外部調査委員会・第三者委員会委員候補者 登録のご案内

 副会長 小川 泰彦

 
@はじめに

 企業において不正・不祥事が見つかった場合、外部の調査機関を利用したり、外部の有識者を構成員とした調査委員会を設置することが多くなっています。
  この現象は、外部の調査委員会を設置することで、企業の不正・不祥事を企業内部で発覚後に調査したことに、一定の客観性や透明性を担保することであります。また、株主代表訴訟に備えた法的な側面の助言を受けるというメリットがあると言われています。
  ここ数年、監査法人の指摘や証券取引等監視委員会の調査で不正会計が見つかった場合、弁護士等の外部の専門家に原因や事実関係・経緯等の調査を委託し、受け取った報告書を証券取引所や自社のホームページに公表することが多くなっています。
  ところが、証券取引等監視委員会は6月において、外部の専門家の調査で公表された報告書に虚偽の記載が見つかったと相次いで指摘しました。
  家電量販店大手B社が不動産売買の利益を不正計上した問題では、同社の元会長の認識について報告書に「嘘」があったと認定しましたし、自動車部品メーカーF社が利益を水増し計上した問題では、証券取引等監視委員会が報告書に記載のなかった関連会社の不正支出を見つけだし、その後、同社は不正支出と公表しましたが、同社関係者によれば、「当時の社長が辞めるまで公表できなかった」と証言しています。

 
A独立性(第三者性)
  証券取引等監視委員会は、処分に至らなかった不正会計についても各企業が公表した報告書をすべて調査していますが、大半のケースで「嘘」や「お手盛り」があると指摘しています。具体的には、経営者の関与を指摘していないこと、手口を正しく記載していないこと、複数年度に跨る不正なのに単年度しか調査していないこと等が挙げられています。
  このように虚偽の報告書が作成されるのは、企業による意図的な情報の隠匿や虚偽の説明が主な原因であるとされていますが、一部の投資家からは、調査委員の企業からの独立性(第三者性)も否定できないとの意見も根強くあります。
  つまり、調査委員は不正・不祥事を起こした企業等から選任され、かつ、調査報酬を貰うということでは、公正な調査が期待できないとの意見であります。しかも、一部の不埒な企業は、「報告書の公表は、再発防止への取り組みを株主や投資家に明示することであり、調査の中味より外部に調査を委ねたこと自体に意味がある」と嘯いています。
  このように虚偽の報告書が公表された背景には、外部調査委員会の設置自体を目的化し、本来の設置目的を形骸化させてしまったことが考えられます。調査委員の独立性(第三者性)を確保することが、本来の設置目的を達成するために必要不可欠な要素であると考えます。
 
B近畿会の取り組み
 近畿会は、このような問題意識から大阪弁護士会と協同で「外部調査委員会・第三者委員会」の委員候補者を推薦することに取り組むことと致しました。企業自らが調査委員を選任するのではなく、両会に調査委員候補者の推薦を依頼することで、企業と調査委員との間の独立性(第三者性)を確保しようとする目論見であります。
  近畿会においては、各種委員の推薦は会員業務部所管でありますので、調査委員の推薦も会員業務部で行います。ただし、調査業務が大阪弁護士会の会員との連携することを予定していますので、3回程度の研修を経た上で調査委員候補者の登録をすることにします。
  遅くとも来年の2月頃には、両会において調査委員候補者の登録が一段落するものと計画していますので、マスコミ等への広報活動を通じて企業への周知を図りたいと考えています。
  外部調査委員会・第三者委員会の委員として、公認会計士が持つ本来の資質を社会に発揮したいとの意欲のある会員各位におかれましては、事務局にご一報を頂きたく、お願い申し上げます。