特集

公認会計士からみたアカウンティングスクール
アカウンティングスクールを巡る話題

上田 耕治

 
 お世話になった監査法人を退職した後、2005(平成17)年4月より、関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科会計専門職専攻、いわゆる関西学院大学アカウンティングスクール(会計大学院)の実務家教員をしております。
 本誌では、既に本学の実務家教員として重責を担っておられる敬愛する大先輩のお話しが掲載されておりますので、「公認会計士からみた」のくだりは、4月号、7月号、9月号、10月号をお読み返し頂くとして、本号では、会計大学院の学務の一部に係わっている関係から少々堅苦しいお話をお許し頂ければと考えております。
 
会計大学院の現在と将来
 会計大学院は、標準修業年限2年の少人数教育を前提とした修士課程に相当する大学院で、来春開設予定も含めると、国公(独立行政法人)立、私立、株式会社立と今までになく多様な設立形態となっています。現在15校ありますが、専門職大学院は、通常の大学院よりも多くの教員数や施設を備えていなければならないため、学部に併設される通常の大学院修士・博士課程に比べると経営的には大変「しんどい」学校です。
 また、本年から実施されている公認会計士新試験での免除科目に短答式の企業法が含まれないことから、公認会計士志望者にとっても、進路としやすい選択肢とはいえない実情があります。会計大学院の定員状況を報じるような新聞紙面も目にするところです。
 これらの問題の解決は、会計大学院が今後、どれだけ良い人材を社会へ提供できるか、良い教育を提供できるかにかかっており、私も「知識を詰め込む」「計算技術を磨く」だけでなく「問題解決に導く」「倫理観と常識を確かめる」ような教育が範足るべしと心がけています。そして、夢を自ら描き実現させていくことができるような若者を数多く公認会計士として社会へ送り込むことにより、受験面での仕組みも含めて、社会から会計大学院に相応しい評価が与えられる状況に、我々が、変えていかなければならないと考えています。
 
公認会計士と会計大学院
 会計大学院が専門職大学院として、公認会計士職能と接点をもった教育研究機関である限り、会計大学院には、公認会計士監査に関連する方々のご理解とご支持は欠かせません。学生やそのご父兄だけでなく、金融庁をはじめとする規制機関、財務諸表の作成者および利用者、そして当然、公認会計士各位にお認め頂けるような教育研究機関でなければ、会計大学院は失敗し、公認会計士制度改革も上手く機能しなくなると考えています。また、教育現場での実務教育の必要は強くなっており、公認会計士が大学等の教壇に立つ機会もますます増加するものと思われます。
 このような会計大学院を取り巻く状況をみたとき、公認会計士は、会計大学院にどのように関わっていくべきか、についても会員諸兄姉の関心事であって頂きたいと考えています。
 
監査外業務としての実務家教員
 私自身は、学校と監査と税務を掛け持ちする毎日ですが、もしかしたら、企業や自治体等で会計専門家として活躍する公認会計士をも予定している金融庁(金融審議会)が期待する将来の公認会計士像は、このようなものかもしれないと考えることがあります。監査業務に携わらない(かもしれない)公認会計士の養成も我々の課題となっています。
 実務を教育の現場へ紹介し、受験面も含めて効果的な成果を上げることは、簡単なことではありません。実務家教員が学生たちのアイドルであり続けるためには、自ら知識と経験を磨き続けるしかありません。このとき、近畿会は、身近で頼りになるありがたい存在です。全く自信はありませんが、自戒を込め精進をお誓いして、ひとまずお許しを乞うことにしたいと思います。