パネルディスカッション

パネルディスカッション

 
基調講演、報告に引き続き、「公認会計士の現状と将来」をテーマに4名のパネリストから発表がありました。パネリスト及びコーディネーターは次のとおりです。
パネリスト   : 玉 井 三千雄 氏(北陸会)  
  : 中 野 雄 介 氏(京滋会)
  : 中 尾 志 都 氏(近畿会)
  : 仲 尾 彰 記 氏(兵庫会)
コーディネーター : 稲 越 千 束 氏(東海会)
  最初にコーディネーターの稲越氏から、公認会計士の独占業務である監査の現場の実情そのものに焦点を当て、監査現場で今、何が起こっているのか、それはどこに問題があり将来どのように改善されていくべきかをディスカッションしてもらいたいとの説明がありました。
  異なった経歴と異なった現在の職場環境の中で活躍されている4名のパネリストが、自己紹介をすると共に、監査現場における問題意識、その問題の根源はどこにあるかについて述べられました。主な内容は以下のとおりであります。
 
現在の品質管理は細部までに入りすぎており、文書化に忙殺されている
会社のリスクの有無に応じて品質管理のレベル感を分けることも考えられるのでは
過度の品質管理や拡大される開示制度が問題であり、これに対するキャパシティが足りない
監査以外の分野でも専門性を打ち出しても良いと考える
現場でのコミュニケーションが減っており、時間が無いので深い議論が出来ない
現在はアプローチ、手続書がそろっており、きれいな監査調書を作成することが目的となっている所がある
事務所においても、監査チームで単独に判断して前に進めない状況にある
本部組織による中央集権化が強くなり、品質管理や審理がより厳しい状況になってスピード感が無くなっている
パートナーも間接業務が増えており、現場に行く時間が減っている
 
  このように問題意識は、いろいろあるので上記の中からテーマを絞ってディスカッションを進める旨の説明がコーディネーターからありました。
 
  最初に、協会の品質管理レビューやCPAAOBの検査等への対応の作業が監査現場ではどのようなプレッシャーになっているか、また大手監査法人においては、専門部署の意見・法人内におけるレビューもあり重層的な品質管理となっているがこの点についてどのように考えているかが掲げられました。これらについては、下記の意見がありました。
必要な手続を必要な時期までに実施しなければならないプレッシャー
文書化するにしても、簡略化されるべき所もあると思われるが、画一的に文書化が求められている
指摘を受けないためにレビューツールチェックリストを使い、レビュー対策が目的になっているように思われる
監査チームだけの判断だけでは終わらず、迅速化に対応できないときがあり、重層的で疲弊することがある
一方でスタッフは、入所時からレビュー対応を経験しているので当然のように思っているように思える
主査クラスが一番、協会レビューに対してプレッシャーを受け、保守的に過度な監査手続を実施する傾向があり、不要と判断出来ない状況が悪循環となっている
 
  次に、パートナーの監査現場への関わり方について、以下の意見がありました。
筆頭パートナーは現場へなかなか行けない状況で、部下に負担がかかる
事務所の雑務が多すぎて、現場に行く時間が取りにくい
監査リスクも高くなっており、経営者の意思を確認してもらうためにもパートナーに現場にもっと来てもらいたい
内部統制報告制度においては、会社も監査法人も現場だけではどうにもならないときがあるので、経営者とパートナーで普段からコミュニケーションをしてもらいたい
 
  最期に、パネリストに次世代を担う若手会計士に対する要望が求められました。主な内容は次のとおりです。
会計士の品位・品格を見失わないでほしい
杓子定規にとらわれず、広い視野に立って会社を指導してもらいたい
専門性が進んでいく中で、第一に周囲から信頼され、必要とされる会計士になってもらいたい
失敗をおそれずにチャレンジしてもらいたい
公認会計士として重要な役割を担っているので、サラリーマンでなく士業として意識してもらいたい
 

  パネリストによるディスカッションのあと、特別ゲストとして同席された増田日本公認会計士協会会長、佐伯監査現場再生特別委員長に対して、意見・感想が求められました。増田会長からは、監査現場での苦労をどのように改善していくか協会執行部で検討する、制度的枠組みの変更や監査時間の増大等の要望を出していく、品質管理も過度になった部分もあるので改善していくとの回答がありました。
  今回は、監査現場にいる公認会計士にとって、切実な議論だったとおもいます。

(報告:古野康和)