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第8回各士業女性合同研修会「会社法」研修に参加して |
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開催日:平成18年11月25日(土) この会は女性会計士委員会が、税理士・不動産鑑定士・司法書士の各士業女性会と合同で毎年行っている研修会の第8回目の開催となります。 今回の研修会では、平成18年5月に施行された「会社法」をメインテーマとし、法制審議会の会社法部会委員を務められた京都大学の森本 滋教授による基調講演と、今回特別参加となった弁護士をはじめ各士業によるパネルディスカッションが行われました。 森本教授による基調講演では、法制審議会の会社法部会委員という「会社法」の作成に携われたご経験から、会社法改正の基本方針や一般的特徴について、教科書的な観点だけでなく、法令の不備な点や会社法を読み解く上での留意点について解説されていたのがとても印象的でした。 例えば、今まで商法第二編の「会社」(合名・合資・株式会社)、有限会社法、商法特例法(いわゆる大会社、小会社についての特例)等でそれぞれ定められていたものを、一つの法典としてまとめ、分かりやすく再編成したという基本方針のひとつを採り上げられていました。これにより会社の数(及び法的圧力の強さ?)から圧倒的多数となる有限会社型(中小の株式会社を含む)を「会社法」のスタンダードとして設定しているために、上場企業などの会社については適合しない内容が含まれているため、「会社法」以外の自主規制機関(東証等)による機能強化の必要性が高まっていること、開示の充実や内部統制システム構築について専門家によるチェックが更に必要とされていることを取り上げられました。 また、規制緩和を積極的に取り入れ、事前規制を緩和したことにより、債権者保護の問題(最低資本金制度の撤廃、検査役制度の縮減等)や株主保護の問題(種類株式の多様化による株主平等原則の後退、合併対価の自由化等)が生じかねないことや、事後規制についても経済的効率性を強調しているため規制緩和副作用に対する対応が不十分となっていることを取り上げられていました。 他にも、旧商法と比べて詳細な規程内容になっているために、法令の解釈の余地が少なくなり、かえって社会環境等の変化に対応した弾力的な適用がしにくくなっていることや、法令の準用を原則なくしているとの基本方針となっているにもかかわらず実際には一部準用条文が残っているため、準用はないと思ってると痛い目にあうなどといったことを、会社法部会での裏話等を交えながら、どちらかというとやや批判的なコメントで、お堅いテーマにもかかわらず笑いを誘う和やかな基調講演となりました。ただ、批判的なコメント=今後「会社法」を読み解き使いこなす上での、注意すべきポイントとして捕らえることで、一段高いところから「会社法」を眺められる視点を持てたような気がしました。 また、基調講演の後、各士業の代表者によるパネルディスカッションが行われ、弁護士の苗村博子氏が「会社法」で新たに定められた「内部統制システム」の構築が大会社だけに関係するのではなく、何か事件となって取締役等の責任が問われたときに、内部統制の構築が適切かどうかが判決の基準となっていることを、会社法施行以前の大和銀行株主代表訴訟やダスキン株主代表訴訟の判例をもとに解説されました。 次に、公認会計士の伊加井真弓氏が「新会社法〜内部統制をテーマに」として、内部統制の概念をいわゆる「COSOキューブ」をベースに解説され、その中で「会社法」の対象とする内部統制システムの構築(広く浅く)、「金融商品取引法」の対象とする財務報告にかかる内部統制(狭く深く)の違い等について図解を交えて、「会社法」における内部統制の考え方について会計士以外の方にも理解しやすいように解説されました。 また、司法書士の内藤卓氏は、会社法施行による登記実務で機関設計や定款の内容等によっては、施行日をもって自動的に役員が退任することになり登記上退任及び就任等の手続が必要となるが、一般にあまり周知されていないので注意が必要であるなどのとても具体的なポイントを解説され、不動産鑑定士の若崎周氏からは、合併対価の自由化や簡易合併によるM&Aの動向と不動産鑑定士の関わり方について、税理士の舞谷佳澄氏は、18年度税制改正の「特殊支配同属会社の役員給与の損金不参入」制度の解説で、1円会社の設立などの規制緩和が図られるようになった一方で、中小の同族会社にとって非常に大きな負担となりかねない税制改正がとられていることがとりあげられました。 この後のディスカッションでは、「この大きく様変わりした「会社法」を各士業の専門家が理解し使いこなすコツは?」とのコーディネーターの問いに、森本教授からは、基本的にはこれまでの時代の流れをベースにしたものでありあまり枝葉末節にとらわれないこと、専門家としての常識と熟練をベースとして、それぞれの顧客(クライアント)の規模に応じた内容に特化していくことが必要であるとのコメントをされていました。 私などは、今まで「会社法」のうち仕事に関係するような部分だけをかいつまんで見ていただけでしたが、この研修会で「会社法」全体を見据えた上での問題点(留意点)の捕らえ方や、各士業の様々な専門的視点に触れる(理解までには程遠いですが)ことができた気がしました。 |
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