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第26回日本公認会計士協会研究大会 仙台大会 |
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第26回日本公認会計士協会研究大会の仙台大会が平成17年7月21日に仙台市内のホテル仙台プラザにて開催されました。今回のメインテーマは「大きく広がる公認会計士の果たす使命 ‐行動する会計プロフェッションへ‐」です。 | |||
今回の研究大会のプログラムは以下のとおりです。 | |||
1. | 研究発表(午前の部) | ||
第1会場 | 「会計大学院での新しい会計教育と21世紀の会計士像 ‐東北大学会計大学院の国際展開事業を中心として‐」 | ||
第2会場 | 「地域活性化と東北産学官連携ファンド ‐東北の経済活性化と産学官の取組み‐」 | ||
第3会場 | 「財務会計の役割 ‐業績報告と収益認識をめぐって‐」 | ||
第4会場 | 「監査人の独立性の新しい潮流 ‐激流の中でいま問われているもの‐」 | ||
第5会場 | 「会社法制の現代化と資本会計上の課題」 | ||
2. | 研究発表(午後の部) | ||
第1会場 | 「ディスクロージャー制度の信頼性の確保に向けた対応について」 | ||
第2会場 | 「企業再生における公認会計士(会計)の役割」 | ||
第3会場 | 「財務報告に係る内部統制の有効性に関する評価及び検証」 第4会場「排出量取引における公認会計士の役割に関する一考察 ‐第三者に対する法的責任からのアプローチ‐」 |
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3. | 記念講演会 | ||
テーマ: | 「21世紀の世界における日本の役割」 | ||
講師: | 明石 康氏(スリランカ問題担当日本政府代表、元国連事務次長) | ||
4. | 記念パーティー | ||
また、今回の大会の関連行事として以下のものが企画されていました。 | |||
1. | 前夜懇親会 | ||
大会前日の7月20日に前夜懇親会が催されました。 | |||
2. | 記念ゴルフ大会及び各種観光プラン | ||
大会翌日には記念ゴルフ大会が開かれ、また東北地方をめぐる様々な観光プランも用意されました。 なお次回の研究大会は福岡で実施されますので、皆さん是非参加をご検討ください。 |
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それでは、上記のプログラムのうち筆者が参加したテーマについて報告します。 | |||
T. | 研究発表 | (午前の部) | |
第4会場 | 「監査人の独立性の新しい潮流 ‐激流の中でいま問われているもの‐」 | ||
(基調講演者) | 公認会計士 川北 博氏 | ||
(パネリスト) | 青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授多賀谷 充氏 青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授橋本 尚氏 青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授町田 祥弘氏 筑波大学社会科学系教授弥永 真生氏 |
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![]() 次に町田氏から米国の動向について以下の説明がありました。 米国では2000年にSECによる独立性に関する規則の改正がありました。SECは2000年6月に監査人が監査先に非監査業務を同時提供できないような公開草案を公表しました。この公開草案は、会計事務所の収入に占める非監査業務収入の割合が増大していることに対応したものでした。しかし、大手会計事務所等がロビイング活動を活発に行った結果、2000年11月のSECの最終規則においては非監査業務の同時提供禁止の取扱いは大幅に後退しました。具体的には、同時提供の禁止は内部監査のアウトソーシングに関する業務の量的規制に留まったのです。 その後、有名なエンロン事件が起りました。2001年12月にエンロンが経営破綻し、エンロンの監査人であったアーサーアンダーセンも崩壊しました。これらの会計スキャンダルを契機に、2002年7月に企業改革法(サーベンスオクスリー法)が制定されました。企業改革法による規制における重要ポイントの一つが監査人の独立性の強化でした。 企業改革法の201条において、以下の非監査業務の同時提供が禁止されています。 ・記帳業務 ・財務情報システムの設計と運用業務 ・鑑定もしくは評価業務 ・保険数理業務 ・内部監査のアウトソーシング業務 ・経営機能代行または人事に関する業務 ・ブローカー・ディーラー、投資アドバイザーまたは投資銀行業務 ・法務及び監査に関係のない専門業務 ・PCAOBの定めるその他の業務 また、企業改革法203条においては監査担当者のローテーションについて規制しています。主任監査担当パートナーおよび当該監査の審理担当パートナーは5年ごとに交替する必要があります。 会計事務所自体のローテーションについても論点となっていましたが、現在のアメリカ会計検査院の暫定的な結論は会計事務所のローテーションは効果が小さいというものです。 米国においての独立性に関する課題としては、内部統制監査と財務諸表監査との独立性の問題、会計事務所のローテーション問題、IPO支援とその後の監査の独立性の問題、税務業務と独立性の問題等があります。 弥永氏からはヨーロッパの動向について以下の説明がありました。 2002年5月にヨーロッパ委員会は「EUにおける法定監査人の独立性に関する勧告:基本的原則」(EU基本的原則)を公表しました。このEU基本的原則は、EU全域における法定監査人の独立性についての加盟国の要求事項にとってのベンチマークとなることをその目的としています。EU基本的原則において、非監査サービスの性質から生ずる特定の脅威のために独立性のリスクが残る場合には、そのリスクが受容可能なレベルまで削減されることを確保する必要があるとしています。またEU基本的原則では、監査チームのメンバーの監査先への就職や監査責任者の交代についてもルールを設けています。EU基本的原則は加盟国の中での最低限度を定めるものと理解されており、加盟国の中にはフランス、ベルギー、イタリアなどEU基本的原則の水準より厳しい規制を持つ国も少なくありません。 橋本氏からはIFAC(国際会計士連盟)の動向について以下の説明がありました。 IFACでは1996年に倫理規程が公表され、その後1998年、2001年、2004年および2005年に改訂されています。日本公認会計士協会はIFACに加盟していることから、我が国の公認会計士はこのIFACの倫理規程を遵守する必要があります。 IFACの倫理規程では、職業会計士が遵守しなければならない基本原則として、・誠実性、・客観性、・専門的能力と相当な注意、・守秘義務、・専門家としての行動、を挙げています。これらの基本原則の遵守を脅かす脅威の一つとして、独立性の問題を位置づけています。職業会計人は、基本原則の遵守に対する脅威を識別し、脅威の重要性を評価し、脅威が明らかに軽微でない場合には、脅威を除去するか、容認可能な水準まで軽減しなければなりません。 また倫理規程の独立性に係る新しい公開草案では、ネットワーク・ファームの定義が改正され、共通のブランド名を用いている場合、専門職業に関連する重要な資源を共有している場合または利益や費用を共有している場合にはネットワーク・ファームとみなすことが提案されています。 多賀谷氏からは日本の公認会計士法の改正と独立性規制について以下の説明がありました。 2003年の公認会計士法の改正においては、その第一条の使命規程にも独立性が言及されています。 まず大会社等に関して、監査証明業務と一定の非監査証明業務との同時提供を禁止する措置となっています。同時提供が禁止される業務の具体的内容としては、・会計帳簿の調整業務、・財務・会計に係る情報システムの整備・管理業務、・現物出資等に係る財産の証明・鑑定業務、・保険数理業務、・内部監査の外部委託業務、・証券業、・投資顧問業、・自己監査又は被監査会社の経営判断に関与すると認められる業務、が挙げられています。 また大会社等に関して、公認会計士又は監査法人の社員が連続する7会計期間について監査関連業務を行った場合には、翌会計期間以後2期間は監査関連業務を行わせることができないものとしています。 さらに公認会計士は、監査をした財務書類に係る会計期間の翌会計期間の終了の日まで被監査会社の役員又はこれに準ずるものに就いてはならないとしています。 独立性の規制に関する今後の課題としては、現在は提携ファームまで適用範囲としていない点、M&Aや合併が発生することにより自動的・反射的に監査人の独立性が失われてしまう可能性がある点等の説明がありました。 |
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U. | 研究発表 | (午後の部) | |
第1会場 | 「ディスクロージャー制度の信頼性の確保に向けた対応について」 | ||
(発表者) | 金融庁総務企画局企業開示課 企業会計調査官 野村 昭文氏 |
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![]() まず平成16年11月16日付の金融庁からの「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について」の概要の説明がありました。ここでは、@有価証券報告書の審査体制(株主の状況等についての開示内容の自主的点検を含む)、A公認会計士等に対する監督、B開示制度の整備、C市場開設者に対する要請、が述べられています。 次に平成16年12月24日付の金融庁からの「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応(第二弾)について」の概要の説明がありました。ここでは、@全開示企業による自主的点検を受けた対応、A有価証券報告書等の審査体制、B開示制度の整備(有価証券報告書のコーポレートガバナンスに係る開示の充実を含む)、C公認会計士等に対する監督、D市場開設者に対する要請、が述べられています。 コーポレートガバナンスについては、企業内容等の開示に関する内閣府令の改正が行われ、有価証券報告書等において一定のコーポレートガバナンスの状況の記載が求められています。 有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する代表者の確認の制度について以下の説明がありました。当該制度においては、有価証券報告書提出会社の代表者はその記載内容が適正であることを確認した旨や当該確認を行うにあたり財務諸表等が適正に作成されるシステムが機能していたかを確認した旨およびその内容等を記載することになります。ただし、この代表者の確認の制度は強制適用ではなく任意適用です。 証券取引法の一部を改正する法律の概要について以下の説明がありました。 ・公開買付(TOB)規制の適用範囲の見直し 公開買付制度の信頼性確保のために、立会外取引のうち、相対取引に類似する取引については、買付け後の株券等保有割合が3分の1を超える場合に公開買付規制を適用します。 ・上場会社の親会社に対する情報開示の義務付け ディスクロージャー制度の信頼性確保のために、上場会社の親会社について、親会社自身の情報の開示を義務付けます。 ・外国会社等の英文による企業情報の開示 我が国証券市場の国際化・競争力の向上のために、日本語による要約等の添付を前提に、外国会社等に英語による有価証券報告書の開示を認めます。 平成17年1月28日付の「企業会計審議会より今後の運営について」について以下の説明がありました。 ・企業会計審議会の企画調整部会では、EUにおける同等性評価や会社法現代化の動向等を踏まえ、審議事項の企画調整を行うとともに、必要な審議・検討を行います。 ・同監査部会では、継続的に監査基準の改訂作業を進めるとともに、四半期レビュー基準の策定を行います。 ・同内部統制部会では、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価の基準及び公認会計士等による検証の基準について策定を行います。 財務報告に係る内部統制の充実に向けた取組みとして、以下の説明がありました。 昨年秋以降、ディスクロージャーをめぐる不適正事例が起こっていることから内部統制の充実の必要性が求められています。我が国のこれまでの取組みの一つとして、平成16月3月期から経営者確認制度が任意で導入されており、現在200社超の会社が当該制度による確認書を提出しています。この制度では、経営者が有価証券報告書の記載内容の適正性を確認し、その中で財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しているかを確認することになります。平成17年7月13日付で企業会計審議会内部統制部会から「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(公開草案)が公表され、財務報告に係る内部統制の経営者による評価及び公認会計士による監査の義務化のあり方の検討に際して議論のベースを提供しています。この公開草案については、8月末を期限として、広く一般から意見を募集しています。 監査基準の体系に関しては、会計事務所の品質管理についての変更や事業上のリスクを重視した監査に関する変更を想定した監査基準の新しい体系案の説明がありました。 今後の開示制度のあり方については、平成17年6月28日付の金融審議会第一部会の「ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告の概要 ‐今後の開示制度のあり方について‐」の説明がありました。特に証券取引所で行われている四半期開示を証券取引法上の開示としても位置づける整備を図っていくことについての説明がありました。また四半期財務諸表の保証手続としてレビューの導入を図ることとし、レビュー手続にかかる保証基準の整備も図ることの話もありました。 |
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第3会場 | 「財務報告に係る内部統制の有効性に関する評価及び検証」 | ||
(発表者) | 青山学院大学大学院 会計プロフェッション 研究科教授 八田 進二氏 公認会計士 手塚 仙夫氏 公認会計士 牧野 隆一氏 公認会計士 廣瀬 治彦氏 公認会計士 土田 義憲氏 |
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当会場は平成17年7月13日付けで企業会計審議会発表された、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(公開草案)の公表について」を取り纏められた企業会計審議会・内部統制部会長の八田氏の講演であること及び実務面での当業界への影響が非常に大きいと予想されていることから会場の席を確保することが困難なほどの大盛況でした。 はじめに八田氏から今回の公開草案の公表にいたる時代的背景及び公開草案の骨子が説明されました。説明の中で、特に2004年10月以降の有価証券報告書における不実記載については具体的社名及びその内容も含め話をされ、これらの問題が市場の信頼を失墜し、財務諸表監査の範囲及び監査人の役割の議論を高め、結果として内部統制問題に対する本格的議論開始につながることとなったと話されていました。また、東京証券取引所での対応、金融庁の対応そして新会社法での対応と内部統制はあらゆる方面から重視され今日に至っているとのことでした。公開草案の骨子については、原文も配布資料とされレジュメ及び公開草案のうち、特に注力された点を説明されました。具体的には、内部統制の基本的要素に「ITの利用」という概念をCOSOに加えて採用すること、内部統制の目的に「資産の保全」を同様に加えること及び内部統制監査の実施者として財務諸表監査の監査人を想定していることがあげられ、現在米国において設定され実施されている内部統制概念及び内部統制監査と日本版は少し異なるものになるということでした。最後にこのような日本版内部統制が設定された背景として、2005年4月13日に開催された米国SEC主催の「内部統制報告規定の実施に関するラウンドテーブル」があり、そこで議論された米国の現状が説明されました。 続いて手塚氏から内部統制監査を取り巻く日本公認会計士協会の動向の説明、及び牧野氏から財務諸表監査と内部統制監査の異同点の説明があり、その後パネルディスカッションとなりました。 ![]() 個人的に一番興味を引いた発表は、八田氏からこの公開草案は今後実施される監査の具体的範囲及び実施時期についても幅広く意見を求めており、他の公開草案と異なり集約される意見によって現在公表されている内容が大きく変更される可能性があるという説明でした。我々の業務範囲にも大きく影響がある内容ゆえ、今後の動向に留意が必要と感じました。 |
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V. | 記念講演会 | ||
テーマ: | 「21世紀の世界における日本の役割」 | ||
講師: | 明石 康氏(スリランカ問題担当日本政府代表、元国連事務次長) | ||
![]() 明石氏の講演では以下のような話がありました。 ・国際社会での日本の存在感は、現状においてはまだまだ小さい。 ・しかし、日本の国際的な活動における潜在能力は高い(特に経済力等)。 ・存在感を高めるためには、国としての未来像をしっかりと描く必要がある。 ・冷戦の終結とともに、民族紛争や国内紛争が多くなってきている。 ・国際外交においてNPOやNGOの役割が拡大してきている。 ・国民の一人ひとりが国際的なコミュニケーション能力を高める必要がある。 ・特に英語教育を一層充実させる必要がある。 ・現在の国際社会で発生している多くの問題を見てみると、その根本的な原因は国際的に富が偏っていること、すなわち貧富の差である。 ・日本が国連の常任理事国入りするためには、ODAでの積極的協力、平和維持活動等の軍事的な国際貢献、アジア等も含めた多角的・多面的な外交活動が必要である。 |
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(取材: 研究部 佃 弘一郎) |
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<研究発表(午後の部)第3会場 取材担当 高濱 滋> |