まず、道幸静児氏の司会のもと、吉田亨司関西監査法人協議会創立30周年記念行事実行委員長が開会の挨拶において、関西監査法人協議会が設立された経緯とその趣旨、監査法人を取り巻く環境の変化、監査法人における監査の品質管理、関西監査法人協議会の活動について、話がなされた。
次いで、記念講演に移り、まず、浜口伝博氏によるご講演が、クイズも交えて面白く行われた。特に、印象に残った点は以下の2点である。
(1)浜口氏は長い間鞄月ナ、日本アイ・ビー・エム鰍ネどで産業医をされており、多くの患者を診てこられたが、手遅れが多く治せないことが多い。病気にかかるのは、かからない方法を知らないからである。人間が健康であるという研究は、人間はどうすれば死ぬかという研究である。その死因のなかで多いのが自殺である。自殺の95%は精神病であり、その60〜80%はうつ病である。うつ病はセロトロン、ノルアドレナリンの不足により生じるものであり、これを増やすことにより、うつ病は治る。うつ病を治し、元気になるのには、@まずは寝るA自分を褒めてくれる人に近づくB積極的にあいさつをするC趣味を持つ・運動をする・気分転換をすることである。
(2)昭和47年に、労働基準法第五章(安全と衛生)が労働安全衛生法に移設された。労働安全衛生法では、「事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない。」ことと、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」ことが定められている。そのような環境のもと、電通過労自殺訴訟において、使用者側が敗訴し、過度の残業・メンタルヘルス不調・自殺があると使用者は責任を免れないことが明らかとなった。災害発生の可能性を予見し(予見義務)、事故の結果を回避する(結果回避義務)という2つの義務を果たしたときに、初めて使用者の債務不履行責任は免れることができるとのことで、監査法人あるいは監査事務所を経営する経営者においても、十分に留意すべき事項である。
続いて、新井武広氏による講演がおこなわれた。新井氏は平成19年6月から企業会計基準委員会委員をされており、現在は、企業会計基準委員会に設置された国際対応、特別目的会社(連結)、財務諸表の表示、過年度遡及修正、セグメント情報、棚卸資産、投資不動産、1株当たり利益、排出権取引などの専門委員会の専門委員長をされておられる。特に印象に残ったお話は、以下のとおりである。
(1)国際的な動向では、IFRSの導入が相次いでおり、EU諸国では、平成17年よりEU域内を本拠とするすべての上場企業にIFRS準拠の連結財務諸表の作成が義務付けられている。また米国では、平成19年11月に外国企業に対してIFRSに基づく財務諸表を調整開示なしで受け入れることになり、平成20年11月米国企業に対しても平成26年以降段階的にIFRSの使用を認めるかどうかを平成23年に決定する事を提案している。さらに、オーストラリア、カナダ、韓国、インドなど世界100カ国以上(EU諸国を含む)がIFRSを導入又は将来的に導入することを表明している。
(2)平成20年3月、欧州証券規制当局委員会が日本基準について、企業会計基準委員会のプロジェクト計画表どおりに基準開発が行われることを前提として、米国基準と同様IFRSと同等とする助言を公表している。同年12月、欧州委員会は平成21年1月1日より、欧州市場においてIFRSのほか、米国基準とともに日本基準での財務報告を認める規則を公表した。
(3)平成21年6月、企業会計審議会企画調整部会が、@任意適用は国際的財務・事業活動を行っている企業の連結財務諸表において平成22年3月期から実施AIFRSの使用を強制するかどうかは、任意適用期間での適用状況、IFRSの改善内容、国際会計基準審議会のガバナンス体制、米国などの海外の動向等を踏まえて、とりあえず平成24年を目途に判断B強制適用は判断時期から少なくとも3年間の準備期間が必要C会計基準のコンバージェンスの継続・加速化について、「我が国におけるIFRSの取扱いに関する中間報告」を公表している。
(4)平成19年8月の東京合意において、企業会計基準委員会は日本基準とIFRSのコンバージェンスを加速化することに合意し、短期項目は平成20年までに完了しており、中期項目は平成23年6月30日を目標期日に設定している。
(5)国際会計基準審議会が現在対応しているMOUプロジェクトに対して、@企業結合A連結の範囲B収益認識C負債と資本の区分D金融商品E認識の中止F公正価値測定G退職給付HリースI財務諸表の表示について対応している。
最後に、澤田眞史日本公認会計士協会副会長が、公認会計士協会はIFRSを重視しており、柔らかい頭で困難なIFRSにポジティブに対応する必要があり、関西監査法人協会もポジティブに対応するという趣旨の閉会のご挨拶があった。
このあと、北山久恵氏の司会のもと、懇親会が開催された。 まず、中西清氏が開会の挨拶として、関西監査法人協議会設立当初の話がなされた。
ついで、来賓である谷晋介近畿会会長代理、長谷川佐喜男京滋会会長の紹介がされ、石川昌司氏の音頭で乾杯が行われ、賑やかに歓談が行われた。
途中、OBである沖見圭祐氏、枡田圭兒氏、河野保氏が当協議会に関する回想を語られた。
市田龍氏が、今後も会員法人が切磋琢磨して監査のために頑張りましょうという力強い閉会の挨拶をされ、増田豊氏の音頭で万歳三唱が行われ、盛況のうちに閉会となった。
以上、全国で唯一の監査法人による協議会である当『関西監査法人協議会』の今後のますますの発展を祈念しつつ、関西監査法人協議会創立30周年記念行事のご報告を終えたい。
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