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第25回日本公認会計士協会研究大会札幌大会 |
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第25回日本公認会計士協会研究大会 札幌大会が7月21日に開催されました。「公認会計士、新たなるステージへ 経済社会における使命を問う」をメインテーマとし、下記のプログラムに基づいて、盛大に執り行われました。 前日には、前夜懇親会が大倉山ジャンプ競技場クリスタルハウスで開催されました。 |
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−研究大会プログラム− |
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午前の部 | |||
1. | 北海道における企業再生−民事再生法を中心として | ||
2. | 新しい公益の担い手であるNPOに対して−公認会計士が果たすべき役割 | ||
3. | 企業会計基準委員会(ASBJ)の国際的な活動状況−国際会計基準審議会(IASB)における議論に対する対応を中心に | ||
4. | 収益認識−「SAB第101号が提起するわが国の実務上の課題」 | ||
5. | 紛争処理法務における公認会計士の役割−計算鑑定人制度を中心として | ||
6. | 地方自治体会計基準策定のための概念フレームワークの必要性−発生主義・複式簿記を前提として | ||
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午後の部 | |||
1. | 公共部門の位置づけ・特性と公認会計士の役割−公共部門改革、官民ネットワークにおける公認会計士の役割 | ||
2. | 中小企業金融の円滑化と公認会計士の役割 | ||
3. | 公認会計士はITに如何に対応すべきか−ともに社会のインフラであるITと公認会計士の活動との係わりについて | ||
4. | 「監査規範の概念的枠組みに関する研究会」研究報告書『監査規範の概念的枠組みに関する基礎研究』 | ||
記念講演会 | |||
テーマ「宇宙からの贈りもの」 | |||
講 師 毛利 衛氏 (宇宙飛行士/日本科学未来館館長) | |||
記念パーティー | |||
プログラムのうち参加したテーマについて報告いたします。 | |||
前夜懇親会 | |||
![]() 札幌オリンピック(1972年開催)のジャンプ90メートル級の競技場となったところです。懇親会は、レストランのテーブルのセッティングがかぎ型であったため、また、各参加者が自由に会話をされていたため、北海道会会長、協会本部会長、北海道会実行委員会委員長の挨拶がありましたが、聞き取りにくということもあり、挨拶されている方には申し訳ないと思いつつ、食事と会話を楽しみました。 食事の後は、リフトでジャンプ台にのぼり札幌の夜景を楽しむという企画でしたが、結果は、雨こそ降っていませんでしたあいにくの曇り空で充分に夜景は見ることができませんでした。その代わりに、酪農の本場、北海道のソフトクリームを味わいました。 夜景の後は、隣接する札幌ウィンタースポーツミュージアムの見学です。ここでは札幌オリンピックとジャンプ等の競技に参加された選手について、写真や競技に使用された道具とともに紹介されており、また、オリンピック競技の疑似体験ができる設備がありました。疑似体験では、挑戦された方の中には思い通りの結果が出ずに悔しがっておられる気持ちの若い青年?もいらっしゃいました。 極めつけは私たちですが、帰りのバスの時間など気にせずジャンプの疑似体験(ここでしか設備がないとのこと。)に熱中して、最終のバスを待たせてしまい、北海道会の担当の方にご迷惑をかけてしまいましたが、楽しい前夜祭でした。 |
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研究大会 | |||
1. | 午前の部 | ||
「北海道における企業再生−民事再生法を中心として」 | |||
・ | パネリスト | ||
札幌地方裁判所民事四部 部総括判事 甲斐 哲彦氏 | |||
北海道中小企業再生支援協議会 プロジェクトマネージャー弁護士 橋本 昭夫氏 | |||
北海道マザーランド・キャピタル株式会社 代表取締役 公認会計士 泉山 整一氏 | |||
公認会計士 酒井 純 氏 | |||
・ | コーディネーター | ||
公認会計士 村上 康二氏 | |||
甲斐氏は札幌地裁での民事再生の特色を発表されました。特色として3点挙げられましたが、そのうち、調査委員は原則公認会計士を選任されているということがとても興味深いものでした。北海道ならではの特色としては、札幌地裁のエリアが広大であるため再建計画案の決議は書面投票であるとのこと。 平成12年からの民事再生の事件件数は10件〜22件で推移15年度が22件と多い。 開始決定から認可決定までの期間は平成12年度は253日だったのが15年度では143日に短縮。事件に対する習熟度が向上したためとのこと。 民事再生事件の事件傾向として、主要債権者との協調型と対立型の両極化傾向にあることと、監督委員の選任割合が増えてきたこと。監督委員が選任される場合として、否認権行使が想定される場合、迅速性を要する場合、再生債務者が基幹性を発揮できない場合でした。 弁済率、弁済期間は10年以内で10%〜30%が多い。 関係機関に対する要望として、債権者、申立代理人、調査委員に対し発言されました。債権者に対しては反対であっても自分で引導渡さない、メインが反対しないから反対しないと消極的であること、申立代理人に対しては申立から再生計画の履行まで最後まで責任をもってほしい、再生計画は抽象的でなく具体性のあるものを、調査委員に対しては再生計画案に誤りがないかの確認、実行不可能であればはっきりと「ダメ」をだしてほしいなど、結構厳しいものでした。 橋本氏は、弁護士として平成13年度から関与された民事再生について発表されました。特徴として、補助者としては公認会計士を選任していること。方針としては、申立即日開始決定を取り、再生可能性を内外にアピールすること。また、プレパッケージ方式で、申立前に大口債権者と調整しておくこと等を説明されました。。 泉山氏は北海道企業再生ファンドの組成の経緯と現状を発表されました。 北海道地域の中堅、中小企業の再生を拒む5つの壁として、事業債構築へのキャッシュフローの確保、個人保証と連帯保証、複数金融機関の債権カットの公平性、債務免除益課税の課題、企業再生税制等の見直しについて説明されました。 また、地域企業再生への課題として不動産担保ファイナンスからの脱却、会計基準と税制の乖離の解消、再生の核となる事業の確立をあげておられました。 最後にコーディネーターから各パネリストに経営者責任について、また、公認会計士に期待することについて意見を求められました。 |
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2. | 午後の部 | ||
「中小企業金融の円滑化と公認会計士の役割」 | |||
・ | パネリスト | ||
経済産業省中小企業庁事業環境部 金融課長 橘高 公久氏 | |||
社団法人 第二地方銀行協会企画部長 千葉 真司氏 | |||
空知信用金庫審査管理部企業支援相談室 部長代理兼室長 中谷 隆志氏 | |||
中小企業金融専門部会専門委員 公認会計士 宮 直史氏 | |||
・ | コーディネーター | ||
中小企業金融専門部会専門委員 公認会計士 浅井 万富氏 | |||
![]() 中小企業の会計実務は課税所得の算定が主な目的となっており、会計情報としての信頼性が不十分であるため、中小企業庁において、「中小企業の会計に関する研究報告書」を平成14年6月に公表し、中小企業にふさわしく、また、過度の負担とならないものとして「中小企業の会計を」明らかにしたということ。報告書の中で、実行すべき事項(減価償却等)、任意採用でよい事項(税効課会計等)、作成が望ましい事項(キャッシュフロー計算書)を明確化しているということ。信用力のある決算書作成により金融機関からの資金調達が可能となること。 中小企業金融対策としては、新創業融資制度における融資限度額の引上げ、第三者保証を免除しリスクに見合った金利とする特例措置の拡大、財務制限条項を前提として、経営者の本人保証をとらない制度の創設を説明されました。 中小企業庁が中心となり「中小企業信用リスク情報のデーターベース」(略称CRD)を運営し、会員向けの情報分析・処理サービス、情報提供サービスを実施している。また、中小企業基盤整備機構のホームページにより「経営自己診断分析システム」を提供していること、また、中小企業向け貸出債権の証券化のために、今国会で中小公庫法を改正することについて説明されました。 最後に、公認会計士に期待することとして、中小企業者の経営に係る様々な問題に対し、財務を中心としたソリューションを提供するコンサルティングをしてほしいとのことでした。 千葉信司氏は中小企業金融の円滑化にかかる会員行の取組状況および第二地方銀行協会の対応を発表されました。 平成14年10月に公表された「金融再生プログラム」および平成15年3月に公表された「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」についての経緯と概要を説明されました。そのなかで印象に残っているのが、リレーションシップバンキングという言葉は米国においては使用されていないということでした。(よく似た言葉として「リレーションシップローン」という言葉はつかわれているとのこと。) 会員行(50行)の取組みとして、1)審査能力の向上、2)健全債権化、不良債権の新規発生防止のための体制整備・強化、3)中小企業等の財務・経営管理能力向上の支援、4)担保・保証に過度に依存しない融資への取組み、5)財務諸表の制度が相対的に高い中小企業に対する融資プログラムの整備について説明されました。 協会の取組みとしては、1)平成15年10月「要注意債権等の健全化対策―融資実行後のモニタリング強化と取引先企業の経営改善支援に向けて」(改訂版)の取りまとめ、2)平成16年2月「中小企業金融におけるデット・デットおよびコベナンツの活用」を報告書として公表、3)研修・通信教育の実施、4)「クレジット・スコアリングの活用策」のとりまとめ(16年中実施)について説明されました。 最後に、公認会計士に期待することとして、計算書類に対する信頼性の付与、融資実行後のモニタリング体制面のサポート、要注意先等の経営改善支援のサポートをしてほしいということでした。 ![]() まず、リレーションシップバンキングについての概要、中小企業金融向けの貸出残高(総額274兆円)の都市銀行(89兆円)、地銀・第二地銀・信金・信組(144兆円)、北海道内の信用金庫の貸出残高等全体的なことの説明をされました。 空知信用金庫の機能強化計画概要−中小企業金融の再生に向けた取組みとしては、1)創業・新事業支援機能等の強化、2)取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化、3)早期事業再生に向けた積極的取組み、4)新しい中小企業金融への取組みの強化について発表されました。 最後に、公認会計士との係わりについては、リレーションシップバンキングの機能強化のため会計専門家としての期待は大きいが、主として、取引先企業の経営相談・支援強化や早期事業再生に向けた積極的取組みのなかでアドバイスが期待されるということでした。 宮直史氏はコンサルティングの実例を紹介されました「稲盛数夫の実学」の前書きに記載されている、「経営者は自社の経営の実態を正確に把握した上で、適確な経営判断を下さなくてはならない。そのためには会計原則、改正処理にも精通していることが前提となる」を引用され、基本的には、中小企業経営者の財務能力を向上させることが必要ということを述べられ、自らのコンサルティングでの実例を紹介されました。 最後に、公認会計士として、専門知識や経験だけでなく、もっと知恵(実践活用法)を、また、中小企業が自立するためには「代行」でなく、中小企業を心から愛し、中小企業と一緒に汗をかくことが必要である旨を述べられました。 |
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記念講演会 毛利衛氏 「宇宙からの贈り物」 | |||
記念講演の前に、藤沼日本公認会計士協会会長、原田裕北海道財務局長、高橋はるみ北海道知事、上田文雄北海道市長北海道知事の挨拶がありました。藤沼会長を除く皆さんは、最後に北海道の観光アピールを忘れずになさっていました。 毛利さんは、北海道会の公認会計士の方が親戚にいらっしゃることから、1年以上前に講演を依頼されたということでしたが、依頼されたときに、公認会計士と自分の経歴との接点が見出されずに引き受けられるときに少し戸惑いを感じられたとの事でしたが・・・・。 まず、最初に10分ほど宇宙から撮影した地球の映像が映し出されました。次に、毛利さんが宇宙から見た日本の映像を沖縄から九州、四国、中国地方、近畿地方、東海、関東、そして北海道と個別に説明されたのですが、東北地方だけは、2回の宇宙飛行においていずれも曇りで映像が取れなかったとの事で、東北会の方には残念でした。太陽に照らされているときの地球の映像は緑の部分がはっきりと映り、太陽に照らされていないときの地球はイルミネーションがはっきりと見えるということのお話、宇宙での実験内容、無重力状態についてと興味深いお話でした。 最後に、生物の基本的な成り立ちが4個の塩基の組み合わせが基本で、個から最後には宇宙につながるということをお話されたように理解したのですが、文系の私としてはよく理解できませんでした。 最後に、会計士として生きがいを感じることはということで、急に会場の方に質問をされたのでビックリしました。指名された沖縄会の方は、急に回答を求められてヒヤッとされたと思うのですが、クライアントに対して有意義なサービス提供ができたときというようなことを回答されたように記憶していますが、「さすが」という気がしました。 毛利さんも、自分の能力が社会に役に立つことが嬉しいことだということでした。 なお、毛利さんの講演写真については撮影禁止ということで、掲載することができずに残念です。 |
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(取材・会報部 林 紀美代) |