自由論題の部

G 四半期の開示分析

京滋会 山下 亙相氏

  開会に先立ち、深井京滋会副会長より、「本年度より導入された四半期開示制度であるが、既に200件を超す多くの訂正事例が出ているため、本日の山下先生の開示事例分析を是非とも実務の参考にして頂きたい。」旨のご挨拶がありました。
T.開示事例の傾向
 今回の開示事例分析では、第1四半期報告書を中心に一部第2四半期報告書も加えて、四半期決算手続、簡便な会計処理、四半期特有の会計処理、著しい変動の注記等の開示事例の分析がなされた。分析のため、東証1部上場会社の第1四半期報告書から無作為に各業種最大30件程度、33業種合計で609件をサンプル抽出した。
  まず、「簡便な会計処理」について開示されている項目が紹介され、「繰延税金資産の回収可能性の判断(40.2%)」、「定率法を採用している場合の減価償却費の算定方法(39.9%)」、「棚卸資産の評価方法(実地棚卸の省略)(33.5%)」など、14事例が紹介された。
 続いて、「四半期特有の会計処理」については、「税金費用の計算(26.9%)」でその他の「原価差異の繰延処理」や「後入先出法の売上原価修正」は、開示されている事例が非常に少なかった。
 3つ目に、「著しい変動に関する注記」については、「売上高又は営業費用に著しい季節的変動がある場合の注記(11.3%)」、「有価証券に関する注記(10.2%)」、「株主資本の金額の著しい変動があった場合の注記(7.7%)」など7事例が報告された。
  そして、「重要な会計方針の変更」に関しては、平成21年3月期の第1四半期より強制適用となる会計基準等のうち、「棚卸資産の評価に関する会計処理」(企業会計基準第9号)及び「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告18号)と、早期適用が可能な会計基準等のうち、(改正)「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)、「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準第15号)、及び「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号)についての開示状況が示された。結果、強制適用となっている「棚卸資産の評価に関する会計基準」が76.5%、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」が44.8%と高い開示比率を示した。早期適用可能な基準では、(改正)「リース取引に関する会計基準」が54.0%と高い比率を示したが、他の基準については、非常に低い開示状況であった。
U.開示事例の分析
 開示事例の分析については、下記の項目について企業の具体的開示例が示され、わかり易く解説頂いた。以下、項目のみ掲載する。
 1.四半期決算手続
  (1) 棚卸資産の評価方法
  (2) 外貨建収益及び費用の為替換算
2.簡便な会計処理
  (1)一般債権の貸倒見積高の算定方法
  (2)棚卸資産の評価方法
    @実地棚卸の省略
    A棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げの方法
  (3)原価差異の配賦方法
  (4)定率法を採用している場合の固定資産の減価償却の算定方法
  (5)法人税等の納付税額の算定方法及び繰延税金資産の回収可能性の判断
    @法人税等の納付税額の算定方法
    A繰延税金資産の回収可能性の判断
  (6)その他
 3.四半期特有の会計処理
  (1)原価差異の繰延処理
  (2)後入先出法における売上原価修正
  (3)税金費用の計算
4.著しい変動の注記
  (1)有価証券に関する注記
  (2)デリバティブ取引に関する注記
  (3)担保資産の注記
  (4)売上高又は営業費用に著しい季節的変動がある場合の注記
  (5)セグメント資産の著しい変動があった場合の注記
  (6)株主資本の金額の著しい変動があった場合の注記
  (7)リース取引に関する注記
5.表示方法の変更
6.重要な会計方針の変更
  (1)棚卸の評価に関する会計基準
  (2)連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い
  (3) リース取引に関する会計処理

 (報告:田篤)