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国際委員会主催「IFRSセミナー(5回シリーズ)」 |
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国際委員会 山本憲吾 |
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国際委員会では、国際会計基準・国際財務報告基準(以下総称して、IFRS)の近畿会会員向けセミナーの開催を本年度の重点活動としており、下表の通り、5回シリーズでのセミナーを順次開催しております。今回はその3回目となり、下表にありますとおり、棚卸資産、リース、無形資産、有形固定資産、資産の減損、についてセミナーを開催いたしましたのでご報告させていただきます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
(第5回シリーズのIFRSセミナー概要) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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第3回は、上表のとおり平成21年12月3日(木)13時30分から16時30分までの3時間、近畿会研修室にて開催され、134名の会員の皆様にご参加いただきました。なお、今回のセミナーは、あらた監査法人のIFRSアカウンティングサポートグループのメンバーである、私、山本憲吾と、同じくメンバーの平岡伸也さんの2名で分担して講義を進めさせていただきました。 まず、最初に私のほうからIAS第16号「有形固定資産」を中心に、有形固定資産に関する論点について解説をいたしました。主な内容としては、当初認識と測定、事後の測定に関連するIFRSの基準の解説で、最後に日本基準との差異についても説明を加えました。 当初認識と測定に関しては、用語の定義を含む基本的な規定の説明のほか、資産除去費用や借入費用の資産化、交換取引の論点についても説明いたしました。また、事後の測定に関しては、取得価額をベースとした減価償却を行う原価モデルに加え、IFRSに特有の論点である再評価モデルについても説明いたしました。 最後にまとめということで日本基準との主な差異について話をさせていただきましたが、ここでは実務上の問題点となりがちな、コンポーネント・アプローチを含む減価償却方法、耐用年数の考え方や借入費用の資産化を中心に解説を加えました。 続いて、平岡さんよりIAS第38号「無形資産」についての解説がなされました。大きく@無形資産の例示A定義B無形資産の認識要件及びその類型C認識後の測定・償却・減損D日本基準との比較、の順に説明がなされ、その中で特に強調されていたのが、日本基準との差異のうち研究開発費に関するもので、日本基準においては原則費用処理される研究開発費のうち、開発段階に発生した原価については一定の要件を満たした場合、無形資産として資産計上されるというものでした。この点については、一般的に実務面での影響が大きいと考えられていることから、特に留意が必要であると説明されていました。 その他にも有形固定資産と同様に再評価モデルが認められるという点や、償却年数が見積もれない場合には償却を行わず毎期減損テストを行わなければならない点など、日本基準との差異を中心に解説がなされました。 続いて、再び私のほうから、資産の減損とリースについて説明をいたしました。 まず、資産の減損については、IAS第36号「資産の減損」について解説いたしました。主に資金生成単位などの重要な用語の定義の確認と、減損兆候判定、回収可能額の測定、減損の戻入に関して、IFRSを先行適用している欧州での実務に触れつつ、日本基準と差異がある論点について解説をいたしました。特に回収可能額の算定において、売却費用控除後の公正価値あるいは使用価値の算定や資金生成単位の識別に関する留意点について重点的に説明いたしました。 次に、リース会計については、主にIAS第17号「リース」について、日本基準との差異を中心に解説しました。また、最後に現在ディスカッション・ペーパーが公表され議論されている新しいリース会計の考え方について簡単に解説しました。このディスカッション・ペーパーは、主に借手のリースの会計処理について取り扱っているものですが、既存の会計処理を大きく変える可能性のある議論であり、今後のプロジェクトの進展に留意が必要と思われます。 最後に、平岡さんよりIAS第2号「棚卸資産」についての解説がなされ、@定義A棚卸資産の原価に含める範囲B原価算定方式C棚卸資産の評価方法D費用認識E日本基準との比較、という順に講義が進められました。棚卸資産について日本基準との差異となる点として、@定義については販売促進のための物品など製造に直接関連しないものは棚卸資産に含めてはならないこと、A原価範囲について固定製造間接費は「正常生産能力」に基づいて配賦しなければならないこと、B棚卸資産の評価において切放法は認められないことを中心に解説がなされました。特に、固定製造間接費の配賦については、設備の「正常生産能力」というものを把握・管理していない企業が多く存在すると考えられることから、実務上の大きなポイントになる可能性が高いという点が強調されていました。 以上、簡単ではありますが、国際委員会主催第3回IFRSセミナーについてご報告させていただきました。次回の第4回IFRSセミナーにつきましては冒頭の表中にありますように、新日本有限責任監査法人に担当していただく予定となっており、今回同様、その概要につき近畿CPAニュースへ寄稿をしていただく予定となっております。 |