近畿会第40回定時総会報告

 
 平成18年6月5日(月)14時からヒルトン大阪において日本公認会計士協会近畿会の第40回定時総会が開催された。例年よりも1時間早い開催である。総会に十分時間を取りたいという佐伯会長の計らいである。
 中央青山監査法人大阪事務所の西野所長より今回の業務停止処分に関して会員の皆様にお話したいとの申し出があり、総会の前に西野所長からの話があった。
 西野所長は「今回の業務停止処分は、私ども中央青山監査法人の信用失墜を招いただけでなく、会計士監査そのものに対する不信を社会に印象づけ、会員の皆様にご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます。現在、中央青山は過去の反省に立ち法人への信頼回復に向け、全員一丸となり片時も休まず法人改革を遂行中ですので暖かく見守って頂きます様お願いいたします。」と述べられ、頭を深々と下げられた。    
 
一、 定時総会
 まず、佐伯会長の開会の挨拶があり、その中で昨今の公認会計士を取り巻く状況について簡単な説明をし、今回の定時総会は質疑応答の時間を多めに取りたいので、出席者もご協力願いたいと述べた。
 その後、物故会員に対して出席者全員がご冥福を祈って黙祷を捧げた。
 引き続き、報告事項である「第40事業年度事業及び会務報告」が佐伯会長からなされた。
 事業報告では、重点施策7項目で、何ができて何ができなかったか、またその実施について何に幾ら使用したかを中心に説明がされた。
 今回の総会では、パワーポイントを使用しての説明で分かりやすいと好評のようであった。 

資料1「第40回事業年度事業及び会務報告」

 
事業報告についての質疑応答及び意見
(質問)
  会務運営の透明性を高めるための施策は、公開役員会の実施だけか?
(回答)
  近畿CPAニュースも会務情報を会員に伝達するための有効な手段であり、会報の作成には多くの予算を割いている。また、関西経済界・自治体等のトップ・インタビュー記事を掲載して会員に有用な情報を提供している。
(意見)
  CAPA大阪大会の成功のために韓国・中国との国際交流をされているが、これらの国は政治が優先される国である。むしろ、合弁企業が成功しているタイ・カンボジア・インド等との国際交流を進めるべきではないか。
 
審議事項
 審議事項は7議案あったが「決算報告書承認」「役員任期の変更」「事業計画案承認」の3議案に質疑が集中した。審議事項の説明についてもパワーポイントを使用して行われ、特に決算報告書や収支予算書の説明の際には、図解を混えてのビジュアル性の高いもので好評であった。

資料2「審議事項」

 
「決算報告書承認」の議案
(質問)
  正味財産が会費収入の約2年分262百万円もの残高があるが適正規模を超えていると思われる。会費の値下げを検討してもよいのではないか?
(回答)
  正味財産には基本財産や固定資産も含まれており、自由になる資金は繰越収支差額で判断することになる。当期末の次期繰越収支差額は151百万円であるが、翌事業年度の収支予算では、会員厚生自家保険引当資産の52百万円積増し等収支差額は△82百万円となり、繰越収支差額は68百万円と減少する見込みである。
(意見)
  正味財産をどこまで残すのか経理部でよく考えてもらいたい。
(質問)
  60周年事業引当資産として15百万円あるが、60周年事業では何を実施するのか?
(回答)
  60周年事業についてはCAPA大阪大会と合わせ検討している。
 
「役員任期の変更」の議案

資料3「役員任期の変更」

(提案説明)
  協会本部の組織ガバナンス改革に伴い、副会長についての地域会会長の位置付けが従来と変わってきており、また本部と近畿会との会務活動の連携を図る観点から、近畿会の役員任期と本部の役員任期との統一を図りたい。
(質問)
  15年ほど前に役員任期が2年に変更されたと記憶している。以後2年任期を続けてきたのは、執行部を充実させるためでは無かったのか?
(回答)
  実際、この数年は役員選挙の立候補者が少ない傾向であり、任期と執行部の充実と関連性が少なくなっていると考えている。それよりも協会本部は意思決定の迅速化を目指しており、近畿会が2年任期のままだと、本部ガバナンスの中核となる正副会長会議や地域会長会議と言った重要な意思決定機関にボードメンバーとして入れない可能性がある。
(意見)
  会社法のように役員の解任を総会で行えるような規定が必要ではないか。また、役員のうち1名を残すような再任規定は考えられないのか。
  いっそ1年任期にすれば良いのではないか。また、役員の重任による継続性の方が問題ではないか。
(意見)
  会員の会務へのエネルギーが減少している。
 
「事業計画案承認」の議案

資料4「事業計画案他」

 基本方針「公認会計士法第1条の「使命」に則り、地域経済の健全な発展に寄与すべく、積極的な会務活動を実施する。」が読み上げられた後、パワーポイントに基づき5つの重点施策と関係する各部・各委員会の実施細目について関連づけた詳細な提案説明があった。
(意見)
  委員会の数が多い割には費用対効果が薄いように思う。本部に意見具申して何らかの成果があるのか、よく考慮してもらいたい。
(意見)
  現執行部の姿勢を、もっと評価すべきではないか。
(質問)
  最近報道されているような監査・会計の問題について、信頼性回復のために近畿会として出来ることはないのか?
(回答)
  協会本部が核となって実質的な作業を行うので、近畿会としては本部プロジェクトに対しメンバーを派遣するとともに、別途、近畿会として「公認会計士法改正特別委員会」を設置して発言を考えている。
(質問)
  突発的な事が起こった場合、近畿会でプロジェクトチームなどを立ち上げる余裕はあるのか。
(回答)
  今後の公認会計士法改正に伴い、会員以外の例えば学者等と連携し、近畿会でプロジェクトチームを立ち上げる余力はあると考えている。また、今後も本部理事以上が中心となって本部情報の効率的な共有化を図りたい。
 
 以上、活発な質疑・意見が交された後、議事終了に先立ち、平成18年度春の叙勲受章者の紹介が行われ、記念品が手渡され受章者より御礼の挨拶があった。

末政芳信 会員 瑞宝中綬賞(教育研究功労)
 引続いて、会員褒章者の紹介が行われ、感謝状と記念品が手渡された。
田村幾藏 会員 (相談役30年間)
沖見圭祐 会員 (相談役20年間)
長船 強 会員 (相談役10年間)
 最後に、中務副会長が、会員のニーズの全てに応えることは難しいが、執行部としては前向きに対応していきたい。また、11月のトルコでの世界会計士会議には近畿会のツアーから参加願いたい、との閉会の挨拶を述べ定時総会を終了した。
 
二、 本部会務報告会
 本部会務報告は、佐伯会長の進行で、協会本部の山崎副会長と澤田副会長が登壇して実施された。
 まず、山崎副会長は、・現下の環境についての協会の対応、・監査実務の充実、・中小事務所等との連携強化及び業務支援、・公認会計士試験制度改革への対応、・国際会計・監査基準への統合化問題、・協会組織・ガバナンス改革等について報告された。
 特に、・現下の環境についての協会の対応では、上場会社監査事務所部会の設置構想や、協会レビューと公認会計士・監査審査会のモニタリングの関係について言及され、金融商品取引法の制定が監査に及ぼす影響についても説明された。
 続いて、澤田副会長から、・協会組織・ガバナンス改革に関連して、協会役員組織の改革、役員定数等の見直し、会長等の選出方法、協会本部と地域会との役割分担等について、パワーポイント(当日配布)に沿った説明があった。
 その後、会員との質疑応答が活発に行われたが、主なものは以下のとおりである。
<選挙方法に関する質疑応答>
(質問)
  定数内連記制は、多数派が占め少数派を排除するという選挙制度であり改正すべきなのに改正されないのはなぜか?
(回答)
  協会本部の常務理事は相当程度協会の会務に従事しており、しかも無給のボランティアであるため、結果として、大手法人から相当数の人員を確保する必要がある。それらの人員の確保は定数内連記制でないと困難ではないかという意見が強い。しかし、ご指摘の定数内連記制の欠点を補うため、今回の会則変更案では従来より連記数を減らす提案をしている。具体的には、5+(定数−5)÷3により算出している。
(意見)
  協会本部で、事務部隊を確保する必要があるのは理解できるが、本部の選挙方法を地域会にも一律に適用するのは問題である。地域会の独自性のために地域会で選挙方法を選択できる余地を残すべきである。
(意見)
  最近選挙が行われていないが、理事の定数削減により選挙を実施し会務の活性化を図る必要がある。
(意見)
  事務局を強化して、フルタイムの常務理事の負担を軽減すべきである。
 
<上場会社監査事務所部会に関する質疑応答>
(質問)
  金融庁が提唱している監査法人の登録制と、会計士協会が構想している上場会社監査事務所部会の登録制の関係はどうなっているのか?
(回答)
   一般社会から、監査法人の登録制導入により管理を強化してはどうかという意見があるのは確かである。会計士協会は自主規制団体として主導権をもって、上場会社を監査する事務所へ登録を求める制度の導入を検討している。これは、プロフェッション団体である協会が適切な自主規制措置を講じ、もしその制度について不足があるなら公的機関が補完するというシステムが妥当だと考えているからである。そして、この制度を運用するにあたり、登録名簿を公表し、監査を受けようとする会社に情報提供をしようと考えている。
(質問)
  上場会社監査事務所部会は、登録申請時及びその後も継続時の品質をチェックすることを想定しているが、品質水準の低い監査事務所の支援等を考えているのか?
(回答)
  一次的には、上場会社の監査を行う事務所の品質管理水準の向上に資することが目的である。しかし、当然のこととして品質管理レビューにより、適切な改善が見られない監査事務所に対しては何らかの警告が発せられ、結果として品質管理のレベルの高い事務所と低い事務所との区別されることが考えられる。
 他にも貴重な意見が多く出されたが、時間の関係で18時には質疑応答は打ち切られたが、監査不信の問題について活発な議論がなされた。
三、 記念パーティー
 定時総会の終了後、各界の来賓を招待した記念パーティーが開催され、冒頭、佐伯会長は開宴の挨拶の中で、「近畿会として、公認会計士監査の信頼回復に努めると共に、CAPA大阪大会を契機にアジア諸国の会計士協会地域会との交流を深め、また関西経済の活性化や公的分野での3Eやディスクロージャーに寄与したい。皆様のご理解とご協力をお願いします。」と述べた。
 続いて、衆議院議員の谷口隆義会員は、来賓挨拶の中で、「新会社法や金融商品取引法が施行されることにより環境が大きく変化し、それに対する対応が重要である。監査法人に課徴金や刑事罰を課することが検討されているが、刑事罰は監査の根幹を揺るがすものであり問題である。アジア経済発展のために、金融拠点を整備し資金調達の方法を確立することが急務である。」と述べられた。
 また、参議院議員の尾立源幸会員は、「今、金融商品取引法の審議の中、意見具申等を行っているが、日本経済の発展のためには、資本市場に資金が十分流入するような良質な資本市場の確立が不可欠である。関係各位のご協力をお願いします。」と述べられた。
 また、本部副会長の山崎彰三様は、公認会計士監査の信頼回復のための協会としての諸施策について会長コメントを代読された。
 乾杯のご発声は、株式会社大阪証券取引所の取締役社長の米田道生様が行なわれ、その際「金融商品取引法等の新しい法律が施行されるが、証券市場の公平性・透明性のために皆様と連携して努力して参ります。」と決意を述べられた。
 その後、懇談になったが、国会で審議中の金融商品取引法や公認会計士監査の信頼回復の問題等が話題になってい
たようである。最後に、中務副会長が記念パーティー出席の謝辞と近畿会へのご支援について述べ閉会となった。

 今年の定時総会や本部会務報告会では、例年に増して活発な質疑・意見が交わされたが、残念なことに参加者が97名と少なかった。近畿会の会員数約3,000人からすると3%の参加率である。
 執行部では、パワーポイントやスライドを駆使して総会の進行に務めたが、会員の近畿会会務への関心は低いようであり、参加率の上昇は執行部の課題である。会員各位の今後のご参加をお願いします。