年頭所感

金融庁総務企画局企業開示参事官
池田 唯一
 新年明けましておめでとうございます。
 我が国証券市場を活性化していくためには、市場の公正性・透明性の確保による投資家の信頼性の向上が不可欠であり、こうしたことから、昨今、公認会計士監査に対する関心や社会的な期待が大いに高まっているところであります。
 公認会計士制度をめぐる最近の状況について申し上げます。
 第一に、昨年10月中旬以降、証券取引法上のディスクロージャーをめぐり、不適正な事例が相次いで判明いたしました。金融庁では、ディスクロージャー制度に対する信頼を揺るがしかねない事態であるとの認識の下に、昨年11月16日、「ディスクロージャー制度の信頼性の確保に向けた対応」をとりまとめ公表しました。
 この対応策は、・有価証券報告書等の審査体制の充実・強化、・公認会計士等に対する監督等の充実・強化、・開示制度の整備、・市場開設者に対する要請の、4つの柱からなっており、金融庁としては、ここに盛り込まれた方策を強力に推進していきたいと考えております。
 また、ディスクロージャー制度の信頼性を確保していくためには、開示企業、監査人、市場開設者など市場関係者が、それぞれの立場から、最大限の取組みを行っていただくことが併せて重要であり、関係各位のご尽力を強く期待しているところであります。
 第二に、会計・監査制度の分野における国際的な動向についてであります。昨年10月、我が国の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)は、国際会計基準を設定している国際会計基準審議会(IASB)とともに、会計基準のコンバージェンス(収斂)を最終目標に現行の両基準の差異を可能な限り縮小するための共同プロジェクトの立上げに向け協議を開始した旨公表いたしました。また、EUにおいては、いわゆる「2005年問題」に関して、日・米・加の会計基準について、国際会計基準との同等性を評価するためのプロセスが進んでおります。
 金融庁としては、我が国の会計基準について正確な理解が得られるよう、引き続き国際的な情報発信に努めるとともに、会計基準のコンバージェンスに向けた関係者の取組みを積極的に支援していきたいと考えております。
 第三に、昨年4月から施行されました改正公認会計士法についてであります。既にご承知のとおり、改正法は公認会計士の「使命・職責の明確化」、いわゆるローテーション規制の導入などの「独立性の強化」、日本公認会計士協会による品質管理レビューの公認会計士・監査審査会によるモニタリングの実施など「監視・監督機能の充実・強化」等を内容とするものであります。金融庁としては、改正法がその趣旨に沿って引き続き適正に実施されていくよう配意していきたいと考えております。
 また、改正法に基づいて平成18年から実施される新公認会計士試験制度につきましても、その円滑な実施に向け、公認会計士・監査審査会を中心に検討が進められているところであります。
 日本公認会計士協会におかれても、「品質管理レビュー」や「継続専門研修」の充実・強化などについて、改正法の趣旨を踏まえたより一層の取り組みが行われていくよう期待しているところであります。
 我が国の公認会計士監査制度は、今、大きな節目のときにあります。金融庁としては、国際的な観点も踏まえつつ、引き続き、会員の皆様方と力を合わせながら、ディスクロージャー制度の信頼性を向上させていくとの共通の目標に向け、努力を積み重ねて参りたいと考えております。
 末筆になりましたが、近畿会のより一層のご発展と会員の皆様のご健勝とご活躍を心よりお祈りして年頭のご挨拶と致します。