報告
女性会計士委員会

シリーズ 女性リーダーに聞く 〜 第9回 〜

委員長 栗原貴子

日 時: 平成21年6月20日(土)15時~17時 /
場所: 日本公認会計士協会近畿会 会議室
参加者: J1の若手から中堅、ベテランまでバランス良く、男女含めて約40人
〜はじめに〜
 今回は、シリーズ「女性リーダーに聞く」の第9回の企画として、大手監査法人の女性パートナーに集まっていただき座談会を開催しました。事前調整をしていく過程で驚いたのは、今年の冬の企画段階で大阪の大手監査法人には女性パートナーが7人しかいないということでした。しかもワーキングマザーのパートナーはいない・・・ということで、この企画のために東京から3人のワーキングマザーの代表社員・シニアパートナーの方々に来ていただくことにしました。講師として参加していただいたのは、下記の方々です。
代表社員・シニアパートナー(50音順)
鹿島かおるさん
(新日本:東京)
北山久恵さん
(あずさ:大阪)
土岐祥子さん
(あらた:東京)
日高真理子さん
(新日本:東京)
社員・パートナー(50音順)
 
佐藤陽子さん
(新日本:大阪)
下井田晶代さん
(トーマツ:京都)
田中久美子さん
(あずさ:大阪)
 
社員・パートナー(50音順)
   
林玉子さん
(トーマツ:大阪)
林由佳さん
(新日本:大阪)
   
1)感想1
  参加してくださった女性パートナーの皆さん、特に代表社員・シニアパートナーのみなさんの個性とパワーには圧倒されるものがありました。 皆さんにはキャリアプランという点について、それぞれのキャリアの軌跡や現在のお仕事についてお伺いしました。中でも印象的だったのは、東京のシニアパートナーの方が監査報告書に筆頭社員としてサインすることになったときの責任の重みについてお話されたことでした。最終的な判断は自分が下さなければならない状況になったときに、今までとは違うと感じたというようなことをお話されていました。パートナーと職員の違いについて認識させられたお話でした。
 また、ワーキングマザーのパートナーの方からワークライフバランスについてお話を伺いました。皆さん配偶者の方と上手に協力しあって現在の生活を送られているご様子でした。当然のことですが家事を一手に引き受けている方は皆無で、中には専業主夫の配偶者をお持ちの方もいらっしゃいました。家族とは朝しか顔を合わさなかったり、今回このセミナーに参加することをお子さんにお話したら「ママは家庭と仕事は両立してないじゃん」と言われたり・・・といったお話もありました。結婚して会計士として働いている女性の中には、家事の大部分・育児の大部分を担っている方もいらっしゃるでしょうが、家庭と育児は夫婦共同の責任であることを改めて感じました。そして、経済的な責任・家庭的な責任を夫婦共同で分担するためには、私達が自分の仕事に誇りを持ち、かつ夫にとってはいつまでも魅力的な妻でいることが必要なのではないかと思いました。今回お話していただいた皆さんは、責任あるお仕事をされていながら、人間としてまた女性として非常に魅力的な方々でした。私もあのようなパートナーになりたい・・・と思いました。
2)感想2
  関西ではまだまだ数が少なく、女性パートナーというと、あの人とあの人と・・・と名前や顔を思い浮かべられる程度ですが、東京では大手法人毎に数十人といった単位での女性パートナーがいらっしゃるということに、まず驚きました。東京から来て頂いた3人の代表社員(シニアパートナー)の方々はいずれもお子さんがいらっしゃるということでしたが、仕事内容の選択やご家庭のマネジメントにおいて、各々のスタイルがあり、固定観念に縛られることなく、自由に発想をしていらっしゃる姿にたくましさと頭の柔軟さを感じました。
  仕事の面で参考になったのは、女性パートナーとしてクライアントとの関係をいかに確立していくかという点についてですが、いわゆるボーイズクラブというか、男性同士の言外の親密感のようなものに対して超えられない壁を感じることがないかという問題に対し、厳しい状況であればあるほど利害に直面するため、より男女差というのは関係なくなるという点、また、「自分をこう見せよう、こう見られたい」という気持ちを捨てて、いかなる場合であっても率直に、正直に、真摯に対応するといったことをお答え頂き、胸に響きました。
  また、現在はどの法人でも、女性の活用ということについて積極的に取り組んでおられると思いますが、その安定的な運用と定着・周囲の理解について質問したところ、「能力とパフォーマンスを混同してはいけない」ということを言われました(その方は人事担当!)。つまり、能力がある人は昇進させましょう、しかし出産・育児等である一時期に仕事の時間が短くなった場合には、経験の量が少ないということでもあるので、その分昇進は少しゆっくりになるかも知れない、ということにしないと、本人の自信と普通に働いている人たちの平等感が得られないということです。二つの側面で分けて考えれば、目標設定や人事評価もよりクリアになり平等感が得られるのかなと思い、目から鱗が落ちました。
3)感想3
 2008年12月に入所しまして約半年、監査法人での業務に少し慣れてきた6月に開催されたこのセミナーへ参加したのは、一度に様々な女性パートナーからお話が聞ける貴重な機会だと思ったからです。同じ女性としてどのようにキャリアを積んでこられたのかをお聞きし、自分がこれから監査法人にて経験を積んでいく上での指針にしたいと考えていました。
  セミナー中は、パネリストとして参加された女性パートナーの方々が、共通して明るい笑顔で楽しくお話をして下さり、非常にリラックスして聞かせて頂きました。ご自身の経験談の中で、女性として特徴的なのかもしれませんが、焦らずじっくり着実に仕事に取り組んできたというお話をして下さった方がいらっしゃって印象的でした。また、後輩会計士に向けてのアドバイスで心に残ったのが、自分の目標・希望を強くイメージすること、頂いたチャンス・仕事に対して、全力でチャレンジするということ、周りに対する感謝の気持ちを忘れないこと、という言葉でした。
 セミナーには、聴講者として女性マネジャー・シニア・スタッフも沢山参加されたので、その方々がパネリストのパートナー陣にされる質問相談内容についても興味深くお聞きしました。また、参加されていた男性陣からもユーモアあふれる質問が出たり、仕事だけでなくご家族や普段の生活の話にまで深く触れて頂いたりで、笑い声のたえないセミナーでした。
 普段仕事で接する機会のある女性パートナーは、まさしくスーパーウーマンというイメージで憧れの存在ですが、そのような方でも、様々な困難や苦労も経験されて今のご自身があるのだというお話を聞いて、自分も現在の仕事を1つ1つ経験していくことで成長していこうと思いました。またこのような機会があれば、ぜひ参加したいと思います。
4)感想4
 全体の感想として、参加してよかった!!と思ったセミナーでした。私の周りに女性のパートナーはおらず、初めて女性パートナーの方のお話を聞く機会となりました。みなさん「女性」だから特に何かを頑張った、苦労したとは思っていないとおっしゃっていましたが、お話からはやはり男性とは異なる女性らしさというものが感じ取られました。また、パートナーとなると魅力的なことも多い反面、責任の重さという大変さも感じることができました。
 講師を務めてくださった女性パートナーの多くの方が、「私は上司に恵まれていた」「運が良かった」と特に女性だから何かを頑張ったということはなく、普通に仕事を頑張っていたらパートナーとなる機会を与えてもらえたと言われていました。しかし、同時に「自分にはリーダーシップを発揮する器ではない」ことを自覚し、周りの調整役として邁進したり、部下にリーダーシップを発揮できる人を巻き込みチームとしての仕事を成したり、と自分の性質や役割を見極め遂行した結果、パートナーとなることができたという方が多かったと思います。それはやはり男性とは異なる女性のキャリアアップの特徴ではないかなと感じました。
  ただやはり、大きな組織のトップとなるには仕事に重心を置いたワークライフバランスとなっているなと感じました。今回お子さんがいらっしゃる方は3名でしたが、みなさんご主人が女性パートナーの方よりも子育てに時間をかけることができるため、現在の仕事ができるようでした。私にとってのベストワークライフバランスを保つためには、監査法人のパートナーを目指すべきか、独立すべきか、はたまたどこかで雇われて仕事を続けるべきか、今後考えていきたいと思っています。そのためにも、今後もこのようなセミナーにぜひ参加したいと考えています。
5)感想5
 パートナーの皆様、先日はお忙しいところ集まって頂き、また貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました。とっても参考になりました。自分がパートナーを目指すなんて入所以来、考えてもいなかったのですが、これからは選択の一つに入れて日々がんばりたいと思います。
6)当日の主なQ&A
Q1: 「事務所のトップになりたいか?」
A1: (皆さま謙虚な方だからかもしれませんが?)残念ながら、 「なりたい!」 という答はゼロ。「事務所長など事務所経営に携わるよりも、テクニカルな面でがんばって行きたい!」
Q2: 「パートナーになってみてどうですか?(なってなければ、果たして???)」
A2:  「パートナーになって本当に良かったと思いますので、皆さんもがんばって目指してください。」
Q3: 「男性パートナーの中には、クライアントと酒を飲み交わしてコミュニケーションを図り、親しくなって「ここだけの話」を教えて貰うなど、『飲みニケーション』を大事にする方もいます。一方、女性がそういうった付き合いをするにも限度があると思いますが、皆様はそのようなクライアントとのコミュニケーションを必要だと思いますか?」
A3:   「あくまでクライアントからの信頼は、テクニカルな部分にあると思っているので、そのような心配は不要です。」
7)セミナー参加者からの主なアンケートコメント
普段なかなか聞けないような先輩の方々のお話を聞いてモチベーションが上がった。
(仕事と育児との両立について「自分がどうしたいか、何を選択するのかの「覚悟」次第というコメントを受けて)子供と接する時間が短いことに罪悪感を持たず割り切る(覚悟する)のは難しいと思いますが、活躍されている方は素敵です。
  事務所・部のリーダーとして必要なのは、単にぐいぐい引っ張るだけでなく、コミュニケーションを密にとったり、周囲の協力をうまく取り入れたりすることも大切だと改めて認識しとても勉強になりました。
 みなさんご自分の個性に合わせたマネジメントの方法をもたれているのがとても参考になりました。
(参加者からの「事務所のトップになりたいか?」という質問に対し「なりたい!」と明言された方がいなかったことに対して)1人くらいトップになりたいという女性がいて欲しかった。全体として優等生的な発言が多くもう少しどろどろした話があってもよかった。
幅広い講師陣のラインアップでいろんな視点からの話が聞けてとても参考になった。また全体の構成や段取りが非常にオーガナイズされていて充実感があった。
  皆さん明るくパワフルで自分のキャリアを考える上で非常に参考になりました。また定期的にやっていただけたらと思います。
8)必見!「女性が働く際、男性のここは『困る』」『許せない』という行動・考え方」
沢山の残業・出張を美徳とする(悪しき社風を奨励)
飲み会やゴルフをしたらコミュニケーションが向上すると思い込む
早退・休暇理由(育児家事 vs 飲み会ゴルフ)の違いで評価や担当決めに大差をつける
真剣に叱らない(ついつい甘やかす)
腫れ物を触るように特別扱いして、男性と同じような指導をきちんとしない
「女性だから」と仕事や評価が大きく違い、物事を公平に見ない、チャンスも与えない
気遣いすぎ(チーム全員が残業でJOB完了を目指す中、女性だけに早く帰れと言う)
大規模な会社、環境の厳しい業界、新規プロジェクト等の難しい仕事は任せない
育児等の女性の経験不足を単に「働く時間が短い」と言葉足らずの説明で誤解させる
お酒の場に引っ張り込もうとする
親しさの表現として同席した部下や後輩の女性の体形や容姿のことを話題にして場 の笑いをとる
下ネタ系の話題を女性のいる場でするばかりか、女性に直接その手の話を振る
 女性とは男性と同じような関係は難しいと距離を置いて敬遠する(どこかよそよそしい)
 べからず発言 ワースト3 を平気で口にする
 
@ 「働く母親の子供はかわいそうだね」
A 「結婚したらしいね、で、いつやめる予定なの?」   
B 「彼女は男の子みたいにサバけた子なので、酒の席でこのくらいの(下ネタ)話は大丈夫ですよ」
〜結びに〜(男性参加者からの御礼の言葉を引用)
 女性パートナーの皆様、お忙しい中、誠にありがとうございました。率直なご意見大変参考になりました。正直に胸に手を当てて考えてみると、私自身、女性に対して常に男性と同じように接することができているかどうか、あまり自信がありません。頂戴したアドバイスを参考に、自身を顧みるとともに、所内の人事施策の改善にも役立てたいと思います。今後とも、何かと教えていただくことがあろうかと存じますが、何卒、よろしくお願いいたします。
(委員会後日談)
 今回の女性パートナーは、気負わず、周りへの感謝と思いやりも忘れず、発言超格好いい〜! でも今後は、人事や品質管理だけでなく、業務開発担当という女性パートナーも出て来て欲しいです! 勿論、近い将来、女性の監査法人事務所長や理事長、さらには日本公認会計士協会会長の誕生におおいに期待しています!!

 “ 女性よ、大志を抱け! Girl s, be ambitious ! “