報告

第8回金融会計研究会 議事録

監査会計委員会

 
日 時:平成16年6月23日(水)10:00〜12:00
場 所:近畿財務局2F第1共用会議室 
 
1. 開会挨拶
近畿財務局
@ 検査マニュアル別冊中小企業編の改訂内容について(DDS等)
A リレーションシップバンキングについて
近畿会
@ 中小企業金融に関する近畿会の活動状況について
A 商法改正について(会計参与等)
2. 意見交換
@ 償却・引当に関する検討について(近畿財務局)
(検討事項)
  破綻懸念先V分類の貸倒実績率算定にあたり、期首・分類額を上回る毀損額を毀損実績に含めるべきか(いわゆるキャップをはめるべきか否か)。
  (発言内容)
発言者 発言内容
会計士 担保等U分類の適正評価とV分類の毀損率に関する議論が錯綜している。100%を超える実績率は、理論的にありえないので、V分類の貸倒実績率算定に当たっては、毀損額にキャップをはめるべきである。議論としては、U分類の担保価値の適正性が問題なのではないか。
検査官 基本的には、担保評価の正確性に起因するが、現実にV分類金額の100%を超える多額の毀損が生じているにもかかわらず、引当金算定にあたり全く反映しないことは問題ではないか。担保評価を遡り是正する方法として分母・分子に反映させる方法も、その一つと考える。また、その場合は実績率は100%を超えることは生じない。
会計士 V分類金額の100%を超える毀損は、考えられない。
検査官 過去にキャップをはずすことについて、金融機関の理解を得ることに時間を要したことがあるが、最終的には、期首V分類金額を超える金額を分母・分子に両方加算する方法で合意したものもある。
会計士 分母・分子両方に入れるのは、理論的におかしいと考えられる。むしろ、U分類、V分類といった区分単位ではなく、債権全体に対する毀損率と考えた方が合理的である。
検査官 原因を分析して原因別に考えることが、重要である。
原因には、主に@当初の担保評価が適切になされておらず、実際の処分価値が、大幅に下落しているケース、A時価の下落によるケース、Bサービサーに売却するなど最終処理を急いだ場合があげられる。
特に、@の場合は、キャップをはずす必要がある。Bの場合も、適切な評価に基づく毀損率の算定のため、同様の債権が存在する場合、後日同様の問題が起こるので、キャップをはずすことも考慮に入れ検討する等、原因に応じた対応を図るべきである。
会計士 不動産鑑定評価であっても、処分可能見込額になると、その評価より低くなることが多い

検査官

収益物件が多いにもかかわらず、収益還元評価されていないケースが多く、鑑定評価であっても評価方法がさまざまで、実際にバルク処理した場合、損失が拡大することが多い。実際にV分類金額を上回る毀損が生じているのに、全くこれを考慮しないのは問題であり、実績率算定に当たっては、これを反映すべきである。
 
(検討事項)
期末非保全額に対する引当率において、要管理先が破綻懸念先を上回る場合、予想損失率の算定をいかに行うべきか。
(発言内容)
発言者 発言内容
検査官 規模の小さい金融機関では、年1回しか自己査定しないので、現実的に起こりえる。何らかの補正が必要である。
会計士 このようなことは、非現実的であり、要管理先の引当率を低くするよう補正すべきである。
検査官 債権者区分の正確性の問題もあるが、何らかの補正が必要である。
検査官 要管理先の引当率まで、破綻懸念先の引当率を引き上げるのがよいと思うが、その他具体的にどのように補正するのか教えていただきたい。
会計士 破綻懸念先で、支援しているから破綻しないケースがあり、このような先については、実際には、毀損している(実質破綻先)として、破綻懸念先の引当率を算定する際、考慮するのがよいのではないか。
 
(検討事項)
一般貸倒引当金の算定にあたり、保全率の変動が貸倒実績率に大きく影響している場合、保全率を加味した予想損失率の算定を行うべきか。
(発言内容)
発言者 発言内容

検査官

現実的には、保全率まではあまり言及していない。
 
A 貸倒引当金の算定方法について(近畿会:会計士)
(検討事項)
再生支援の実績を引当率に反映する際、データが存在している債務者については、再生支援先とそれ以外というグルーピングを行うが、グルーピングにあたっては、金融機関の規模により縮小は可能か。
(発言内容)
発言者 発言内容
検査官 100先程度というのは、一つの目安であり、縮小は可能である。ただ、どの程度よいのかという数値は、示しにくい。
検査官 100社という数字にこだわる必要はない。ただ、恣意性が介入してはならない。少しの支援しかしていないのに、再生支援先として取扱うことは認められない。
 
(検討事項)
経営改善支援をグルーピングした場合と従来方式で引当率を算定した場合において、データ期間の影響により、逆転現象が起こった時にどのように取り扱うか。
(発言内容)
特に明確な発言はなかった。
 
(検討事項)
資本的劣後ローンの評価は、一般的に純資産価格方式で算出されるので、100%の引当率と考えるが、100%以下とされているような事例はあるか。
(発言内容)
発言者 発言内容
検査官 DDSは新しい制度で経験があまりないので、皆さんの意見をお聞きしたい。
会計士 最初は一旦100%として評価性引当金を計上し、その後、業績の変化に応じて毎期洗替すべきである。
検査官 最終的には、経営改善計画の妥当性もしくは信憑性に係っている。再建計画が妥当であり、信憑性が高ければ、100%未満の引当率もありうるのではないか。
 
(検討事項)
破綻懸念先に対して、資本的劣後ローンを資本としてみなすことができるか。
(発言内容)
発言者 発言内容
検査官 飛ばしに利用される懸念もあるので、現状において、要管理先以上に限られている。
会計士 可能と考える。
 
(検討事項)
メイン行がDDSを行った先に対し、他の金融機関において、当該企業等の債務者区分等に対して、影響を与えることになるか。
(発言内容)
発言者 発言内容

検査官

債務者区分は、債務者の状況によるが、当該区分判定にあたり、今後の経営改善計画を検討することになるが、この計画はDDSを勘案されているはずである。よって、当然、影響を与えることになるのではないか。
 
(検討事項)
産業再生機構への持込み案件は、通常、要注意先か要管理先であるが、個別引当の対象として引当額を算定してよいか。また、引当額をどのように客観的に算定するか。
(発言内容)
発言者 発言内容
検査官 自己資本比率算定上、一般引当は一定までは補完項目に算入できる。個別引当はリスクアセットを考慮する必要がある。要管理先までは一般引当で、破綻懸念先以下は個別引当ではないか。
会計士 産業再生機構持込みにより返済猶予がなされ、その後、債権放棄がなされるのが一般的である。よって、持込み時には、要管理先とすべきであり、その後、再生が進んだ段階で個別引当とするのがよいのではないか。要管理先は、一般引当と考える。
検査官 要管理先を前提とした場合、個別引当の明確な根拠はないのではないか。再生の過程で変化していき、その過程で個別に考えざるをえないものと思われる。
会計士 最終的な支援決定がでないと、個別引当の合理的な根拠はないのではないか。
 
(検討事項)
信金厚生年金基金(総合設立型厚生年金基金)の状況で、年金財政が悪化していると思われるが、現在の退職給付会計基準では、年金資産の額を開示するのみでよいことになっている。将来において、掛け金アップなどの状況も考えられ、信金の財政状態を圧迫する可能性がある。
(発言内容)
会計士が、説明したのみで、時間終了した。
 
3. 閉会挨拶
最後に、近畿財務局から、検査結果通知の取扱について、守秘義務の徹底の依頼がありましたので、十分ご留意ください。

以 上