寄稿

カレーと結婚

岡田裕人

 彼と結婚ではない。私は男だから。まだ今の日本では許されない。

 先日、縁あって女性と結婚することができた。天気予報に反して春らしい青空となった2010年3月21日、黄色いミモザが綺麗に咲いた京都の教会で挙式し、多くの方から祝福をいただいた。それから3ヶ月弱、おかげさまで幸せな日々を過ごすことができている。

 ところで、スパイスからカレーを作ることが私の趣味の一つである。新居の冷蔵庫には次のスパイスが保管してあり、それぞれカレーを作るにあたっての役割と体に摂り入れた際の効能がある。

(出典:スパイス大辞典)

※ご使用は自己責任でお願いします。             
 
 私がカレーを作る際の基本的なレシピは、これらのスパイスを硬そうなものから順に油でジックリ炒めて香りを出し、玉ねぎ、トマト、肉(マトンやチキン)、ヨーグルトと一緒に適当な時間煮込んで、塩で味を整えるだけである。
 自分のレシピのポイントは、油を多めにし、煮込むときは強火にすることによって、油とスパイスと具材がよく混ざるようにしていることである。スパイスの種類や分量、具材は気分次第ある物次第で作っている。
 友人にご馳走する場合には、何も知らせず隠し味の実験台になってもらっていて、チーズや醤油(ナンプラー)、ジャムが好評のようである。

 さて、私たちの結婚式に参列いただいた新郎側の列席者の方々は、上司、友人、後輩、いずれもヒトクセあるメンバーばかりであった。辛口の方、甘いマスクの方、芳ばしい方…。皆さん壮年に向かって歳を重ねていらっしゃるので、脂、(怪気)炎ともに十分といった感があり、その方々に混ざった私の人生も美味しいカレー(加齢?華麗?)になりそうだ…と、つくづく幸せを噛みしめている今日この頃である。

 最後に、妻と交際していたときに手製のカレーを食べさせた記憶が無いので、スパイスは恋愛や結婚への効能は無いのかもしれない。しかし、新婚生活と新婦は、蜂蜜や果物というよりは、ピリリと色々な汗の滲むスパイスのようであることに気づかされる日々である。