取材

第42回定期総会報告及び会員の声レポート

 近畿会副会長 小山謙司

 

【はじめに】

 去る平成20年7月9日(水)梅雨空の蒸し暑い最中、帝国ホテル(東京都千代田区内幸町)本館3階の「富士の間」にて日本公認会計士協会の第42回定期総会が開催されました。その内容をレポートしたいと思います。なお、文中意見に関する記載は私見であり、また私の聞き漏れ、聞き間違い等により正確性に欠ける記述があるかもしれませんが、素人記者ということでご容赦下さい。 なお、公式の総会報告については後日JICPAニュースレターにより行われますので、そちらをご参照頂きますと幸甚であります。 総会の式次第は次の通りです。
 
 【公認会計士制度60周年記念事業プロモーションビデオ上映】
 「激動の10年から信頼の未来へ」をテーマとした60周年記念事業プロモーションビデオが上映された後、大村常務理事(勝野、山田常務理事)の司会のもと第42回定期総会が、午後1時より開催されました。
 
【ご来賓入場】
 まずご来賓である渡辺喜美金融担当大臣、内藤純一金融庁総務企画局長、岳野万里夫金融庁総務企画局審議官、三井秀範金融庁総務企画局企業開示課長、斉藤惇株式会社東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長の入場がありました。
 
 【開会の辞、会長挨拶】
 澤田眞史副会長の「開会の辞」に引き続き、午後1時8分頃から増田宏一会長の挨拶が始まりました。会長の挨拶は以下の通りです。
 まず、来賓の方のご臨席への御礼に始まり、我国の公認会計士制度が当年で60周年を迎え、その記念式典を昨日(7月8日)「激動の10年から信頼の未来へ〜会計監査を日本の力に」の標語の下に開催したことが報告されました。こうした激動の渦中において、会長就任の所信として、大型の粉飾決算事案が頻発した結果、公認会計士・監査法人に対する批判が高まる一方で、会計監査業務に独占的権利が付与されている職業専門家である公認会計士・監査法人は「資本市場の番人」としてその重要な役割を果たすことが求められ、加えて複雑化、高度化、国際化が進む社会経済構造にあって、公認会計士の知識、経験、技能が必要とされる分野は拡大し、多様化していることを深く認識した上で協会会務を運営していくことを表明されました。
 こうした視点の下で、まずは昨年6月に改正され本年4月から施行された公認会計士法あるいは金融商品取引法の改正による、内部統制報告制度、四半期報告制度などの直面する喫緊の課題への対応に取り組んできました。それとともに執行部がその任期中の3年間の目標として、次のような5つの大きな柱からなる「3カ年活動計画」を取りまとめ、それを基本として各種の事業活動を展開してきました。
@ 自主規制の着実な実行とそれを「見える形」で社会にアピールしていくこと。
A  公認会計士監査制度を巡る制度的枠組みの見直しのための意見発信と監査環境の整備・改革に向けた活動の推進。
B  多様多才な人材の育成・確保。
C  公認会計士に対する社会のニーズが多様化する中での会員支援。
D 協会組織ガバナンス改革のさらなる推進。
 信頼の未来に向け公認会計士の倍頼を回復し、会計監査が真に日本経済の力となるよ うより一層積極的に行動し、社会から期待される役割を担っていく所存です。 最後に会員各位のさらなる支援を要請して締めくくられました。会場から大きな拍手が起こりました。
 
【来案挨拶】
 続いてご来賓の方のご挨拶を頂戴しました。午後1時17分頃であります。 まず演壇に立たれた渡辺喜美金融担当大臣は、ご尊父である渡辺大蔵大臣が就任期間である昭和55年から昭和57年までの2年7ケ月の間に、大臣として初めて日本公認会計士協会の定期総会に出席し、それ以来関係大臣が出席しているとのお話しがありました。 続いて「現場の声」を金融行政に反映させていこうと考えているが内部統制に関しては現場での不安があり、円滑な内部統制の実施のため、「11の誤解」「Q&A(追加)」を公表し、「相談紹介窓口」を設置しているとのお話しでした。また、国際会計基準への対応が必要であり、コンバージェンスに向けて支援していきたいというコメントもありました。さらに、金融専門人材の育成が重要であり、金融行政、証券取引所等での活躍を期待するところであるとのお話しをされ、最後に、60周年を迎えた節目の年に日本公認会計士協会並びに会員各位がこの10年を振り返り、この教訓を忘れることなく次の時代へと大いに攻めの姿勢で飛躍されんことを祈念して締めくくられました。
 次に午後1時27分頃から斉藤惇株式会社東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長からご挨拶をいただきました。株主総会集中日が分散化されるなど株主との対話が進められている一方で、株式の持合いや株主の権利を大幅に希釈化する第三者割当増資の実施など、コーポレートガバナンスに対する経営者の建設的かつ真筆な取り組みが不足している思われる事象が相変わらず見られるということは非常に残念であります。東京証券取引所としては市場メカニズムに基づいてコーポレートガバナンスの機能を高めることが最重要課題であり、そのためには公認会計士に今後のますますの活躍を期待したいとのお話しでありました。
 ご来賓の方はご多忙のため午後1時34分頃にはご退席されました。
 
 【黙祷、議長・副議長の任命】
 続いて友永道子副会長により物故会員・準会員148名への黙祷が出席者全点によってささげられました。その後、増田会長から会則第76条第1項により議長・副議長を任命したい旨の提案がありました。一法師信武会員を議長に、遠藤忠宏会貞、池田和禰会員をそれぞれ副議長に任命することが拍手をもって承認されました。
 その後議長、副議長3名の方が演壇に上がられ就任の挨拶をされました。
 
【議事】
 午後1時40分頃、議事に入りました。
 本日の出席者数は現在集計中であり、「報告事項」の後に集計結果を報告することとされました。また、議決権の総数は21,856個であり、委任状による出席者数は議決権を有する会員及び準会員の5分の1以上であるため、開会に必要な定足数を充足している旨が報告されました。さらに、会則第82条に基づき東京会会員の鈴木豊会貞、飯田輝夫会員の2名を議事録署名人としたい旨の提案があり、拍手をもって承認されました。
 
【報告事項】
 報告予定者である木下専務理事がご来賓の方のお見送りをしていた関係で、議事が始まらないというハプニングがありましたが、数分遅れの後、午後1時44分頃、会則第75条第2項に従い、木下専務理事より報告事項として「第42事業年度事業及び会務報告の件」の報告が定期総会議案書に従って行われました。項目を示すと以下の通りです。
 
T.事業に関する事項
1. 監査基盤の整備及び監査実務の充実に向けた対応
2. 上場会社監査事務所登録制度の発足
3. 改正公認会計士法及び関係政令・内閣府例の施行への対応
4. 中小事務所等との連携強化及び業務支援への対応
5. 国際会計・監査基準への統合化及び監査規制の国際化問題への対応
6. 公的分野の会計制度・開示制度の充実に向けた対応
7. 研修制度の整備・充実に向けた対応
 
U.会務に関する事項
1.  組織ガバナンス改革を踏まえた執行体制の構築
2. 3か年活動計画の策定
3. 協会組織ガバナンス改革の推進
4. CAPA大阪大会の開催
5. 公認会計士制度60周年記念事業の実施に向けた準備
 なお、最後に、東京会の川島正夫会貞より将来わが国公認会計士業界の発展、進歩に貢献できる国際的職業会計人を養成することを目的に、既に合計で1億円5千万円のご寄付を頂いていましたが、さらに本年5月に5千万円のご寄付を頂いたことが報告されました。
 
続いて午後2時04分頃より質疑に入りました。
  まず、事前に掟出された書面による質問、意見に対して木下専務理事より説明、回答が行われました。 記載ぶりに齟齬があるかもしれないので、以下では質問事項等の概要のみを示したいと思います。回答等についてはJICPAニュースレターをご参照下さい。
 
Q1. 会長への報酬支払いが行われる中、会長としてどの程度会務執行を進められたのか。
Q2. 専務理事の職務分掌に関して、会長の職務との区分けはどのようになっているのか。
 Q3. CPEや品質管理レビューの成果について説明してもらいたい。
Q4. 品質管理レビュアーの品質管理はどのように行われているのか。
Q5. 派遣社員より正規職員を採用すべきではないか。
 提出された書面による質問・意見及びそれらに対する回答・説明は午後2時14分頃終了しました。その後、これら以外の質問・意見陳述が会場にて行われました。
会長選挙の信任は書面で行われているはずなので、投票数を教えてもらいたい。
CPA試験合格者の増加について協会は充分対応できるのか。
不正会計・粉飾決算と監査法人に関する協会の対応をお尋ねしたい。
インサイダー事案に関して、原因を追求して会員にフィードバックすべきではないか。
住友金属工業の使途秘匿金16億円が報じられているが、協会はどのように対応しているのか。
若手会計士の労務環境が悪化しているが品質管理強化が原因になっているのではないか。
協会は不正会計・粉飾に戦う姿勢をもっとハツキリと示して欲しい。
 増田会長、澤田副会長、黒田副会長により回答、説明がありました。
 質疑応答は午後2時42分頃に終了しました。
  ここで出席者数についての報告が議長団より行われました。議決権の総数は21,856個、そのうち、本人出席796名、委任状による出席6,338名の合計7,134名でありました。

 

 【審議事項】
午後2時44分頃審議事項に入りました。
 第1号議案
第42事業年度収支計算書及び(一般会計・実務補習所特別会計及び第17回アジア・太平洋会計士会議大阪大会特別会計)承認の件
 
 蔵口常務理事により第1号議案の説明があり、午後2時57分頃終了しました。その後、酒井監事より、会計監査人から適正意見表明があり、さらに監事意見として、会務の執行は誠実に行われており収支計算書等は適正に作成されている旨の監査報告がありました。
 
 続いて蔵口常務理事より事前に提出された書面に よる質問、意見に対する回答、説明が行われました。 ここでは質問事項等のみを示しています。
Ql. 役員報酬の内訳を示して欲しい。また、会長、専務理事の報酬に差がある理由について説明して欲しい。
Q2. CPE関係の収支について説明されたい。
Q3. 出版局の収支の状況について説明されたい。
Q4. 会計監査人からの指摘事項はなかったのか。
Q5. 監事監査の実施結果と本会監事、地域会監事及び会計監査人の役割分担について説明して欲しい。
 午後3時10分頃書面による質問事項に対する回答が終了しました。 その後、これら以外の質問・意見陳述等が会場より行われました。以下質問等のみを記しました。
役員報酬は決算書において別掲すべきではないか。
品質管理レビューの人件費はどうなっているのか。出向者の取扱いを説明して欲しい。
IT投資の効果について説明して欲しい。
会員厚生自家保険引当金の計上は妥当かどうか。
  増田会長、木下専務理事、蔵口常務理事より説明があり、その後採決に入りました。その結果は次の通りです。
 
 第1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,315個、反対は23個でありました。よって、原案通り可決されました。
 ここで議長より休憩の動議があり、了承されました。
 
 午後3時20分頃休憩に入り、午後3時30分再開予定となりました。休憩後午後3時30分頃再開しました。下記2つの議案を一括上程することが議長より提案され、拍手をもって了承されました。
第2−1号議案
継続的専門研修制度の見直しに伴う会則の一部変更案承認の件
第2−2号議案
継続的専門研修制度の見直しに伴う継続的専門研修制度に関する規則の一部変更案承認の件
 

 勝野常務理事より議案の説明が行われました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでしたので、採決に入りました。
  第2−1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,302個、反対は36個でありました。よって、原案通り可決されました。
  第2−2号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,303個、反対は35個でありました。よって、原案通り可決されました。

  午後3時35分頃 下記2つの議案を一括上程することが議長より提案され、拍手により了承されました。

 
第3−1号議案
加算業務会費の廃止に係る会則の一部変更案承認の件
第3−2号議案
加算業務会費の廃止に係る会費規則の一部変更案承認の件
 
 山田常務理事より議案の説明がありました。書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでしたので、採決に入りました。
  第3−1号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,309個、反対は29個でありました。よって、原案通り可決されました。
 第3−2号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,308個、反対は30個でありました。よって、原案通り可決されました。
 
 午後3時53分頃 下記第4号・議案の審議に入りました。 大村常務理事より説明がありました。
 
第4号議案
法定監査関係書類等提出規則の一部変更案承認の件
 
   書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでした。採決に入り、第4号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,310個、反対は28個でありました。よって、原案通り可決されました。

 午後3時56分頃 下記2つの議案を一括上程することが議長より提案され拍手により了承されました。
 
第5号議案
第43事業年度事業計画案承認の件
第6号議案
第43事業年度収支予算書案(一般会計・実務補習所特別会計)承認の件
 
 午後3時57分頃より木下専務理事より第5号議案の説明がありました。

 基本方針及び下記6つの重点施策が説明されました。

1.  監査への信頼回復のための自主規制を着実に実行し、見える形で社会にアピールするための施策
2. 激変する国際的動向を踏まえた、制度的枠組みの見直しのための提言と監査環境の整備・改革に向けた施策
3.  会計プロフェッションとして多様、多才な人材を確保し育成するための施策
4. 業務の多様化等の社会的ニーズに適切に対応していくための会員支援の検討
5. 協会組織・機構改革の着実な実施とさらなる改革の推進
6. 60周年記念事業の実施
 
続いて午後4時4分頃より蔵口常務理事により第6号議案の説明がありました。 午後4時11分頃より議案について蔵口常務理事により事前質問事項等に対する回答が行われました。以下では質問事項等のみを記しています。
Q1. 会計監査人の報酬は前年度に比較して増加しているのか。増加の場合その理由を説明して欲しい。
Q2. その他の国際活動費についてその具体的内容を説明して欲しい。
 
 その後、これら以外に会場より下記のような質問・意見陳述等が行われ、増田会長、黒田副会長、蔵口常務理事が回答されました。
政治連盟の業務との関連において総務本部の費用負担は明確に区分されているのか。
その他の国際活動費については内容不明なので議案書で明示して欲しい。 
預金32億円の使途について説明して欲しい。
CPA試験合格者の増加に対応して安定的な受け入れについて妙案はあるのか。
  午後4時26分頃採決に入りました。
  第5号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,316個、反対は22個でありました。よって、原案通り可決されました。
 
 第6号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,310個、反対は28個でありました。よって、原案通り可決されました。
 
 午後4時28分頃 酒井監事より第7号議案 会計監査人選任の件の説明がありました。
 会則第99条第3項により「優成監査法人」を継続して会計監査人として選任したい旨の提案があり、公益法人会計基準に精通していること、大規模公益法人の監査実績があり、大規模法人を監査できる一定規模以上の監査業務の実施体制を維持していること、 協会の品質管理レビューにおいても問題点の指摘がないこと等が判断基準であるとの説明がありました。
 書面による事前質問、意見はなく、会場からの質問等もありませんでしたので、午後4時31分頃採決に入りました。
  第7号議案について、出席者の拍手により賛成多数と認められました。また、委任状による賛成は6,298個、反対は40個でありました。よって、原案通り可決されました。
 議事がすべて終了しましたので、ここで議長団が退場されました。午後4時32分頃でありました。
 
 
 【協会学術賞授与】
 午後4時34分頃より学術賞審査委貞会の田中恒夫委員長から、「学術賞」として、藤井秀樹氏の「制度変化の会計学」、井上康一氏・伸谷栄一郎氏の「租税条約と国内税法の交錯」、山口隆英氏の「多国籍企業の組織能力」が選出された旨が報告され、増田会長より表彰状及び賞品が贈呈されました。
 
 【会員表彰】
 引き続き会員表彰が行われました。表彰細則第2条第1項第一号(100歳以上かつ公認会計士登録の期間30年以上の会員)に基づき東京会の石井暉治氏が、また、表彰細則第2条第1項第二号から第五号に基づく会月表彰贈呈者318名を代表して、東京会の枚尾正和会員が増田会長より表彰状を授与されました。
 
 【感謝状贈呈】
 5月に5千万円のご寄付を頂いた東京会の川島正夫会員に増田会長から感謝状が贈呈されました。同会貞からご挨拶がありました。
 
 【閉会の辞】
 尾内副会長より閉会の辞があり、総会が終了しました。午後5時旧分頃でありました。
 
 【会員の声】
 午後5時17分噴から加藤理事、酒井理事の司会のもとに「会員の声」が始まりました。
 CPA試験合格者増加に対応して産業界での具体的な求人等についてどの程度の見通しがあるのかを把握しているのか、倫理規則は英文の直訳なので意味不明ではないか、協会活動はボランティアでは限界があるのではないか、総会の運営について見直しが必要ではないか(特定の人に質問機会が偏りすぎではないか)、総会における質問に対する回答の姿勢 は現在のままでよいと思われる、「ドラマ監査法人」は現実とは違いすぎるので誤解を与えるのではないか、国際会計基準へのコンパージェーンスに対する協会の見通し、監査役として会計監査人の監査結果を相当と認めるとする制度は現実的には判断できないので無理があるのではないか、といった質問・意見等があり、増田会長、黒田副会長、小宮山副会長、関根常務理事、山田常務理事が回答されました。
 午後5時評分頃にすべての行事予定が終了しました。
 
 【最後に】
 本部総会は衛星放送にて各地域会に放映されていますが、やはり実際に出席するほどには臨場感を味わうことは難しいと思います。総会は5時間近くの長丁場でしたが会務活動状況の理解を深めることができ、有意義な時を過ごすことができたと思います。近畿会の会員の皆様も機会があれば是非ご出席されることをお勧め致します。