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 60周年記念特別講演会開催レポート

 会報部員 古野 康和

 
 日本公認会計士協会近畿会の主催で、慶應義塾大学教授・元総務大臣 竹中平蔵氏を招いて公認会計士制度60周年記念特別講演会を開催した。テーマは「最近の経済情勢における企業経営と期待される経済政策・構造改革〜関西経済活性化のために政治と企業がやるべきことは?〜」である。

 今回の講演会は多数の申し込みがあり、定員に達したため事前に申し込み受付が終了するといった状況であった。過去にこのような状況があったであろうか。講演会当日は785名の参加者があったとのことであり、大阪市中央公会堂の受付でも長蛇の列ができていた。主な参加者は、監査役協会から184名、企業団体から294名、日経広告から申し込まれた方が125名、日本公認会計士協会会員が158名といった具合で、竹中氏に対する人気の高さが感じられた。また、参加者の特徴としては、ほとんどが50歳以上と思われる男性であった。
 小山謙司近畿会副会長の司会のもとで、講演会は始まった。最初に、中務裕之近畿会会長が、「最新の会計基準の動向と拡がる公認会計士の役割」のテーマのもとで、激動の10年間、上場企業における会計の最近の動向、非営利法人の会計について触れられ、30分ほどで開会挨拶を行った。
  開会挨拶が終わり、本日の主人公である竹中氏が登壇されると、われんばかりの拍手でもって迎えられた。講演会は、首相が辞任表明をした直後であったことから、近々行われる自民党総裁選の話題から入り本題に移った。講演は政府の役割、民間企業の役割を中心に行われた。政府の役割としては、改革をいかに実現し、改革のスピードを加速することの必要性について話された。また、民間企業の役割としては、成長率が高めるために見えやすい、わかりやすい波及効果が見えるアジェンダを探す必要があると話された上で、世界遺産を活用するなどして関西空港を中心にした経済政策の考え、道州制の導入、大阪大学のあり方について触れられた。なお、諸般の事情から詳細な講演内容については掲載することが難しいので、その点はご了解頂きたい。話の内容は、非常に明快でわかりやすく、聞く者を飽きさせないものであった。私も最前列で久々に聞き入ってしまった。最後に、福沢諭吉著「学問のすすめ」から「一個人の独立なくして、一国の独立はない」の旨の言葉を引き合いに出し締めくくられた。1時間ほど竹中氏の講演がなされた後で質疑応答があった。
 以下、質疑応答の内容を掲載する。
  道州制のメリットについて質問され、地方分権をしっかり根付かせるために必要であり、市町村を自立できるようにさせる必要があると回答された。また、県は行政単位では小さすぎるし、県に意志決定権を移すことが必要であると回答された。道州制の導入は、抵抗が大きいかもしれないが、広域連合にすることによりビジネスチャンスを拡大することが大事との話であった。また道州制の導入における公認会計士に対する役割については、国から大きな権限が与えられることになるため、住民がチェックする必要がでてくる。そして、その業務は公認会計士が担うことになると思われるので、役割が重要になってくるとのことである。
  公認会計士は、金融庁の監督下に置かれており、役所が好き勝手にやっているように思われる。おかげで公認会計士も監督下でピリピリしている。規制の強化について、また日本公認会計士協会を自主規制機関にするにはどうしたらよいかの質問に対しては、公認会計士は、国家資格であるため、介入が強くなっている部分があるが、もっと国際的な力を高めて、国際的連携を行い、国に公認会計士の存在をもっと認めさせる必要があり、国からの利害からも独立する必要があるのではないかと回答された。
 

  最近、会計上の判断が企業倒産につながる事例が相次いでいるが、会計上の判断にまで踏み込んでくるのは、行き過ぎではないかとの質問に対しては、何故そのようなルールを採用せざるを得ないのかを考える必要がある、会計情報も、立場が変われば欲しい情報は異なってくる。私たち自身が実態をみて、ルールメイクそのものに参加する必要があるものと思われると回答された。 会計基準の国際化・国際基準の統合化に対する質問については、日本で作ったルールに海外の基準を合わせることも国際化であり、そのためには、国益の主張を海外において発揮できる人間を作っていく必要があると回答された。さらに、一人でも世界は変えられるので、一人ひとりが力をつけていく必要があると付け加えられた。
 質疑応答も終わり、最後は小川泰彦近畿会副会長の挨拶でもって、盛況の内に60周年記念特別講演会は終了した。

竹中平蔵略歴
慶應義塾大学教授 
グローバルセキュリティ研究所所長
生年月日:昭和26年3月3日(56歳)
出身地 :和歌山県和歌山市
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1973年  一橋大学経済学部卒業
日本開発銀行入行 1977年 同設備投資研究所
1981年 ハーバード大学、ペンシルバニア大学 客員研究員
1982年 大蔵省財政金融研究室 主任研究官(〜87年6月)
1987年  大阪大学経済学部 助教授(〜89年1月)
1989年 ハーバード大学 客員准教授
国際経済研究所(Institute of International Economics)
客員フェロー
1990年 慶應義塾大学総合政策学部 助教授
1996年 同 教授
1998年 「経済戦略会議」(小渕首相諮問会議)メンバー
2000年 「IT戦略会議」(森首相諮問機関)メンバー
2001年 「IT戦略本部」メンバー
経済財政政策担当大臣
2002年 金融担当大臣・経済財政政策担当大臣
2004年 経済財政政策・郵政民営化担当大臣
2005年 総務大臣・郵政民営化担当大臣を歴任
2006年 慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長(現職)
社団法人日本経済研究センター特別顧問(現職)
アカデミーヒルズ理事長(現職)
2007年 株式会社パソナ特別顧問・アドバイザリーボード(現職)
(経済学博士)