財務諸表の監査制度についても、上場会社が公表する財務諸表の信頼性の確保という面において非常に重要な役割を果たしていただいているわけですけれども、会計基準と同様に、国際監査基準との整合性をより高めまして監査の質のより一層の向上を目的とした、いわゆるコンバージェンス作業が現在積極的に進められていると伺っております。
 このように、会計や監査を取り巻く環境がより国際化、複雑化しつつある昨今においては、公認会計士に対する関係者の期待とそれに伴う責任はより一層大きくなっていくものと考えております。公認会計士の皆様方の益々のご活躍、そして日本公認会計士協会のさらなるご発展を祈念したいというお言葉で締め括られました。
 この後、ご来賓の方々はご多忙のため午後1時34分頃、退席されました。
 
【黙祷、議長・副議長の任命】
 山ア彰三副会長により物故会員・準会員126名への黙祷が出席者全員によって奉げられました。その後、増田会長から会則第76条第1項により議長・副議長を任命したい旨の提案がありました。和田義博(東京会)を議長に、小島昇(東京会)、堀村不器雄(京滋会)をそれぞれ副議長に任命することが拍手をもって承認されました。
 その後、議長、副議長3名が演壇に上がられ就任の挨拶をされました。

日本公認会計士協会 山ア彰三副会長

【議事】
 午後1時43分頃、議事に入りました。
 本日の出席者数は現在集計中であり、「報告事項」の後に集計結果を報告することとされました。また、議決権の総数は21,539個であり、委任状による出席者数は、議決権を有する会員及び準会員の5分の1以上であり、開会に必要な定足数を充足している旨が報告されました。さらに、会則第82条に基づき、東京会会員の浅子正明会員、上坂善章会員の2名を議事録署名人としたい旨の提案があり、拍手をもって承認されました。
 
【報告事項】
 午後1時49分頃、会則75条第2項に従い、木下俊男専務理事より報告事項として「第44事業年度事業及び会務報告の件」の報告が定期総会議案書に従って行われました。項目を示すと以下の通りです。
1. 国際的動向を踏まえた、会計・監査環境の整備・改革に向けた対応と必要な施策の実行
  (1)IFRSの導入に備える対応
(2)監査の基準のコンバージェンス等に対する対応
(3)内部統制監査
(4)会社法制等(企業ガバナンス)改革の提言
(5)公会計、非営利会計の制度及び基準の整備への積極的な取り組み
2. 会計教育研修機構の創設をはじめ、会計プロフェッションとして多様、多才な人材の確保・育成
  (1)公認会計士制度に関する懇談会の開催等
(2)会計教育研修機構の設立と支援
(3)優秀な後進の育成・確保に向けた対応
(4)国際的諸基準に対応できる会計プロフェッションの育成
3. 自主規制の着実な実行と社会へのアピール
 
(1) 上場会社監査事務所登録制度の適切な運営
(2) 文部科学大臣所轄学校法人に係る監査業務に対する監査業務審査会による監査実施状況に関する調査・審査の制度的実施の準備
4. 業務の多様化等の社会的ニーズに適切に対応していくための会員支援
  (1)税理士法改正を巡る動きへの対応
(2)各種業務分野で活躍する会員への支援
(3)中小事務所等施策調査会の適切な運営
5. 協会組織・機構改革の着実な実施と更なる改革
  (1)役員選挙
(2)財政構造改革
(3)東京会との連携の強化
6. 新会員章の交付等
7. 「公認会計士の日」大賞
8. 広報活動
9. 出版局の活動
 続いて午後2時5分頃より質疑に入りました。
 まず、事前に提出された書面による質問、意見に対して木下専務理事より説明、回答が行われました。記載ぶりに齟齬があるかもしれませんので、以下では質問事項等の概要のみ示したいと思います。回答等についてはJICPAニュースレターをご参照下さい。
Q1. 綱紀審査会の議事を公開できないか。綱紀案件に係る再発防止策についてどのように考えているか。
Q2. 綱紀事案処理の迅速化及び金融庁と協会の処分の量定相違についてどのように考えているのか。
Q3. 協会役員の企業、団体等の役員への就任についての行動規範はあるか。
Q4. 品質管理レビューやスタッフの給与が高額ではないか。もっと引き下げるべきではないか。
Q5. 財政構造改革における会費の値上げは、事業費の削減なくしては実施しえないことを理解しているか。
Q6. 会長が協会以外の公職についているが、その報酬についてはどのように取り扱われるのか。
Q7. 税理士法改正をめぐる動きについての協会の考え方は。
Q8. 会長の選出における推薦委員会及びその委員の選任方法についてお教え願いたい。
 提出された書面による質問・意見及びそれらに対する回答・説明は午後2時28分頃終了しました。その後、これら以外の質問・意見陳述が会場にて行われました。

会長選挙について
@ 近畿会会員が推薦委員会委員に選出されていないのは何故か。
A 推薦委員会における第1回目の投票結果(内容)はどのようなものか。
B 山ア彰三候補が澤田眞史候補より優れている理由は何か。
C そもそも、役員の選挙方法を見直す必要があるのではないか。
山一證券事件において公認会計士が無罪になったことを伝えるべきではないか。
三洋電機事案について、金融庁と協会の処分内容について量定が著しく相違しているが、協会は金融庁に資料請求すべきではないか。
また、金融庁の処分は、専門的領域の判断にまで及んでいるのではないか。
 以上について、増田会長及び黒田副会長より回答、説明がありました。
 質疑応答は午後2時40分頃に終了しました。
 ここで出席者数についての報告が議長団より行われました。議決権の総数21,539個、そのうち、本人出席979名、委任状による出席6,406名の合計7,385名でありました。
 
【審議事項】
 午後2時41分頃、審議事項に入りました。
第1号議案 第44事業年度収支計算書及び財務諸表(一般会計・実務補習所特別会計)承認の件
 蔵口康裕常務理事により第1号議案の説明があり、その後、酒井繁監事より、会計監査人である優成監査法人から平成22年5月24日付けで適正意見表明があり、さらに監事意見として、会務の執行は誠実に行われており、収支計算書等は適正に作成されている旨の監査報告がありました。
 続いて蔵口常務理事より事前に提出された書面による質問、意見に対する回答、説明が行われました。ここでは質問事項等のみ示しています。
Q1. 会長、専務理事の報酬及び退職金、出張日当を教えて頂きたい。
Q2. 会長、専務理事以外の役員の報酬及び退職金、出張日当を教えて頂きたい。
Q3. 退職給付引当金があるにもかかわらず、退職給付支出の予算超過が何故出るのか。
Q4. 重要財産等引当資産が1,193百万円計上されているが、積立目標金額を教えて頂きたい。
Q5. 監事監査は、有効性、経済性、効率性の観点から監査した結果か。
 午後3時頃書面による質問事項に対する回答が終了しました。
 その後、これ以外の質問・意見陳述等が会場より行われました。以下、質問のみ記載しました。

 ・重要財産等引当資産を積み立てる目的は何か。
 黒田副会長より説明があり、その後採決に入りました。その結果、第1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は、6,367個、反対19個でありました。よって、原案通り可決されました。

 午後3時5分頃より第2号議案の審議に入りました。下記2議案を一括上程することが議長より提案され、拍手をもって了承されました。
 
第2‐1号議案 税務業務部会設置のための会則の一部変更案承認の件
第2‐2号議案 委員会規則の一部変更案承認の件
 
 勝野常務理事より議案の説明が午後3時10分頃までありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでしたので採決が行われました。その結果、第2‐1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,389個、反対17個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第2‐2号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,392個、反対14個でありました。よって、原案通り可決されました。
 ここで議長より休憩の動議があり、了承されました。午後3時12分頃休憩に入り、午後3時22分再開予定となりました。
 
 午後3時25分頃議長により再開の宣言が行われ、続いて下記2議案を一括上程することが議長より提案され、拍手により了承されました。
 
第3‐1号議案 役員の就退任等に係る会則の一部変更案承認の件
第3‐2号議案 役員の就退任等に係る役員選出規則の一部変更案承認の件
 勝野常務理事より議案の説明がありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでしたので採決が行われました。その結果、第3‐1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,387個、反対19個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第3‐2号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,387個、反対19個でありました。よって、原案通り可決されました。
 午後3時35分頃第4号議案の審議に入り、大村常務理事より説明がありました。
 
第4号議案 役員の就退任等に係る会則の一部変更案承認の件
 書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでした。採決に入り、第4号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,380個、反対26個でありました。よって、原案通り可決されました。
 午後3時43分頃下記4議案を一括上程することが議長より提案され拍手により了承されました。
 
第5号議案 品質管理委員会規則の一部変更案承認の件
第6号議案 法定監査関係書類等提出規則の一部変更案承認の件
第7号議案 会費規則の一部変更案承認の件
第8号議案 会計規則の一部変更案承認の件
 山田常務理事より議案の内容が説明されました。書面による事前質問、意見はありませんでしたが、会場から下記の質問、意見があり、増田会長、澤田副会長、黒田副会長から回答が行われました。
 ・協会役員の企業役員への就任については、倫理的意識をもった対応をしてほしい。
 ・包括外部監査の品質管理について、協会としてどのように取り組むのか。
 ・監査不祥事について協会としてタイムリーな対応をするべきではないか。
午後4時頃採決に入りました。
 第5号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,382個、反対24個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第6号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,387個、反対19個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第7号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,380個、反対26個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第8号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,385個、反対21個でありました。よって、原案通り可決されました。
 午後4時5分頃下記2議案を一括上程することが議長より提案され拍手により了承されました。
 
第9号議案 第45事業年度事業計画案承認の件
第10号議案 第45事業年度収支予算案(一般会計)承認の件
 第9号議案については、木下専務理事より議案の内容が説明されました。
 まず基本方針及び下記6つの重点施策が説明されました。
 1.制度的枠組みや基準の整備等についての提言と必要な施策の実行
 2.国際財務報告基準への実務対応を含む、会計・監査分野の変革への対応
 3.会計プロフェッションとして多様、多才な人材の育成
 4.困難な経済情勢の中で社会的使命を実行するための、自主規制の着実な実行
 5.社会的ニーズや業務の多様化に適切に対応するための会員支援
 6.協会組織・機構改革の着実な実施
 
 また、第10号議案については、蔵口常務理事より内容が説明されました。
 書面による事前質問、意見はありませんでしたが、会場から下記の質問、意見があり、増田会長、小宮山常務理事から回答が行われました。
公会計について、政府部門の会計制度及び基準の策定まで突っ込んだ取り組みをしてほしい。
会計検査員に、より一層の力をつけて頂くための施策を考えてほしい。
政治資金規制法に基づく監査についての改善提言を積極的に行ってほしい。
 午後4時25分頃採決に入りました。
 
 第9号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,383個、反対23個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第10号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,378個、反対28個でありました。よって、原案通り可決されました。
 
 午後4時28分頃第11号議案の審議に入り、山田常務理事より説明がありました。
第11号議案 監事選任の件
 書面による事前質問、意見はありませんでしたが、会場から下記の質問、意見があり、木下専務理事から回答が行われました。
 ・監事候補者の略歴程度は記載すべきではないか。
 午後4時32分頃採決に入りました。
 第11号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,379個、反対27個でありました。よって、原案通り可決されました。
 
午後4時35分頃第12号議案の審議に入り、酒井監事より説明がありました。
第12号議案 会計監査人選任の件
 書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでした。採決に入り、第12号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,357個、反対49個でありました。よって、原案通り可決されました。
 
 
【報告事項】
役員選挙の経過及び結果報告の件
  大塚宏選挙管理委員会委員長より役員選挙の経過及び結果について報告がありました。
会長選任結果報告の件
  増田宏一推薦委員会委員長より会長選任結果について、山ア彰三候補が次期会長に選任された旨、報告がありました。
専務理事選任結果報告の件
  増田会長より木下俊男氏が引き続き専務理事に選任された旨、報告がありました。
 またこれらに関連して会場から下記の意見等が出され、木下専務理事が回答されました。
 
もっと地域会の声をきいてほしい。
合格者のレベルアップを図る方策を考えてほしい。
 午後4時58分頃、議事がすべて終了し議長団が退席され、会場から大きな拍手が起こりました。
 
【協会学術賞授与】
 午後5時頃より学術賞審査委員会の田中恒夫委員長から、「学術賞」として斉藤静樹氏「会計基準の研究」、中野誠氏「業績格差と無形資産−日米欧の実証研究」、中西一氏「フランス予算・公会計改革−公共政策としての公共経営−」が選出された旨報告され、当日出席された中野氏、中西氏に増田会長から表彰状及び賞品が贈呈されました。
 
【会員表彰】
 午後5時10分頃より会員表彰が行われました。表彰細則第2条第1項第一号(100歳以上かつ公認会計士の登録期間30年以上の会員)に基づき小林寶正氏(近畿会)、野瀬健三氏(近畿会)が、また、表彰細則第2条第1項第二号から第六号に基づく会員表彰贈呈者302名を代表して、近畿会の野瀬健三会員が増田会長より表彰状を授与されました。その後、野瀬会員よりご挨拶を頂き、会場から大きな拍手が起こりました。

野瀬健三会員

【感謝状贈呈】
 午後5時14分頃より、公認会計士業界の発展・進歩に貢献できる国際的職業会計人を養成するための奨学金として、昨年の50百万円に続き、本年250百万円のご寄付を頂いた東京会の川島正夫会員に増田会長から感謝状が贈呈されました。
 
【会長・次期会長挨拶】
 午後5時17分頃より増田会長による挨拶があり、続いて山ア次期会長の挨拶がありました。
【閉会の辞】
 午後5時25分頃、小宮山副会長により閉会の辞があり、定期総会が終了しました。
【最後に】
 本年の定期総会も審議議案が第12号議案まであり、また、近畿会の会員を中心とした熱心な質問等があり、昨年同様予定時間を30分程度超過する長い総会となりました。山ア彰三新会長をはじめ、日本公認会計士協会の新執行部は、会員からの意見に真摯に耳を傾け、環境変化が著しい公認会計士業界を強力にリードして頂きたいと思います。