本の紹介

「専門職的実施のフレームワーク」日本内部監査協会発行

 表記の書籍は、アメリカに本部を持ち内部監査の指導的役割を持つ機関である、内部監査人協会(The Institute of Internal Auditors:IIA)が策定・公表した「専門職的実施のフレームワーク(The Professional Practices Framework:PPF)」を日本内部監査協会(IIA-Japan)が翻訳したものである。

 IIA及びIIA-Jは、内部監査専門職としての啓発活動、内部監査の実務基準の策定、公認内部監査人(Certified Internal Auditor-CIA)の資格認定等を行い、内部監査に関する知識の普及・啓発を行っている。
 
 PPFは、3つのガイダンスのカテゴリー、・「倫理綱要」および「内部監査の専門職的実施の国際基準」、・基準の解説的役割を持つ「実践要綱」、・調査研究資料やセミナーなどの「その他のガイダンス」から構成され、当書籍にはその他のガイダンス以外が含まれている。
 PPFは従来仮約版が同協会より発行されていたが、2004年度の基準改訂、同時期及びその後の実践要綱の追加を受けて今回改めて翻訳、発行となった。
 
 現在、企業は会社法や金融商品取引法を受けて内部統制の整備・強化に動いており、その中で内部監査の質の向上は最大の課題と言ってもよい。しかし内部監査について体系的に整理された情報は意外と少ない。その中でPPFは最も一般に認められた基準と言うだけでなく、内部監査の独立性要件、能力要件、計画から実施・報告までの一連の流れ、更には内部監査の品質評価まで網羅されており、組織が内部監査体制を整備していく上での指針として有用である。
 
 翻って考えると、内部監査の質の評価を行いそれに依拠して外部監査の計画を立案しなければならない公認会計士にとっても有用な情報となる。公認会計士は監査については専門家であり、この本に書かれている大半の内容は会計士が使用する監査マニュアル等に書かれている内容と共通する。しかし内部監査に焦点を絞って考えたことは無い人が多いのではないだろうか。例えば内部監査結果の最良の報告先はどのように設定すればよいのだろうか?(社長、という答えであれば△です)
 
 恐らく、今後企業は当基準等を参考に内部監査体制を整えていく。その中で会計士が内部監査人と対等以上にやり取りするためには、まずその内容を把握することが必要である。内部統制監査は会計士に会計知識だけでない多くの周辺知識を要求する。

(会報部 南 里美)