過去を振り返って

谷井 一

 事務局からの通知で、自分の年令が今年の当たり年であることを知り愕然としている。あっという間の八十有余年でありました。昭和十八年学徒の身分で兵役に服し、翌く十九年十二月北支派遣軍に赴任し、山西省汾河の畔にあった臨汾に配属された。それから転属を繰り返し敗戦を迎えたのは山東省済南の山奥の塹壕を掘っていた時であった。それから二十一年三月復員したが、その間幾多の戦友が戦火に倒れ死んでいった事が哀惜にたえない。
 昭和二十年八月の終戦后中支山東半島の張店からの引き揚げに当たり、当時の中国国民党総統であった蒋介石の「暴に報いるに仁を以て処す」の温情溢れる布告により武装解除后無事引き揚げる事ができた。その事を憶う時、現在のきびしい日中関係が好転し、両国の洋々たる発展を祈る事切なるものがあります。戦后のきびしい耐乏生活の後、一年有半の教員生活を経てこの業界に入り現在に至る迄関係各位に大変お世話になりました。その后幾多の苦難を経て現在に至っておりますが、現在程業界の独立性、外部監査の重要性が要求されている事はないと思います。有為な協会の皆様方の御健祥と御研鑽を祈って止みません。
 現在の小生は後記の先人の言葉を胸にたたみ込んで毎日を送っている昨今です。
 「前人樹を植えて後人涼を得」「昏れて猶命の限り蝉時雨」駄文で紙面を汚し恐縮に思っています。御海容下さい。