「トップインタビュー」 第4弾!!
 近畿会では、関西の我々とかかわる業界との相互理解を深め、協力可能な施策について関係機関との連携を図るための方法のひとつとして、各関係機関のトップに佐伯会長がインタビューをするという形式で意見交換を実施しております。第4回は大阪商工会議所との座談会を実施しました。

(会報部長 林 紀美代)


特集

 大阪商工会議所会頭との座談会

 
日 時 平成17年8月26日(金)
出席者 大阪商工会議所 野村 明雄(会頭)
  日本公認会計士協会近畿会 佐伯  剛(会長)
    井上 浩一(会報部副部長:文責)
司会: 挨拶及びインタビュー開始を伝える。
 
大阪商工会議所の組織 ( 組織図参照 )
佐伯会長:
お忙しい中、貴重なお時間を頂き感謝申し上げます。早速ですが、先ず大阪商工会議所の組織の概要についてお聞かせ下さい。
野村会頭:
大阪商工会議所は、商工会議所法という法律に基づいて設立された地域総合経済団体です。大阪市内に所在する支社、支店を含む法人、個人の商工業者が加入する会員組織の民間団体であり、加入、退会は任意で、現在、会員数は約3万です。
 本会議所は多くの会員の皆さまに支えられ、地域の商工業者の活力の増進と地域経済の活性化に取り組んでいます。
 具体的には、まず「会員のみなさまのお役にたつ」こと。ビジネスチャンスの拡大や経営革新など幅広いお手伝いをしています。次に「大阪・関西の発展のお役にたつ」こと。新たな産業や文化の振興、魅力ある街づくり、集客機能の強化などに取り組み、活力と魅力に溢れた地域にする活動をしています。さらに、「適切な政策づくりのお役にたつ」こと。地域のオピニオン・リーダーとして、経済・社会全般のあり方について国や自治体に対し、提言・要望活動を行い、的確な政策形成を促す活動をしています。
 
「大阪賑わい創出プラン」
佐伯会長:
野村会頭は、就任早々「大阪賑わい創出プラン」を取りまとめられたそうですが…。
野村会頭:
地域経済の発展には、外からお金を稼いでくるエンジン役となる産業が必要です。例えば、現在、元気があると言われる中部地域では、自動車産業がまさにエンジンとなって、地域の幅広い産業に波及効果をもたらし、地域の経済を支えています。
 では、大阪経済のエンジンとなりうる産業とは一体何でしょうか。本来、大都市を中心とする広域経済圏では、中部地域のようにエンジン産業が1つだけでは十分とはいえません。既存産業の集積状況、競争優位性、成長性、市場性、あるいは地域経済への波及効果などを勘案すると、今後、大阪経済のエンジンとなりうる産業は、まず、現在、大阪の元気の源でもある情報家電を中心に、ロボットやコンテンツ産業などを加えた「新しいモノづくり産業」、次に、関連産業の裾野が広く、雇用拡大にも即効性のある集客・観光といった「ツーリズム産業」、そして、道修町の製薬会社や大阪大学等のバイオ・メディカルの厚い集積があり、将来巨大な市場規模が見込まれる「ライフサイエンス産業」の3つが有望と判断しています。
佐伯会長:
そうしたエンジン産業の振興を打ち出したのが、「大阪賑わい創出プラン」ですね。
野村会頭:
そうです。大阪は、選択と集中によりこれらの3つのエンジン産業の振興に注力すべきだと思います。世界トップレベルの大学・研究機関を核に、高付加価値の競争力ある製品・サービスを生む先端企業の集積を図ることや、観光客など多くの人を引きつける魅力的な街づくりを進めていくことが急務です。こうした取り組みにより、大阪は、国内はもとよりグローバルな地域間競争に打ち勝ち、成長著しいアジアにおいて、ひときわ存在感を示すことが可能になるのではないでしょうか。
「大阪賑わい創出プラン」は、こうした大阪を実現していく中長期のビジョンを提示するとともに、そのビジョン実現に向けた大商自らの取り組みを打ち出したものです。平成17年度を「大阪賑わい創出プラン」の実行元年と位置づけ、3つのエンジン産業振興に加え、それらと相乗効果の発揮を狙う、戦略的な企業・研究機関等の誘致、ベンチャー企業成功事例づくりの支援、次世代を担う人材育成、東アジアが注目する都市への取り組み等の7つの重要テーマも決めました。
 自治体や経済団体、さらには個々の企業やNPO、市民と「大阪賑わい創出プラン」を共有し、実現に向けて協働していければと思っています。
 
バイオビジネス支援
佐伯会長:
日本公認会計士協会近畿会(以下、「近畿会」)でも、関西経済の活性化を主要事業計画の柱としています。私どもも、3年前に「バイオサポーターズ三会協議会」と言うのですが、我が国で始めての試みとして、近畿会、大阪弁護士会・日本弁理士会近畿支部の3会から構成されるバイオに絞り込んだベンチャービジネス立ち上げのビジネスモデル作成支援協議会を設置し、併行して「関西バイオビジネス研究会」という実行組織で実務を行なっています。今年9月に横浜で開催されますバイオ関連では我が国最大級のイベントであるバイオジャパン2005に、この「関西バイオビジネス研究会」の成果物の第1号となる成功実務事例を発表致します。
 また、先ほど会頭からライフサイエンス産業の振興の必要性についてお話がありましたが、3会は、大阪商工会議所、関西経済連合会、大阪証券取引所等が主催されている「バイオビジネスコンペJAPAN」にも今年度から共催の形で参加させて頂いておりますし、なんと先程の成果物の第1号が、2004年「バイオビジネスコンペ JAPAN」の最優秀賞を得たシーズが対象なのです。
[補足:この座談会は平成17年8月26日に行なわれましたが、翌月の9月9日にバイオジャパン2005は延べ20800人が参加し、三会の事例発表も高く評価されました。]
野村会頭:
ライフサイエンス産業の振興は、大阪・関西の産官学が連携し、地域をあげて取り組むことが必要です。大阪商工会議所は、大阪大学、大阪府等とともに、平成12年度からライフサイエンス産業の振興に取り組んでいます。大学、研究機関からビジネス化できそうな研究シーズを発表してもらい、ベンチャー設立や企業への技術移転を図ろうという「バイオビジネスコンペJAPAN」や、北大阪にバイオクラスターを形成しようというバイオ情報ハイウェイ・期・・期構想、医療現場の声を聞いて企業が医療機器を開発する「次世代医療システム産業化フォーラム」等々、様々な事業やプロジェクトを推進しています。
 コンペからは27社のベンチャーが生まれ、バイオ情報ハイウェイ構想は国の都市再生プロジェクトの「大阪圏におけるライフサイエンスの国際拠点形成」に反映され、今までに関西全域では1000億円を超える国費を投入して頂いています。次世代医療のフォーラムからは、細胞自動培養装置等14件の開発プロジェクトが立ち上がっています。
 
中小企業・ベンチャー企業支援について
佐伯会長:
バイオ以外に、ベンチャー支援として取り組まれていることはありませんか。
野村会頭:
ITベンチャーのビジネスプラン発表会をはじめ、様々な取り組みを実施しています。例えば、米国には、エンジェルと起業家やベンチャー企業がネット上で出会うTCN(The Capital Network)という仕組みがあり、起業前後の早期段階にあるベンチャーの資金調達に重要な役割を果たしています。これの日本版のJCN(Japan Capital Network)の立上げ準備を進めています。
 また、創業後10年で雇用を急激に増やしたベンチャー企業の経営者には、創業時にビジネス・プランを作成している、企業の経営企画、財務、研究開発に携わっていた経験がある、外部株主の導入に積極的等の特色を持っているとの神戸大学の調査があります。そこで、逆にこれらの特色を持つ創業を志す、あるいは創業間もない起業家やベンチャー企業に、ビジネスプラン発表や資金調達、販路確保の機会を提供し、ベンチャー企業に急成長してもらおうというEVEシステム(Excellent Venture Encouraging System)も今年度から実施しています。
佐伯会長:
ご存知のように、日本商工会議所、日本公認会計士協会・日本税理士会・企業会計基準委員会(ASBJ)は共同で「中小会社の会計に関する指針」を公表しました。中小企業及びベンチャー企業にとって、財務情報を共通した会計ルールで作成し、その比較可能な財務諸表を利害関係者(金融機関、取引先等)に提供できる社会的に認められた会計指針を提示したことは意義があると思っております。
 また、新たに制度化されますLLCやLLPと言ったベンチャー企業として利便性ある法律改正についても、いち早く大阪でのインフラ普及に貢献したいと考えております。
 こうした点で、大阪商工会議所と連携し、セミナー等を共催できればと考えています。
野村会頭:
そうですね。日本公認会計士協会近畿会とは、今後多くの経済分野で協力関係が持てそうで宜しくお願いしたいと思います。
佐伯会長:
過度なご期待を頂くと大変です。(笑)ただ、既にこれまでに、例えば大阪商工会議所と近畿会で共同の中小企業の監査・会計に関するアンケート調査を実施し、その成果を公表した実績があります。また、大阪商工会議所が運営されています中小企業再生支援協議会へは、個々人の公認会計士でなく、近畿会の常設委員会(中小会社活性化委員会)から人材を派遣させて頂いており、良好な関係は一部において築かせて頂いております。
 
東アジア
佐伯会長:
ところで話は変わりますが、2007年10月に大阪で、CAPA(アジア・太平洋会計士)会議を開催することになりまして、テーマは「アジア経済発展に向けた公認会計士の役割り」で国内を含め約1500人の関係者が一堂に会するイベントが予定されております。この組織・実行を近畿会が主体となって既に準備に入っているのですが、我々としては、このイベントを単なる一時点のものに終わらせず、今後も継続したアジア諸国、特に中国・韓国との関係を築く機会にしたいと考えております。
 具体的には、韓国第二の都市であるプサン公認会計士協会と友好条約を締結し、中国第二の上海会計師協会とも友好条約の締結準備を始めております。大阪商工会議所は早くからアジア諸国・諸都市との関係をお持ちですが、国際面ではどのような活動をお考えでしょうか。
野村会頭:
従来から関西は、アジアとのつながりが非常に深い地域ですが、今後、地域経済が発展していくためには、貿易面でも観光面でも、中国をはじめとするアジアとの関係を、一層、深めていく必要があると考えています。先にご説明しました「大阪賑わい創出プラン」の重点テーマの一つに、“アジアが注目する大阪”を掲げていますが、現在、東アジアとの経済連携協定(EPA)推進に係る支援活動として原産地証明の発給、中国ビジネス支援事業などを実施しております。とりわけ、中国の様々な制度や商習慣などの情報は、中国へのビジネス展開を考える企業の皆様から大変喜んでいただいております。また、大阪府や大阪市と連携して、上海において「大阪・上海経済交流拡大セミナー」を開催するなど、上海企業の大阪誘致や双方向の交流拡大にも取り組んでいます。
佐伯会長:
日本公認会計士協会の国際的役割り分担としまして、東京には欧米との交流関係をお願いし、近畿会はアジアとの関係で「強み」を発揮したいと考えております。出来れば大阪商工会議所、大阪証券取引所、大阪府等のお知恵をお借りして、特に上海と継続した情報・人材交流を近畿会として築けたらと思います。
野村会頭:
アジアとの関係を深めようとする大阪・関西の企業を支援する点において、協力できるところがあるかもしれませんね。
司会:
お話が尽きないようですが、とりあえずこの辺で締めくくらせて頂きます。
佐伯会長:
会頭、本日は貴重なお話をお伺いできて喜んでおります。関西経済活性化に向けて大阪商工会議所との連携が見えてきました。有難うございました。
野村会頭:
大阪商工会議所としまして、大阪に賑わいを創り出すための様々な活動を行い、会員企業と大阪経済の発展に役立つ活動を展開していきますので、今後とも宜しくお願いします。
司会:
  本日はお忙しい中、有難う御座いました。