【特別寄稿】 | |
参議院における「協会の今後の方向について」の意見陳述(要旨)について | |
昨年の10月27日に、日本公認会計士協会の藤沼会長が国会に呼ばれ、参考人招致を受け、参議院で協会の今後の方向について、きわめて重要な意見陳述を行っています。この議事録はインターネットでも公開されていますが、近畿会の皆様には、日常の業務に関連するところを抜粋してご紹介したいと思います。なお、質問者は、近畿会会員でもあり、参議院議員の尾立源幸氏です。 | |
(監査人のローテーションについて) | |
尾立: | |
(前略)協会の方ではこの7年ルールをもうすこし厳しくして、4大監査法人のローテーションについては5年の継続監査の後は5年間お休みをするという、こんな仕組みを考えられておるように聞いていますが、ちょっとご説明いただけませんでしょうか。 | |
藤沼: | |
(前略)主任会計士とその他の関与社員というふうにわけてまして、主任会計士については5年・5年、その他の関与社員については7年・2年と、これはアメリカと同じような制度を実行しようということで、これは上場会社について4大法人、4大法人で日本の上場会社の約8割強をやっておりますので、そういうことであるならば、そういう形の実行できる4大法人にお願いしたいということで自主規制でやっていきたいというふうに考えております。 | |
尾立: | |
(前略)アメリカの制度では例外規定を設けております。それは中小監査法人、すなわち監査を担当している会社が5社未満で、パートナーというか、会計士が10人未満のところは、このローテーションをする代わりに、免除する代わりに行政機関が、PCAOBですが、3年ごとに全部の監査を全件チェックすると、そのことで中小監査法人の負担を軽減するような措置が入っておるわけでございますが、日本でなぜこのような例外措置がとられなかったのかということ、この点をちょっとお聞きしたいわけでございます。(後略) | |
藤沼: | |
(前略)中小事務所については、ローテーションを実行するのは、元々社員数がすくないものですから非常に難しいということがありまして、これは7年・2年という先ほどのルールの中でそれぞれが工夫しながらローテーションに対応するということをやっているというふうに思っているわけでございますけれども。(中略)そのような免除規定が中小事務所に適用できれば非常に望ましいなという、個人的にはそのいうふうに思っています。 | |
国務大臣(伊藤) | |
:(前略)商法特例法に基づく監査のうち、資本の額百億円未満かつ負債の額1千億円未満の株式会社に対する監査についてはローテーションルールの適用を除外するとともに、個人の公認会計士について、周辺地域において公認会計士が不足している等により交代が著しく困難な状況にある場合には、内閣総理大臣の承認を得て引き続き監査を行うことができることととするなどの措置を講じたところでございます。(後略) | |
(監査とデューディリジェンスの違い) | |
尾立: | |
(前略)ある会社の監査をしていたときは、ずっと継続するよということで適正意見がでていたのに、デューデリジェンスをした途端になにかすごい大損失が出て、これまでやってきた監査はいい加減じゃないかと、このような世間一般に見られる場合もございますが、この辺のいわゆる通常の監査とデューディリジェンスの違いといったことを会長のほうからご説明いただければと思います。(後略) | |
藤沼: | |
(前略)当然、買収側のその手続きですので、実際にたとえば資産査定をするというような場合には、当然ながらゴーイングコンサーンを前提とした資産査定というよりも、時には清算価値に近いような資産評価にしてしまうとか、そのようなところがありまして大分違う手続きを行っているということと、また結果なんですけれども、デューデェリした結果については、基本的にはデューディリを依頼した側とデューディリを実施した側の間でしかその結果報告というものは出されない。こういうのが大体の結果でございまして、一方財務諸表監査は財務諸表全体についての監査でございますので、当然開示情報についても詳細なものが開示される。そういうところについても監査人の目が入ってるわけでございますので、したがってその深さ、広さについて大分違う手続きだというふうに認識しています。 | |
(協会の取り組み) | |
尾立: | |
(前略)品質管理レビューをやられているわけでございますが、これはあくまでも協会と監査法人の、外部者から見ますと、内々のやり取りでしかございません、にしか見えません。しかもそのレビュー結果というのが公表されていないということで、一体どんなレビューをやられているのかなと、外から全くブラックボックスで見えないわけでございます。(中略)そういうことをもう少しオープンにされるような情報公開にあり方というものに、会長、ご意見お聞かせください。 | |
藤沼: | |
(前略)品質管理レビューアーが直接事務所に行って各事務所の品質管理レビューを実施するということなんででございますけれども、4大法人については従来まで3年に一度ということだったですけれど、2年に一度ということで頻度を上げておりますし、あと残りの監査事務所については従来どおり3年に一度品質管理レビューをすると。それとあと、品質管理レビューアーも倍増して、20名にしましたし、あと、一名ITの専門家をいれて品質管理レビューの実効があがるようにしている。公開につきましては、従来まで年に一度全体的な品質管理レビューの報告を、それ外部公表をしております。今回は、半期報告もしようということで実行しております。それとあと、公表につきましては、個々の事務所の公表につきましては、これはそれでいろいろ事情がありますので、個々の事務所がどうだったかということは、風評というようなところと結びついてきますので、改善状況を見たうえで、その改善状況がもし守られななければ、その事務所について協会内の自主規制ルールで処分するとか、そういうことは実行する予定でございます。 | |
尾立: | |
(前略)今回、会計士業界全体の自主規制等で厳しく自らを律していくんだと、監査の質を上げていくんだというお気持ちはわかるわけでございますが、もう一方でこの悪い経営者もしっかり取り締まらなければ私はいけないんではないかと、バランスを欠くのではないかというふうに思っております。(中略)会長また金融庁、どのようにお考えでしょうか、この件に関して。 | |
藤沼: | |
私ども監査人として財務情報の信頼性に最大の努力をするということは当然でございますけれども、やはり企業改革法に見られるように、包括的な対応ということが必要なのではないかというふうに思います。資本市場の参加者、特に財務諸表の作成者に関わる経営者については、財務情報の正確性について宣誓書、確認をしてもらうと同時に、宣誓書の基礎となる自分の会社の内部統制について自らが評価して、それを監査人が監査で監査するという内部統制の報告書制度ですね、それをまず実行していただくということが大事なことではないかと思います。(後略) | |
尾立: | |
ありがとうございます。最後に今日会長来ていただきましてありがとうございました。是非、健全なこの証券市場というものを、資本市場をつくるために、会長、協会の皆様、会計士の皆さん、そして金融庁、さらに経営者の皆様、さらには政治家がスクラムを組んでいきたいと思いますが、どうぞ今後ともひとつよろしくお願いいたします。 | |
(文責:和田 頼知) |
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(注)文脈が変わらないよう、また意味が違わないように慎重に議事録を抜粋いたしましたが、誤解があるかも知れませんのでご興味のある方は是非全文をご一読されることをお勧めします。 |