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本部委員2年間を振り返って

学校法人委員会委員 石井 和也

 

 平成15年の初夏、決算監査も一段落した頃、バスを降りて事務所に向かう途中携帯が鳴った。近畿会非営利法人委員会新委員長の本田先生からだった。「石井さん、社会福祉法人部会か学校法人部会の部会長引き受けてくれんやろか。」非営利法人委員会は学校法人部会以下4部会からなっている。私は大概のことは二つ返事で引き受けることにしていた。社会福祉法人部会で計算書類のチェックリストを作ったときも徹夜の連続だったが良い経験になったと思っている。本部委員会にも興味があった。社会福祉法人会計基準が出来て以来、学校法人会計基準の全面改訂も近いと読んでいた。しかし、当時の忙しさは尋常ではなかった。「いやあ忙しくてとても無理です…」「無理か困ったな…」「すみません。」惜しい気はしたが、これ以上引き受けるわけにはいかない。電話を切った目の前に上司が立っていた。「困るなあ、簡単に断ってもらっては。当法人だって最新の情報を必要としているのに…。」心が動いた。本田先生に電話をかけ直し、部会長を引き受けた。
 本部委員会は9月に始まる。学校法人委員会には二つの小委員会があり、第1では合併分割について、第2では委員会報告の改廃について検討することとなっていた。私は既に第2所属と決まっていた。これとは別に第3小委員会と称し、学校法人会計基準改正についての検討もされていたようである。私は第3小委員会に入りたかったが、一般の委員は入れなかった。第2小委員会で委員会報告の改廃を検討するといっても、近々会計基準が改正されるのであれば、再度改正が必要となる。そこで、リスクアプローチ導入以前に作成された学校法人監査手続関係を見直すこととした。リスクアプローチの進め方からリスクの洗い出し等の検討を行ったが、結局、監査計画から見直すべきだということになった。
 第2小委員会がその方向性を模索している間に、第1小委員会では、程なく繰越課題であった合併・分離に係る会計処理についての研究報告をまとめた。しかし、その内容は、委員会が会計基準の設定主体になるわけにはゆかないため、会計処理の紹介にとどまった。
 一方、文部科学省学校法人制度改善検討小委員会は、平成15年10月「学校法人制度の改善方策について」を出した。ここで、計算書類と共に財産目録や事業報告書の作成、公開を義務づけるべきとされた。これを受けて、第1小委員会では財産目録及び事業報告書の雛型の検討に入った。しかし、平成16年5月私学法が改正されると、雛型は文科省が作成することになり、検討は中止された。
 会計基準改正の検討は、学校法人会計基準在り方検討会に委ねられ十数回の検討の後、平成16年3月「検討のまとめ」が出され、・基本金取崩の柔軟化・有価証券の時価評価・注記の充実が提言された。これを受けて、第1小委員会で・を第2小委員会で・・を検討することとなった。当初、会計基準は平成16年度適用を目指していたため、7月にも改正されるとの観測だった。これに併せて委員会報告等を出すために検討を急いだ。会計士協会の集合研修も10月に設定された。しかし、9月になっても10月になっても改正の音沙汰はなく、結局、平成17年3月末にやっと改正省令が出た。基本金及び注記の記載例は文科省が作成し、委員会はQ&Aで実務指針を示した。「検討まとめ」で方向性が示されたこともあり、会計士協会の考え方も概ね文科省の理解が得られたように思われる。ただ、継続企業の前提にかかる注記に関しては難色を示し、自主的注記にとどめることとなった。
 学校法人委員会が基準改正でバタバタしている間に、監査基準委員会は第27号「監査計画」から始まる一連の委員会報告の公開草案(平成17年3月委員会報告)をまとめた。第2小委員会では、第29号「企業とその環境の理解及び重要な虚偽表示リスクの評価」を適用する場合の学校法人特有の問題に対応した問答集を作成することとなった。監査基準委員会報告はすべての監査に適用されるというのがその趣旨である。だとすれば、学校法人委員会からも監査基準委員会に代表を送り込むのが筋だろう。これと、T大学で借入金を寄附金として会計処理をしていたことに端を発する寄付金収入等の監査手続についての研究報告を現在も審議中である。
 地方会からは本部が総てを決定しているように見えるときがある。しかし、実際は本部委員会も大海に浮かぶ一艘の小舟のごとくであり、大波小波にもまれながら必死に舵を取りつつ前に進もうとしている姿がそこにある。
 この原稿を頼まれたときは本部委員も終わるつもりだった。しかし、その後本部から一年延長してもらいたい旨の文書が届いた。新部会長と相談し、後一年続けることにした。