特集

平林亮子氏インタビュー

野瀬裕子

 今回の平林さんのインタビューは、近畿会会員の野瀬裕子さん(現在、京滋会所属)に、お願いしました。  インタビュアーの野瀬さんは、ご自身もブログや本の執筆活動をされており、沢山の著書を出版されている平林先生のお話に大変興味があるということで色々と興味深い突っ込んだインタビューをしていただきました。
●独立前のエピソードについて
Q. 監査法人に入る前から将来独立してやっていこうと思っていましたか?
A. 私は結婚して家庭に入ろうと思っていました。そのため監査法人に入る前から、独立開業する予定でした。
   
Q. 監査法人に勤めると同時に、専門学校で教えられていたのには何か理由があるのですか?
A. たいした理由はありませが、監査法人に入る前からずっと教壇にたっていたので、流れですかね。教壇に立つのは好きなので、それ以上の理由を考えたことはあんまりありません。
   
Q. もし女性特有の独立することの強み・弱みがあるとすれば、それはどんなことだと思いますか?
A. 強みは、ビジネスの中で紅一点になれること。あんまり期待されないので、少し成果を出すとやたらに評価されることでしょうか。弱みは、うーん、何だろう。なめられるのが嫌な人はつらいかもしれません。
   
●独立されてからの方向性について
   
Q. 独立して事務所を運営される中で、中心とされている業務は何ですか。
A. 事務所の仕事は、ベンチャー企業のコンサルティングほぼ一本です。基本的には口コミでしか仕事を受けておらず、実は事務所の場所もホームページでは非公開にしているんです。
   
Q. ベンチャー企業のコンサルティングという分野を選ばれたのはどうしてですか。
A. 能動的に分野を選んだ、選んでいるということはありません。最初は「ベンチャー企業の記帳代行をやって」と知人に依頼を受け、せっかくだからと思って携わったのがきっかけです。社会のニーズと自分が楽しいなと感じることと、金銭的な折り合いと、色々な意味で一番のビジネスの種になったという感じです。今後も固執するつもりはありません。
   
Q. 立ち上げ段階の企業で公認会計士のニーズがあるというのは、具体的にどのような点ですか。
A. 単なる記帳代行だけ、税務だけ、といった業務を提供する会計事務所は多いのですが、もう少し踏み込んでアドバイスがほしいというニーズがあるのです。コンサルティング会社に頼むと今度は高額な報酬が必要ですし。その間に入ってちょうど良い金額、フットワークでサービスを提供しています。
   
Q. それでは多くの会計事務所が行っている税務業務はされていないのですか。
A. 実は税務業務は一切行っていません。それが私の事務所の一番の特徴といえるかもしれませんが、私は税理士登録もしていないのです。
   
Q. 税務業務を行わないことに不安は感じませんでしたか。
A. 色々な方に個人事務所が税務をせずに食べて行くことが難しいとアドバイスをいただいたのですが、「まあ食べて行けなくなったら、その時はその時」と思ってやってみたのです。まあ今のところ、食べて行けているのでよかったなあと感じています。ちょっとあまのじゃくかもしれませんね。
   
Q. 口コミで仕事を受けるとお聞きしましたが、紹介を受けたという関係があると、お断りする場合に難しいこともありませんか。
A. お断りするということは、あまりありません。大概の場合、お会いしてみて、こちらが「あまり合わないかも」と思った場合は向こうも同じことを思っていることが多いからです。知り合いも紹介する時点で、多分いけるだろうという思惑があるのかもしれませんね。
   
Q. 監査法人を辞めて独立することに悩まれている方に何かアドバイスするとしたら、どんなことでしょう。
A. 最近、監査法人を辞めようか迷われている方から、相談を受けることがあるんです。「独立してやっていけるのでしょうか」とか「いつ辞めたらいいのですか」といったようなことです。私はお話を伺っているうちに、考えることよりも、もしやってみようと思ったら独立してしまうことだと感じました。別に独立したいと思わなければ、無理をして独立する必要もないですし、事前に頭で考えすぎない方がいいと思います。
   
Q. 多くの個人事務所がある中で、あえてメディアに出る形で仕事をしようと思ったのはなぜですか?
A. たまたまそういうご依頼をいただいたからで、あえて出ているつもりはありませんし、メディアへの出演が特別なことだとも思っていません。芸能事務所との提携は、かっこよく言うとスカウトされたことではじまったのですが、私にとってはコンサルティングのご依頼を受けたのとまったく同じで、単なる活動の一部です。ご依頼を受けたものが、ベンチャー企業のコンサルティングであれ、メディアへの出演であれば、できる限り対応する。人前に立つのはキライじゃないので、私でお役に立てるのなら、と。ただ、メディアからのご依頼は、ノーギャラのものも多いので、コンサルティングのクライアントさんへの対応時間が削られないようにだけは気をつけています。
   
Q. 本を書いたりテレビに出たりしようと思った、初期の時代の思い出深いエピソードがあれば教えて下さい。
A. そもそもメディアもコンサルも家事も、私にとってはすべて同じことです。そういう役割を与えられたからやらせていただく、というだけです。だから本もテレビも、初期の思い出というのも特にないです。日常の活動の一環というだけです。
   
●メディアでのご活躍について
   
Q. 執筆の話は平林先生の方から、出版社に企画を持って行くという形ですか?
A. 基本的に先方から依頼をいただいたものだけを書いています。ただ編集の方とはいつでも遊んでいるので、その中で企画が持ち上がることはあります。お客さんの本のプロデュースをする場合は、もう少し積極的に動きます。
   
Q. お客さんの本のプロデュースとは、企画を作ってあげたり、書き方を指導したりということですか。
A. どちらかというと、著者と出版社をマッチングするというところです。私が「この社長さんが本を書いたら、広報戦略の一環として会社のためにも社会のためにもなるだろう、この社長さんが本を書いたら面白いだろう」と思った時に、この本だったらあの出版社がいいというような構想を練って、その方々を引き合わせるのです。その席に私が企画書を作っていって、どうでしょうかとご紹介するような形でプロデュースをしています。 企画が通った後も、執筆から校正、タイトルの相談から販促活動まで、ありとあらゆる点で出版社と社長さんとの打ち合わせに加わり、できるだけ社長さんのイメージにあった活動を展開できるようサポートしています。
   
Q. 出版社はそれぞれ出したい本の傾向があるといいますか、出したい本の内容で色が違うのでしょうか。
A. そうですね、色は違います。あと出版社の中でも、編集担当の方々それぞれで全然違った個性があるので、「あの人とこの人ならうまく行くかも」と思って勝手にお見合いをさせてしまったりします。人と人との相性というのも重要なポイントです。
   
Q. 平林先生の本はアマゾン書店で販売されているだけでも28冊、1年に2冊以上ものペースで本を出版されています。ご多忙な中で、コンサルティング・企業研修・執筆にかける時間はどのように配分されていますか?
A. 基本的に原稿は全部自分で書いていますが、時を忘れて書いていることもあります。集中して書いていて、気が付いたら3食くらい食べていなかったと終わって初めて気づく、みたいなこともあります。あんまり時間配分を考えたりはしないですね。それにそんなに時間的に無理をしなければならないほどお引き受けしているわけではないですし。お引き受けした以上、やるべきことをやる、ただそれだけです。
   
Q. もし時間をつくる上で何か意識されているコツがあれば知りたいです。
A. A.時間を作る、という発想がそもそも無いのですが、、、やりたくないときには無理をせず、締め切りを守れなくても命まではとられない、という開き直りによって、心にゆとりを持つことがコツになるのかな。
   
Q. 直近では、相続や士業の女性とのネットワークづくりについての著書を出版されていますが、活躍される分野はどのように決めていますか?
A. 流れに身を任せ、自分ではあれこれ決めないことにしています。他人に決めてもらう、というわけでもないのですが、物事の流れのなかで、「自分の役割はこれかな」と感じたものに取り組みます。
   
Q. 企業研修でも出版でも、次の仕事につなげるために「特にこれ!」という工夫をされているポイントがあれば教えて下さい。
A. A.「次」を考えないで、一つ一つに集中して楽しむことにしています。ありがたいことに営業をこちらからするということは今まで一度もなく、知り合いからの口コミのご紹介に対応するだけで目いっぱいです。
   
●平林先生ならではのことについて
   
Q. 平林先生の「ここだけは負けない」というセールスポイント、長所はどういうところだとお考えですか。
A. いつも笑顔で穏やかなところ。心の中では、落ち込んだり、悩んだりもしていますが、あんまりそういうふうに見えないらしいです。
   
Q. 平林先生の毎日楽しく幸せに生きるというモットーに非常に共感します。抽象的な質問となりますが、そのためには何が一番優先度が高いとお考えですか。
A. 優先度とか、楽しく幸せにいきるために必要なこととか、そういうことを頭で考えないことが一番の秘訣だと思っておりますが、あえていうなら「家族」と「自由」を大切にすることです。
   
Q. 毎日楽しく幸せに生きる中で、特にこんな時が楽しいなと思う時はどんな時ですか。
A.  根本的には、わりとずっと楽しいのですが、家でテレビを見ているときとお客様と話をしているとき、それから、本ができた時には嬉しいです。店頭に並ぶ1週間くらい前に見本が手元に届くのですが、その包みを開けると瞬間はものすごく楽しくて、「わあ、できたあ」という感じがします。また店頭に並んだ本を、誰かに手に取ってもらえた瞬間も楽しかったりします。 根本的には、どんなとき楽しいか、とか、どうしたら楽しいか、とか、楽しいに理由はいらないと思っています。「我、楽しいと思うゆえに楽しい」みたいな。
   
Q. 時にはつらい時や苦しい時もあるかと思いますが、それを乗り越える時に自分の中で助けになるような言葉はありますか?
A.  そもそもそんなことを乗り越えようとしない(笑)、つらいつらいつらい、と毎日過ごすだけ(笑)。ただ、「損をしたと思うくらいがちょうどいい」「どうせなるようになる」と唱えると少しだけ楽になるかも。
   
Q. この先「30代でしたいこと、40代でしたいこと」といった、5年後・10年後の目標はありますか。
A. 今のままで十分なのですが、もし、できるのであれば、世界平和への貢献と若手への教育ですかね。
   
Q. また20代、30代の方に向けて「これだけはやっておいたほうがおすすめ」ということがあれば、お願いします。
   
A. 結婚。女性ならできれば出産も。もちろん、結婚も出産も、いろいろな事情でできない方もいるでしょうし、私も出産は経験していませんから、偉そうなことは言えません。押し付けるつもりもありません。でも、新しい制度を覚えることよりも、家の中で人と接し、笑ったり、怒ったり、泣いたり、そういう時間を持つことが人間として大切だと思っています。そして、自分より大切に思える他人がいることは、人生においてとても素晴らしいことだと思います。結局、人生は、人と人とのコミュニケーションによって成り立っているのだと思いますから。
   
Q. 結婚してご家庭に入ろうと思われていたのに、仕事を続けていらっしゃるのはどうしてですか。
A. できれば専業主婦になりたいなと思って、タイミングをいつも計っているのですが、誰も「仕事辞めないの?」と聞いてくれなかったのです。そしてタイミングを逸してしまいました。今は、子育てという形で社会に貢献できないでいるので、せめて少しくらい家庭の外でも働こうかな、と思っています。
   
Q. 立ち入った質問になりますが、家計を担う人、家事を行う人はそれぞれ夫婦で折半ですか。
A. 家計は完全に折半で、独立採算制です。家事は、どちらがするといった決まりはありません。できるほうができることをする。主人は基本的にはとても忙しい人なのですが、家にいるときはよく家事をしますね。どちらがする、とか決めなければ、お互いに素直に「ありがとう」といえますし、とても良いと思います。
   
Q. 最後に、この会報をお読みの方々に何かメッセージを一言お願いします。 。
A. 人生、真面目に生きていれば何とかなると思います。あんまり難しいことを考えすぎず、自分の人生を自分で規定しないようにすれば、可能性はどんどん広がるのではないでしょうか。
今日は遠いところから、本当にありがとうございました。 ありがとうございます、こちらこそ。