新士業(?!)事業再生士

 

日本事業再生士協会理事主任学術委員 
関西大学大学院会計研究科教授 
柴 健次

 公認会計士の先生方のためのニュース誌に機会を得て事業再生士という新しい資格の紹介をすることになりました。 事業再生に携わる人々のネットワークとして、2003年に日本ターンアラウンド・マネジメント協会(略称、日本TMA協会)が、米国TMAの支部として設立され、後に独立し米国TMA協会など各国の協会と連携して活動しております。
 その設立当初より、事業再生の専門家の信頼性を高めるため、「事業再生士」という資格の制度を設け、試験を開始することが予定されていました。この資格制度をスタートさせるために日本事業再生士協会(略称、日本CTP協会)が設立され、2006年には初の試験が実施されました。
 日本CTP協会は二種類の資格試験を実施しています。一つはCTP(認定事業再生士)試験、もう一つはATP(事業再生士補)試験です。CTP試験合格者は日本CTP協会が定める倫理規定遵守のサインをし、会員となることによって資格を取得することができます。一方、ATP試験合格者は準会員となることによって資格を取得することができます。
 CTP試験は、事業再生に関して国際的に通用する高度な知識と経験を有することを証明する資格者であることを認定するために行われます。試験は、「経営」、「法律」及び「会計・財務」の三科目で、すべて事例に基づく論述問題の試験です。試験時間は各科目とも二時間です。また、一科目ごとの受験も可能であり、科目ごとに合格を認めます。全科目合格者は三年以上の事業再生に関する実務経験と五件以上の事業再生実績の審査を受け、これに合格しなければなりません。
 一方、ATP試験は、事業再生を行うための基本的な調査、分析及び企画・提案のための諸知識を有しており、事業再生士を補助できる能力を有することを証明する資格者であることを認定するために行われます。この試験を受験するためには、日本CTP協会が認定する教育機関が実施する研修を受講し、履修証明書を取得していなければなりません。

 試験は、「経営」、「法律」及び「会計・財務」の三科目で、すべて択一式問題(各科目20問)の試験です。試験時間は各科目とも一時間です。また、一科目ごとの受験も可能であり、科目ごとに合格を認めます。なお、MBA取得者は経営科目が免除され、公認会計士・税理士は会計・財務科目が免除され、弁護士は法律科目が免除されます。
 日本TMA協会及び日本CTP協会の理事長の許斐義信氏(慶応義塾大学大学院経営管理研究科教授)は『ターンアラウンドマネジャー』誌本年1月号の対談においてCTP1000名をめざすと期待を表明しておられます。CTP試験には厳しい資格審査があるので誰でも受験できるというわけではありません(※1)。
 その中、昨年4月の第一回試験では、78名が受験し、科目別では経営が40名、法律が55名、会計・財務が52名合格し、全科目合格者が31名となりました。現在、このうち30名が日本におけるCTPなのです(※2)。なお、本年は5月20日に実施が予定されています。
 事業再生は経営、法律、会計・財務の分野に関連する多くの困難な課題を抱えていますが、年々、事業再生に対する需要が増大していることとの対比でいうと事業再生の専門家の数が絶対的に不足しています。
 一方、事業再生ビジネスが盛んになる中で、事業再生に携わる者の専門家としての能力や水準について相当のばらつきもでてくるため、専門家に対する資格付与が望まれているところでした。こうした中でのCTP資格制度のスタートでありますので、今後、大きく発展していくものと期待されます。
 詳しくは、日本CTP協会のホームページをご覧ください。また事務局へお問い合わせください(※3)。
 
 
※1 誰でも受験できますが、資格審査があるので、試験に合格しただけでは誰でも取得できるとは限りません。
※2 全科目合格者のうち、資格審査の申請のない1名を除いて、最終的には30名のCTPが誕生しました。
※3 お問合せ先は次のとおりです。
   有限責任中間法人日本事業再生士協会
     TEL: 03-5269-5054
     ホームページ: http://www.actp.jp
     E-mail:info@actp.jp