トップインタビュー 第2弾!!
  近畿会では、関西の我々とかかわる業界との相互理解を深め、協力可能な施策について関係機関との連携を図るための方法のひとつとして、各関係機関のトップに佐伯会長がインタビューをするという形式で意見交換を実施しております。第2回は大阪弁護士会との座談会を実施しました。

(会報部長 林 紀美代)

 

特集

大阪弁護士会会長座談会

 
日 時 平成17年6月22日(水)
  大阪弁護士会 益田 哲生 氏 (会長)
    井上 英昭 氏 (副会長)
    辰野 久夫 氏 (副会長)
    村松 宏治 氏 (事務局)
  近畿会 佐伯  剛 氏 (会長)
    林 紀美代 氏 (会報部長)
    辻本 憲二 氏 (事務局長)
    南  里美 (会報部:文責)
林 部長:
  今日はお忙しいところをありがとうございます。近畿会の役員改選があり、この6月から新会長佐伯の執行部が始まり、その重点施策として「関西経済の活性化に向け、『新規事業の創造』及び『企業の再生』の支援を関係する機関・士業団体等と連携し実施する」を掲げており、関連士業会、経済団体、各種団体との交流を通して、我々がどういうふうに関西経済の活性化を手助けできるかということ、特に我々会計士協会と弁護士会との連携でどういうことができるかということをお聞きしたいと思います。
 
大阪弁護士会の概要(大阪弁護士会機構図次頁参照)
佐伯会長:
まず大阪弁護士会がどのような活動をなさっているのかから伺いたいと思います。
益田会長:
弁護士会の組織の概要からお話しします。東京と北海道には複数、それ以外の県には一つずつ弁護士会があります。大阪弁護士会はその中の一つです。そして、全国を束ねる組織として東京に日本弁護士連合会(日弁連)があり、その中間に近畿弁護士会連合会(近弁連)という組織があります。これは大阪、京都、兵庫県、奈良、滋賀、和歌山の6単位会で構成されています。
 弁護士会の組織の特色は強制加入ということです。必ずどこかの弁護士会に入らなければなりません。それから、「弁護士自治」が認められていますので、監督官庁がありません。 会員数は現在、全国で約21,000名、そのうち大阪は約2900名です。女性は約2650名で、大阪でも約360名、12.5%の方が女性です。女性会員の割合は年々増えています。
 大阪弁護士会の組織には、非常にたくさんの委員会、協議会等があります。公認会計士協会にはない組織として刑事関係の組織がかなりあります。弁護士の場合は企業のご相談にも乗るのですが、一般市民の相談にも当然乗ります。人権擁護、公益活動といったことにかかわる委員会が多いというところも公認会計士協会と違うと思います。それから、監督官庁がないので、綱紀、懲戒についてはすべて弁護士会が独自にします。綱紀委員会とか懲戒委員会とか、弁護士自治にかかわる組織があるのが特徴です。
 役員は会長1名と副会長7名で、任期は1年です。会長は日本弁護士連合会の副会長を兼務しているため、大阪弁護士会の業務を月・火の2日間、残りは東京とほぼ専業の状況です。私自身はこの4月に就任してから、土曜日を除きますと、自分の事務所に行ったことは一度もありません。副会長もたくさんの委員会を担当しますので、ほぼ役員室に常駐し自分の事務所に行くのは週に一日程度という状況です。
佐伯会長:
強制加入は、公認会計士も同じ制度です。それから、ちょうど我々も全国で会員、準会員が約21、000人です。そして、近畿会が約2700人ですので、似通った規模の組織だと思います。
 女性の数は正確には把握していませんが大体10%強ぐらいです。全国では近畿会だけなのですが、女性会計士委員会というのがあり、女性会計士独自の活動をしています。
益田会長:
女性独自の活動というのは何なのですか。
佐伯会長:
例えば司法書士、税理士等各士業との合同研修会を開催するなどして異業種との交流を図ったり、女性リーダに講演をしてもらうなど、そういう意味では切り口は斬新です。そういう女性に関しての活動は増えてきています。会計士の試験合格者も最近は20%ぐらいが女性です。
 
会務の運営
佐伯会長:
先ほど任期が1年という話がありましたが、会計士協会の本部は3年で、近畿会は2年です。1年では、継続的な会務活動に障害があると思うのです。しかし、3年もやりますとやはり疲労しますね。ですので、2年であればある程度持ちこたえられるかなと思います。
益田会長:
弁護士会の場合は、日弁連の会長と事務総長は2年、それ以外は1年です。会務の継続性を考えると、おっしゃるようにやはり少なくとも2年が必要です。しかし、今のように専業に近い状態で会務を行うのは1年でも大変です。会務の運営状況を変えるか、継続性を優先するかという議論はあるのですが、難しい問題ですね。
佐伯会長:
私の場合は会計士協会本部の常務理事と近畿会の会長なので大体90%ぐらいが会務活動です。協会の本部の会長は100%に近いのです。そこで、事務局をもっと強化しようということで、事務局にも公認会計士の資格を持った者を入れるという話もあります。それから、会長業務を有償にすることも検討にあがっています。やはり片手間に今までのような会務活動ができなくなってきたなということで見直しを検討しています。
益田会長:
東京には三つ弁護士会がありますが、そのうちの一つの会長・副会長については、業務は有償になりました。
 
法人組織
益田会長:
公認会計士協会と違う点は、会計士の場合は大きな監査法人がありますが、弁護士会の場合はそういう巨大監査法人のような組織がありません。10名以下の事務所がほとんどです。
佐伯会長:
そうですね。我々は、大きな四つの監査法人のメンバーが協会の役員の過半数を占めています。弁護士法人の傾向は今後も続くと考えていいのですか。
益田会長:
法人化は数年前からスタートしているのですが、微々たる状況です。社会が複雑化、高度化していますから、クライアントが求める専門性もかなり高度なものになってきます。そうすると、法人で対応しないと難しいという背景もありまして、司法改革における政府の意見書の中でも法人化を強く進めているのですが、なかなか進まないのです。
 
会務運営方針
佐伯会長:
次に、益田会長のこの1年間の会務の運営方針について、お話しいただきたいと思います。
益田会長:
今年度の会務執行方針の大きな柱は二つです。一つは、司法改革の実行、市民の司法の実現です。司法、法曹界についても行財政改革などと同じように司法改革というものが打ち出されました。私ども自身も司法界は従来のような体制のままではいけないのではないかと考えています。
 司法というのは一般国民に極めて縁遠い存在です。司法、立法、行政の三権といわれるのですが、立法は選挙もありますのである意味では身近な存在ですし、行政も小泉さんが総理大臣だとか日常的に国政をつかさどっていく存在として身近にあるのですが、司法だけは国民の皆さんから見て何をしているのかよく分からないのです。裁判をやっているらしいが実際に何をやっているのか全く見えないというのは事実だと思います。
 グローバル化していく社会の中で果たしてそれでいいのか。もう少し司法がきちんとした機能を果たすべきではないかということで、司法改革というのが進められてきました。私ども執行部の課題の大きな一つは、それをどうやって本来の形で進めていくか、どうやって実行していくのかということです。平成21年5月までに始まる裁判員制度のような国民の司法参加も関連します。
 もう一つは、これも司法改革の一つと位置づけられている司法制度の整備への対応です。その一つに人的基盤の拡充があり、法曹の数を増やして質を高めろということです。先ほど弁護士は現在2万1000名程度と申し上げたのですが、これを平成30年度には5万名にするという計画です。大阪弁護士会の会員数は全国の7分の1ぐらいですが、かりに5万人体制になって7分の1ということになりますと、大阪だけで7000〜7500名という途方もない数字です。
 そうなると、今までの旧態依然とした法廷活動だけでは弁護士の業務は成り立たない。それは目に見えているわけです。それで、大きな課題として弁護士の業務基盤の強化と拡充のための諸施策の推進を挙げたわけです。
 これは多分私どもの年度だけではなくて、次年度にまたバトンを渡して進めていかなければいけないことです。一言で言えば、訴訟を中心とした従来の弁護士の姿からいかにして脱皮していくかということで、なかなか難しい問題です。

 
業務基盤の強化と拡充
佐伯会長:
5万人体制というのは我々も言われています。会計士の場合は、公認会計士法の改正が昨年あり、その新ルールで今年から動き始めています。
 我々が議論しているのは、企業内会計士という存在です。現在は会計士試験の合格者は、大手法人に入り監査中心の業務をすることが大半です。その後中小の法人に行くとか、個人の事務所をはじめるとか、企業のコンサルティングをするとかが中心でした。
 ところが、5万人体制になると、監査のみというのでは限界があるので、やはり企業にCFOとか内部統制の専門家として知識を持った者を提供していき、業務を拡大していくことが必要になります。海外ではこれは当たり前ですが、そういう仕組みを作っていく必要があるといわれています。
 また益田会長が言われた、裁判所等の本来業務以外への拡大というのもその通りだと思います。会計士でも保証業務の拡充が検討されています。企業がいろいろなステークホルダーとの関係を持っていく中で色々な情報の開示が必要になります。財務の情報だけではなくて、非財務の情報についても我々は保証業務をしていこうということです。そういう財務諸表監査以外の情報を保証する業務として広がりを持っていくという方向も考えています。
 今日お話を伺っていて、規模としても制度としても検討課題にしても、弁護士会と会計士協会は本当に似ているなと実感しています。
益田会長:
今おっしゃっている非財務の領域は、場合によっては弁護士とバッティングすることもあります。その中で、ある種のせめぎあいもあるかもしれませんが、ある場合には協働関係で一緒にするとか、弁護士と会計士がこれから一緒に研究していかなければいけない分野だと思いますね。
佐伯会長:
まさにこれから何をすべきか、何を立ち上げるかという議論ですから、手を携えてというか今はライバルというよりも、ともにそのあたりを掘り起こしましょうというステージなのかなと思います。
 
委員会活動
佐伯会長:
次に、組織図の中の委員会のいくつかについてお聞きしたいと思います。弁護士業務改革委員会は、弁護士・弁理士・会計士が3年前に共同で設立したバイオサポーターズ三会協議会にもかかわっていただいて、非常に全国レベルで注目を浴びています。9月に「バイオジャパン2005」という大きな大会があって、2万人近いバイオの研究者、ビジネス起業家が海外からも来られるのですが、そこから本協議会にぜひ出てほしいという要請がありました。この弁護士業務改革委員会と私どもとのおつきあいをもっと深めたいと思っています。
益田会長:
そうですね。私は一昨年に弁護士業務改革委員会の委員長を務めていました。そのときにこのバイオサポーターズのお話があって、ぜひやろうということで、うまくいっている一つのモデルケースだと思います。同じような形でもっといろいろな活動を拡げられないかと思っています。こういう形で幾つかの業界の人が、一つの目的で知恵を出し合って進めることは大事なことだと思います。
益田会長:
弁護士業務改革委員会のテーマは今後弁護士の業務はいかにあるべきか、ということですから、単年度で答えが出る問題ではありません。当然そういう意識を持った人がずっとその仕事を継続してやらなければいけない難しい委員会なのですが、現状非常にうまくいっている委員会だと思いますね。
佐伯会長:
どなたにお聞きしても、まず成功事例を作ってみんなに見せろということが大事だとおっしゃいます。我々会長は、幾らしゃべってもだめで、結果を出すこと、成功事例を出すことが責務だと思いますね。
益田会長:
少し補足させていただきます。組織図の特別委員会の中に知的財産委員会がありますが、この委員会が同じような動きを始めています。ここでも公認会計士協会との連携が可能だと思います。
佐伯会長:
なるほど。我々のほうも、近畿経済産業局の近畿知財戦略本部の本部委員に私が入りました。個人としてではなくて会として動いています。
 バイオサポーターズという一つの成功事例ができましたので、これをいかに横展開するかを考えると、やはり知的財産は重要テーマだと思います。企業の活動の情報の中で企業価値を高めるような情報がどういうものがあるのか、それをどのような形で開示すべきなのかという議論がOECDでもされており、日本とイギリスがそれの取りまとめ役となっていると聞いています。経済産業省がそこに深くかかわっており、知的財産の情報開示についての報告書がどうあるべきかという検討をしています。会計士協会の本部で知的財産の専門部会を私が担当していますが、そこに我々もメンバーを入れました。
 知的財産の情報をいかに開示していくのか。これが関西の場合でしたら、中小会社とかベンチャー企業に知的財産の情報をどのように整理してどのように表現すると金融機関からいかに有利に資金が出るのかをアドバイスするといった議論を、弁護士、弁理士、会計士が士業の立場で、立案をしながらやりませんかという話を申し上げています。
具体的な形でお互いの専門的なノウハウを出すことによって新しい仕組みを作るために動いています。
 今回バイオをやった経験ですが、行政と協力する事も重要です。バイオサポーターズの成功した一つの要因は近畿経済産業局がバックアップしてくれたことですね。
益田会長:
そうですね。バイオサポーターズについては、近畿経済産業局に、コーディネーターのような役割をしていただきました。
佐伯会長:
バイオサポーターズに係った方の意見ですが、会計士も弁護士も弁理士もたこつぼで、コーディネートが大変だと言う話がありました。我々はたこつぼを突破して横断的な関係を作っていくのが、今後の方向だと思います。
 
研修会の開催
佐伯会長:
次に、研修センター運営委員会について伺いたいと思います。
井上副会長:
大阪弁護士会は今年の4月に研修センターというのを作りました。これまで大阪弁護士会では研修委員会が企画する研修だけではなく、いろいろな委員会の研修企画がありました。ところが、情報が一元化されて会員に的確に伝えられていないという問題点がありました。また、その研修の時期、内容などの見直しや総合的な企画を立てて研修を実施していく必要があるだろうということで、研修センターを立ち上げたわけです。
 最初に実施したのが研修情報の一元化です。研修ボードという形で、どういう研修が企画されているかを早期に把握してどういう企画が足りないのかなどを考えて、会員により高度な研修を提供していこうという活動を始めています。
 日弁連もライブ研修という形で衛星通信を使った全国ネットでの研修を始めており、1億4000万円の予算で研修を実施しようとしています。大阪の研修企画も日弁連の中に入り込んで、日弁連の研修に大阪の意見を入れていくということもしながら、その中で足りないところを大阪で独自に準備していくなどの、いろいろな構想をこれから立てていこうと考えています。
 大阪は2900人おりますので、それぞれの専門分野を持つ講師の方も豊富です。また、弁理士会からも研修の提供を頂きました。
 一般市民の方々も今は要求が非常に高くなっています。相続でも離婚でも専門的な知識が必要となります。弁護士としては当然知っているとして専門性を求められるのです。それに応えていかなければいけないということで、まず医療過誤の専門研修を大阪で行いました。次が、現在進行中の建築瑕疵の専門研修です。その次は相続となっています。
佐伯会長:
テーマは幾らでもありますね。
井上副会長:
はい。そういう形で、市民をターゲットにした研修でもそれだけの研修をして、弁護士のレベルアップを図ろうということです。
益田会長:
以前は、たくさんの委員会が、担当している分野の研修会をそれぞれ催すということをしていたものですから、全体の把握ができていなかったのです。似たような研修をそれぞれの委員会がしているということもありました。
 先ほど司法改革で、質と量と申し上げましたが、質の中には専門性をもっと高めろという要求があります。専門性を高めるためには、テーマも極めて専門的なものになってきます。我々弁護士は、建築や医療のことについては素人ですから、それを研修するのはけっこう大変なことです。内部統制の問題とかコンプライアンスの問題も、会計とか監査のことを全然知らなくてできるかというと、これもまた通用しません。このような分野ではその分野の専門家の方に講義していただければと思います。
佐伯会長:
弁護士も会計士も研修の質、量を高めなければいけないというのは一つの今のテーマであるということです。そうすると、より良質の研修会を持っていかないといけないのです。そのためには、大阪弁護士会、近畿会だけでは限界があります。
 会計士協会本部の研修を衛星生中継で流したりもしています。それから、地域会で協力して各地域でやっている研修会をCD-ROMで配布すればよりたくさんの受講チャンスを与えられます。それから、今はeラーニングというのがあり、会場に来なくても受講できます。そういう新しいメディアを使う研修に関しては、弁護士と会計士は似通った懸案がありますので、これもお互いに知恵を出し合えば、色々な議論ができるなと思いました。
益田会長:
eラーニングの問題など、研修センターでも議論をしたらよいと思います。研修に関しては機会がありましたらぜひお願いしたいと思います。
佐伯会長:
内部だけでなく外部向けの研修も考えられます。LLCとかLLPなど、まさに制度化されようという新しい仕組みについて我々専門家が実践セミナーとして提供する必要もあります。そのときには大阪弁護士会と近畿会が共同で、大阪証券取引所や大阪商工会議所の協力を得て、もっと我々が実務界のプレーヤーと接することによって外部へのセミナーなどを開く事も検討すればよいと思います。そういう研修を東京だけで無く大阪でも実施して他地域からも来ていただいて、東京に行かなくても大阪でもちゃんとやるなということを見せたいと思います。
益田会長:
我々が商工会議所に行って講義や講習をしますとすごくたくさんの方が参加されます。大阪弁護士会で講習をやっても、200人か250人がせいぜいなのですが、向こうですると何百と来られるのです。
佐伯会長:
やはり今まで接していない団体と組むことによってお互いの相乗効果が出せます。それはバイオでも本当にすごいなと思いました。そういう意味で先ほどの成功事例を広めたいと思っています。
益田会長:
現在弁護士会では一級建築士や弁理士の方に講師になっていただいているのですから、可能であるならば、会計士の方に講師に来てもらう、あるいは公認会計士協会で行われる研修会に弁護士も出させてもらうということができればいいと思いますね。
林 部長:
弁護士会の研修の情報を頂いて、近畿会の会報に載せて、会員が互いに参加するようなことができるといいですね。
益田会長:
そうです。ご承知のように、会社法もがらっと変わってしまいました。例えば、内部統制の構築が大会社で義務化されたといっても、大方の弁護士はすぐには理解できません。内部統制とは何かということを弁護士としても研修することが必要だと思います。
佐伯会長:
サーベンス・オクスリー法の404条は海外で、具体的にどういう問題を起こしているのかとか、まさにリアルタイムの話ができます。
林 部長:
研修テーマをお互いの事務局に送り合って、いいなと思うものをホームページに掲載すればタイムリーに研修を受けることもできますし。
佐伯会長:
今までやっていないこと自体がおかしい。今後は継続して相互乗り入れを検討したいと思います。
 
環境問題への対応
佐伯会長:
次に、環境マネジメントシステム推進室という委員会があるのですが、この活動状況をお聞きしたいと思います。
益田会長:
企業の評価については、昔は財務の点が大きかったのですが、最近は社会に対していろいろ問われることになりました。特に環境の問題は、投資する側にも重視されています。ただ、弁護士会のこの環境マネジメントシステムというのは企業が行う環境マネジメントについての委員会ではないのです。これは弁護士会自身がどうすべきか、ということです。弁護士会が環境の問題についていちばん問題になるのは何かといえば、氾濫する紙媒体なのですよ。一体どういうふうにペーパーレス化していくのかというところを検討しています。
佐伯会長:
なるほど、我々自身も本当は・・・。
益田会長:
やらなければいけないわけでしょう(笑)。
佐伯会長:
土壌汚染などは、今までは非財務の話だと思っていたのです。ところが、今は減損処理という会計ルールが入って、かりに大きな工場が環境に好ましくない物質を扱っていて土壌汚染の可能性があるとすると、土地の評価はマイナスの評価になってしまうこともあります。その土地の土壌を改良するためには大きな費用がかかるからです。今の会計のルールでは、工場を撤退するとか売却するとか、そういうときに会計処理しようとするのですが、実際にその土壌汚染がはっきりした場合には、引当金を計上してマイナスの評価とすべきとする議論があるのです。これは法的な問題でもありますが、会計の問題でもあるということです。
 環境問題が、財務問題や訴訟問題になります。海外では企業に対してチェックを入れるいろいろな組織があり、そこが質問状を総会に出したり、インターネットで企業にアンケートを送ります。それに中途半端な回答をしたら、それが一般に公開されることによって企業の価値を大幅に下げてしまうリスクが存在するのです。
 だから、人権問題とか環境問題といったものがCSRの議論になってきているのです。我々として今後まず避けて通れない分野です。これは社会貢献にもなるし、社会正義にもつながるでしょうし、今後継続的にお互いに勉強会をしたいなと思っています。
 
国際活動
佐伯会長:
次は国際委員会の活動をお聞きしたいと思います。
辰野副会長:
外国弁護士の規制緩和による日本への参入についての対応の問題が一段落し、4月からは外国の弁護士が日本の弁護士を直接雇用することもできるようになりました。大阪弁護士会の国際委員会では外弁問題についてルール違反をしていないかというチェック機能の仕事が始まっています。
 大阪弁護士会にも若手、中堅も含め、海外に留学した弁護士が多く所属しております。業務の拡大に向けてその方々の視点を生かせないか、国際委員会として何か手を打てないかということがあります。
 特に中国を含めたアジアと大阪との連携ですが、役員ベースでの交流以外はまだ進んでいないのが現状です。かつて上海の弁護士会と交流したことが1年だけありました。国際委員会はこの分野の活動を始めたばかりです。
佐伯会長:
これも近畿会とよく似ています(笑)。海外に駐在員等として赴任した会計士が帰ってきて、人脈とかノウハウが各大手法人ではたまっているのですが、近畿会という組織にあるかというと、まだ疑問です。会として共同での接点を持つことで我々の存在感を出すようにしたいですね。プレーヤーが何を欲しがっているかということを会としてキャッチアップをしながら、海外、特に中国上海で弁護士会と協力できることがあったらと思いますね。
辰野副会長:
装置を作ってあげるというのが会としての役割だと思います。
佐伯会長:
そうですね。やはりこれは持続した形で、次の代にもということで、私は一応2年任期を持っていますので、少なくとも上海に関しては、2007年、2年後にアジア・太平洋の会計士が集まる会議が大阪でありますので、それを起爆剤にできればと考えています。
益田会長:
国際委員会のもう一つの仕事に、アジアの開発途上国の法整備支援プログラムがあります。教官の派遣とか、日本での研修に人材を派遣するとかで、それは完全にボランティアです。
佐伯会長:
我々も、モンゴルに会計の分野で支援をしましょうということで、日本がモンゴルの会計士の育成に協力する企画があります。
益田会長:
我々もそうした外国の法制度について協力をしています。こういう貢献をしているということをはっきりと見せることが必要ですね。
佐伯会長:
阪神・淡路大震災でもそうでしたが、やはり弁護士さんの存在は大きかったですね。
 
内部統制監査への対応
佐伯会長:
時間が押してきたのですが、ぜひお聞きしたかったのは、先ほどから話が出ている内部統制の問題です。
益田会長:
金融庁の企業会計審議会の内部統制部会というのがあるのですが、そこでヒアリングがあり、専門の弁護士と一緒に弁護士会を代表して参加しました。他にヒアリングの対象になったのが、監査役をされている方と、新興企業2社の社長で、一人は楽天の三木谷社長です。
 内部統制の部会が作っているスキームでは内部統制を構築し、経営者が評価をし、さらに監査人が監査をするという一つの流れがあります。この中に法令遵守が含まれるとされているのですが、その場合だれがどういう形でするのかというようなことは明確に書いていません。それについては、具体的なシステムについてもう少し検討をして明確にしないといけません。内部統制監査の実施のためには、やはり公認会計士の関与は外せないのでしょうが、しかし法令遵守について言うならば、それをすべて公認会計士ができるかということになると、そこはなかなか難しいと思われます。弁護士と公認会計士の両方が相まって責任を果たさないといけないという印象を強く受けました。ですから、この問題についても一緒に研究を進められたら非常に意味があることですね。
佐伯会長:
おっしゃるとおりです。私も会長が言われたのと同じ危惧を持っています。エンロンやワールドコムがあって、SOX法の制定となったのですが、振り子の議論ではないですが、あまり振りすぎて、それがまた今は逆のほうになってきているのです。だから、ちょうど流れが大きく変わろうとしているときに日本の内部統制のSOX法をベースにした議論が始まっているのです。
 やはりSOX法の日本版を導入したいのは、西武・コクド事件、カネボウ事件などを受けた早急な対応が必要だからでしょうが、財務に影響する内部統制と法令遵守全体に影響する内部統制とは区分して検討される必要があると思います。
益田会長:
その点は三木谷さんも言われていましたね。企業にとって相当の経済的負担にもなるのでもう少し国内の実情を勘案したほうがよいということを盛んに言っていました。もっといろいろな条件とか、中身を検討しないと、早急に立法に走ると混乱を招く恐れがあると思います。
 
最後に
佐伯会長:
最後に、せっかくの機会ですので、会計士協会なり、我々近畿会に対して話されたい点があったらお聞きしたいと思います。
益田会長:
本日のこととは関係ないのですが、ADR(裁判外紛争解決手続)について公認会計士協会では何か考えておられるのですか。
佐伯会長:
ちょうど会計士法の改正の時期で、ほとんどそういう議論はなかったのです。ADRの知財のセンターのほうから「会計士さん、なぜ来ないの」という話があって、協会の本部の紛争処理会計専門部会から2名メンバーを出して作業をやっと始めたところです。
 海外では裁判外での訴訟の調整が一般的で、監査法人がそういうサービスのアレンジをしています。ADRに関して、ちょっと我々は出遅れたなと思っています。
益田会長:
もう一つ、構造改革特区で試行的に規制を外し、これを全国に広げて規制をなくしてしまおうということがあります。その構造改革特区の中に会計士とか弁護士の派遣業を認めるというのがあって、弁護士会は当然大反対しているのですが、会計士協会はあまり反対していないようですが。
佐伯会長:
反対していないというよりも、協会の本部は案件がいっぱいありすぎて、十分な議論ができていないのかも知れません。我々の存在意義は第三者としての専門性ですから、独立性が絶対なのです。派遣の仕組みによって、その独立性に問題が生ずる可能性があれば、私は個人的には反対です。
益田会長:
そうでしょう。有識者会議で議論しているのですが、みんながこぞって反対しないといけないと思います。ある派遣会社が弁護士とか公認会計士を抱え込んで企業に派遣することを認めろというものなのです。これが認められると、結局は資格がない者が、法律事務や会計士の業務を行って収益を挙げることになります。士業の根幹にかかわることですので、弁護士会としては、大反対をしています。
 監査法人についても、必要とする企業あるいは個人との間で直接契約をして行うのはかまわないのです。公認会計士を派遣して収益を挙げる会社を作るのが問題なのです。
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佐伯会長:
本日は貴重なお時間を頂き、また私どもにとりまして貴重なご意見をお聞かせ頂きありがとうございました。本日の座談会で、両会が相互に連携できる分野が少し見えてきたと思われます。今後、お互いの担当副会長クラスで検討してみたいと思います。
林 部長:
今日はどうもありがとうございました。